続きは甘く優しいキスで
理路整然とまではいかなかったが、拓真に話すべきことはすべて言い切ることができたと思う。これできっと彼の長年の憂いも晴れたはずだ。

「私、帰るね。お金はここに……」

私は財布の中からお札を取り出し、テーブルの上に置いた。拓真への想いがこぼれ落ちてしまう前にと、ソファから立ち上がる。

「待って、碧ちゃん」

拓真が慌てて立ち上がった。

「お願いだ。もう少しここにいて。俺の話も聞いてほしい」

懇願するような拓真の言葉に私はためらった。しかし重ねて強く引き留められ、結局ソファに座り直す。

彼は安心した顔をして、穏やかな目を私に向けた。

「言いにくかったよね。それなのに話してくれてありがとう。あの時の理由とその時の碧ちゃんの気持ちが分かって、これでやっと前に進めるよ。……でもね、やっぱり俺が悪かったんだなって思った」

私は身を乗り出しながら首を横に振る。

「違う。拓真君は全然悪くない。私、さっきそう言ったでしょ」

「いや、やっぱり俺のせいだよ」

拓真は組んだ手の上に顎を乗せ、眉間にしわを寄せた。

「自分では碧ちゃんの気持ちを大事にしていたつもりだったけど、そうじゃなかったんだね。あの時の俺、がっついていたつもりはなかったけど、結果的にはそうなってしまってたんだな。碧ちゃんのことが大好きで大切で、でもキスだけじゃ足りなくなって、君に触れたくて、早く自分のモノにしたくなって……。一体何を焦っていたんだろうな。碧ちゃんの初めてを嫌なものにしてしまってごめん」

「謝らないで。何度も言うけど、本当に拓真君のせいじゃないから。私の気持ちの問題だったの」

「うん。それでもやっぱり、ごめん」

「拓真君、もういいから」

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