続きは甘く優しいキスで

11.知りたい

連絡すると言っていた北川から携帯にメッセージが入ったのは、週明け、日曜の夜だった。部屋に来ていた太田がすでに帰った後だったから、ほっとした。

さすがに携帯を見せろとまでは言わないが、一緒にいる時の太田は、私への電話やメッセージに敏感に反応する。そして私の様子を伺い見ながら、根ほり葉ほりとその内容を聞いてくるのだ。

それが嫌で、電源を落としておいたことがあった。しかしそれはむしろ逆効果で、何か知られたくないことでもあるのかと執拗に追及される羽目になった。それ以降は、太田と一緒にいる時に入った電話やメッセージなどには、彼の質問攻めがついてくるものと諦めている。下手に隠すよりはまだましだ。どうせそんなにも頻繁に、知人や家族から連絡が入るわけでもない。

私はどきどきしながら北川のメッセージの文字を拾い始めた。しかし、読み終えて困惑した。

時間は午後七時半。それはいい。けれど、待ち合わせの場所がとある老舗ホテルのロビーとなっている。しかも、そこのレストランを予約したと書かれてあった。

私は慌てて立ち上がった。ちょうどいい服はあっただろうかと、クローゼットの中を覗き込んだ。あれこれ悩んだ末、最近買ったばかりだった紺色のワンピースを着ていくことに決める。これならレストランに着て行っても恥ずかしくないだろうし、落ち着いた色合いだからオフィス用としても問題ない。職場にいる時は、汚れ対策に薄手のカーディガンでも羽織っておけばいい。

予想される話題からして、その約束の時間が楽しいものになるとは思えなかった。しかし、北川と会うその日をどこか心待ちにしている自分がいた。

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