続きは甘く優しいキスで
つかの間の沈黙を、私が困っているせいだと思ったのだろうか。北川は申し訳なさそうな顔をした。

「でも、笹本さんは彼氏がいるよね。誤解を生むようなことはやめた方がいいよな。困らせるようなことを言ってごめんね」

しかし私は弾かれたように顔を上げて、彼の言葉を勢いよく否定した。

「いえ、いません。あの、今までずっとです」

私の勢い込んだ様子に、北川は驚いたようだ。

「そうなんだ……ずっと……」

彼は困惑顔でそう言って、そのまま黙ってしまった。

そんなに強調して言うことじゃなかった。いったい何のアピールなのかと絶対に引かれた――。

恥ずかしくなってうつむいていると、じゃりっと音がした。同時に北川が私の方へ少し近づいた気配がして、私は確かめるようにそっと顔を上げた。

彼は悪戯っぽい目をして、私を見て笑っていた。

「そんなら、一緒に遊んでも問題ないってことだよね」

北川は私の前に手を差し出した。

「はぐれないように、手、つないでいい?」

「は、はい……」

どきどきしながら私は彼の手に触れた。この音がつないだ手からも伝わってしまうんじゃないかと思うほど、鼓動がうるさい。

「行ってみよっか」

北川は私の手を軽く握ると、ゆっくりとした足取りで参道を歩き始めた。

本殿に参拝して折り返してくる頃には、私たちは思った以上に打ち解けていた。大学でのこと、趣味や好きな食べ物のことなどで話が盛り上がる。

アルバイトの時にも、会えばそれなりに話はしていた。けれど、一応は仕事で行っている場所だ。今夜のように盛り上がったりすることはなかった。

< 72 / 222 >

この作品をシェア

pagetop