続きは甘く優しいキスで
拓真は私の気持ちを察したのだろう。無口になっている私を気遣うように、最近見た映画の話や、どこそこに昔はなかった店ができている、その反対にあの店がなくなったのは寂しいだとか、他愛のないことをあれこれ話題に乗せた。とは言え言葉が途切れがちだったのは、本当は彼も緊張していたからかもしれない。

遅ればせながら、私はそのことに思い至る。拓真にばかり気を遣わせ、話をさせているのが申し訳なくなってきて、私もぼそぼそと彼に言葉を返した。

盛り上がりに欠ける私たちの前に、デザートが運ばれてきた。それを食べ終えてから、私はいよいよ思い切って口を開いた。

「それで拓真君、あの、今日は……」

彼は食後のコーヒーを口に運んでいたが、言葉尻を濁す私を見てカップを置くと、おもむろに口を開いた。

「……まずは、今日は俺のわがままのために時間を作ってくれてありがとう」

にこりと微笑みかけられて、私はテーブルの上に目を落とした。いよいよ本題だと思ったら、途轍もない緊張でみぞおちの辺りが苦しくなってくる。

拓真は静かな声で話し出した。

「もう何年も前のことをいまだに気にしてるなんて、自分でもどうかと思ってる。だけどこうやって再会したからには、この前も言った通り、あの時どうして君が俺から離れて行ったのか、何も聞かないままでは全然前に進めないと思ったんだ。そして俺は怒っていないし、責めるつもりだってない。それはこの前も言った通りだから安心してほしい」

うつむいたままの私に、彼は優しい声で続ける。

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