続きは甘く優しいキスで
「あの日を境に、連絡が全然取れなくなったよね。バイトにも来なくなって、部屋まで会いに行っても会ってもらえなかった。嫌われたんだと思ったけど、俺、何がいけなかったのかが分からなくてさ。碧ちゃんが嫌だと思ったことがあるんなら、それを全部直して、直すように努力して、どうにかもう一度君とやり直せないかって思った。それが無理だというなら、言葉にしてはっきりと俺のことを振ってほしいと思った。だけど結局それは叶わないまま、就職でこっちを離れることになった。その時に、君との思い出をきれいさっぱり捨てようと思ったんだけど、そんなの簡単に消えるわけがない。せめて少しでも早く君を忘れられるように、君とのつながりを完全に断ち切るために、連絡先だけでも消してしまおうと考えた。だけど結局消すことができなくて、今に至るってわけだ。未練がましいと笑ってくれて構わないよ」

拓真は自嘲気味に笑い、ひと呼吸ほど置いてから私に問う。

「……あの時、どうして俺の前からいなくなってしまったの?」

私は脚の上で両手を組んだ。力が入ったために、指の関節の色がなくなる。

「それは……」

言わなければ。今夜はそのためにここに来たのだから――。

そうは思うがなかなか言葉が出てこない。

「思ったこと、本当のことを言ってくれて構わない。あぁ、それよりもまずは先に場所を変えようか。こんな風に明るい場所よりも、少し暗い場所の方が話しやすいかもしれないからね」

拓真はそう言って、私を促し席を立った。

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