続きは甘く優しいキスで
北川拓真は私の三歳年上の他大学の学生で、私と同じデザイン室でアルバイトをしていた。私が入った時には、すでに彼はアルバイト歴が長かった。だから新人の私は、彼から色々と教えてもらった。それは三か月ほどたった今も変わらず、一緒に仕事をする機会は多い。
ある時、自分が彼を好きになっていることに気がついた。彼女がいるかどうかは分からなかったが、例え彼女がいたとしても、すぐにその気持ちを捨てることもできなかった。とは言え、容姿端麗という言葉が当てはまる彼に自分が釣り合うとは思えなかったから、その想いは心の奥底に仕舞いこみ、アルバイト先限定の先輩後輩として接することにしようと決めた。
それでもやっぱり、北川と非日常の場所で会うと思ったら、仕事のようなものだと分かっていても、ときめいてしまうのは止められない。
そろそろ約束の時間かな。
私は携帯を手にしながら、待ち合わせに指定された鳥居の傍まで歩いていった。そわそわしながら首を伸ばして周囲を見渡していた時、着信音が鳴って驚いた。さおりからだった。
「もしもし。私、着きましたよ」
―― あ、碧ちゃん……。ごめん……本当に申し訳ない……。
苦しそうなガラガラ声が聞こえた。
「え、さおりさん、どうしました?なんか、すごい声なんだけど」
―― 実は風邪ひいちゃって。熱も高くてさっき少し下がって、やっと起き上がれたの。ほんとに申し訳ないんだけど、今日は中止にさせてください……。
さおりさんはそう言い終えた途端、電話の向こうで激しく咳き込んだ。
ある時、自分が彼を好きになっていることに気がついた。彼女がいるかどうかは分からなかったが、例え彼女がいたとしても、すぐにその気持ちを捨てることもできなかった。とは言え、容姿端麗という言葉が当てはまる彼に自分が釣り合うとは思えなかったから、その想いは心の奥底に仕舞いこみ、アルバイト先限定の先輩後輩として接することにしようと決めた。
それでもやっぱり、北川と非日常の場所で会うと思ったら、仕事のようなものだと分かっていても、ときめいてしまうのは止められない。
そろそろ約束の時間かな。
私は携帯を手にしながら、待ち合わせに指定された鳥居の傍まで歩いていった。そわそわしながら首を伸ばして周囲を見渡していた時、着信音が鳴って驚いた。さおりからだった。
「もしもし。私、着きましたよ」
―― あ、碧ちゃん……。ごめん……本当に申し訳ない……。
苦しそうなガラガラ声が聞こえた。
「え、さおりさん、どうしました?なんか、すごい声なんだけど」
―― 実は風邪ひいちゃって。熱も高くてさっき少し下がって、やっと起き上がれたの。ほんとに申し訳ないんだけど、今日は中止にさせてください……。
さおりさんはそう言い終えた途端、電話の向こうで激しく咳き込んだ。