続きは甘く優しいキスで
嬉しいと思うよりも先に疑問が浮かび、私はおずおずと彼に訊ねた。

「今のって、どういう意味の『付き合って』なんですか?」

北川が、うっ、と一瞬息を飲んだのが分かった。

「どういう意味も何も、言葉通りなんだけど……」

「言葉通りというのは?」

私の問いに、北川は困惑した顔を見せる。

「え、と。つまり、俺の彼女になってほしい、っていう意味です」

「どうして私なんですか?からかうのはやめてほしいんですけど……」

北川の困惑顔がますます大きくなった。その上、私につられたのか丁寧語で話している。

「からかってなんていません。嘘でもありません」

「だって……」

確かに私は北川に恋をしている。しかし、まさかその人から告白されるなどとは、つゆとも思っていなかった。だから、頭の中で情報を処理するのが追い付いていなかった。それに――。

「北川さん、モテるじゃないですか。バイト先の社員さんたちにも、けっこうファンがいるんですよ。その北川さんが、どうして私につき合ってなんていうのか意味が分からないです」

素直に頷けない自分を嫌だと思いながらも、そんな風にかわいくないことを言ってしまう。

北川は驚いた顔をして目を瞬かせた。

「え、ファン?何それ。初耳なんだけど。あ、いや今はそういう話じゃなくて……」

彼は困ったように笑う。

「こういう時、意味が分からないって言われるとは思っていなかったから、かなり戸惑ってるんだけど……。俺の言い方が悪かったのかな。それならもう一度言うね。笹本さんのことが好きです。だから、俺と付き合ってください。お願いします」

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