続きは甘く優しいキスで
「覚えているか分からないけど……。拓真君の部屋で初めて体に触れられたあの時。私、あぁいうことをするのは初めてで、だんだん自分が自分じゃなくなっていって、いやらしい姿の自分を好きな人に見られてしまったんだって思ったら、ものすごく恥ずかしくて嫌で、たまらなくなった。初めて見たあなたの男の顔も衝撃的だった。それでもう顔を合わせられないって思って、逃げてしまったの。その後も、自分の気持ちが落ち着くまでは拓真君の顔をまともに見られない、だから会えないって思って、ずっと避けてた。あの頃よりは遥かに大人になった今なら、どうしてあんなことくらいで、って思うよ。だけど、あの時の私はそんな風に思ってしまった。くだらない理由だって思ったでしょ?呆れたでしょ?拓真君を翻弄した理由がそんなことだって知って、腹が立ったよね。あんな風に一方的に逃げて、自分でも最低だと思うもの。あの時の私は自分の気持ちを持て余すばかりで、拓真君がどう感じるかとか全然考えられなかった。あの時素直に全部話していれば、拓真君を長い間悩ませることはなかったって、後悔してる。本当に、本当にごめんなさい……」

拓真はひと言も口を挟むことなく、ただ黙って話を聞いてくれている。

「拓真君を嫌いになったわけじゃなかったの。ただ私が、色んな意味で未熟だっただけ。拓真君は何も悪くなかった。だから」

ここで言葉を切り、私はようやく拓真に真っすぐ視線を当てた。

「もうあの時のことは忘れてください。そして素敵な恋をして、その人と幸せになって」

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