続きは甘く優しいキスで
「あっ!」

「危ないっ!」

北川がすぐに気づき、私の体を捕まえた。そのおかげで転倒を免れる。

「びっくりした……」

「すみません。下駄、久しぶりに履いたから」

「とりあえず転ばなくて良かったよ」

「はい。ありがとうございました」

ほっとして礼を口にしてはじめて、自分が北川にしがみついたままだったことに気がついた。

「ごめんなさいっ」

心拍数が跳ね上がった。私は慌てて北川から離れた。いや、離れようとしたのに――。

彼の腕に力が入った。

「北川さん、あの……?」

戸惑っていると、彼は慌ててその腕を離した。

「ご、ごめん」

「い、いえ……」

私は胸を抑えた。どきどきと鼓動が鳴りっぱなしの上に、耳までもが熱くなってきた。

今のはなんだったのだろうとゆっくり考える間もなく、北川は私の手を引いて参道を進む。鳥居傍にでんと構えている大木の陰まで行くと、つないだ手はそのままに私に向き直った。

「あのさ、笹本さん」

「はい」

何を言われるのかと身構えた。しかし北川は黙っている。顔を見れば何をためらっているのか、視線を宙にさ迷わせていた。

「北川さん、どうかしましたか?」

もう一度私が声をかけてようやく、彼は私に視線を戻した。それから意を決したような顔をして口を開く。それは、私にとっては幻聴かと思うような、想像したこともない言葉だった。

「俺と、付き合ってください」

「……え?」

私は瞬きしながら北川を見上げた。

「ごめん。やっぱり突然すぎたよね」

彼の面に「しまった」とか「早まった」とか言うような表情が浮かぶ。

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