続きは甘く優しいキスで
私は微笑んだ。

最初はこの再会を嬉しいと思えなかった。けれど今は、再び拓真に会うことができて良かったと思っている。こうやって彼と話すことができたおかげでようやく贖罪がすみ、心が軽くなった気がしている。

ただ一つ予想外だったのは、拓真を好きだという気持ちを改めて認識してしまったことだ。彼が私に好意を向けてくれていることは感じるが、それは前にも思ったように、私が抱いている気持ちとは別物だろう。だから期待はしていない。彼への想いを隠しておこうと思っていたが、今はむしろ気持ちを打ち明けようかと考えている。そして、その恋心を木っ端みじんに砕いてもらうことで、今度こそ本当に前に進むことができるのではないかと思うのだ。なんにせよ、それは太田との別れ話を済ませてからだ。

「明日からはまた、同僚としてよろしくお願いします。そう言えば、出張もあるんだったね。まさか拓真君も一緒だなんて思ってなかったから、焦ったよ。行く予定の支社から上がって来る書類って、毎回不備が多いの。だから……」

気持ちを切り替えようと思い、仕事の話を持ち出そうとしたが、拓真に遮られた。

「聞きたいことがあるんだけど」

「聞きたいこと?」

軽い口調で訊ねられたから、私も軽く答えた。その後に続くのは、仕事や会社の話だと思ったのだ。しかし拓真が続けたのは、全く別のことだった。

「さっきの話だけど、俺のことが嫌いになったわけじゃなかった、って言ってたよね。それなら……」

拓真は言葉を切り、私を見つめた。

「今はどう思ってる?もしも今、改めて交際を申し込んだら君は頷いてくれるのかな」

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