このたびエリート(だけど難あり)魔法騎士様のお世話係になりました。~いつの間にか懐かれて溺愛されてます~
(当たり前だわ。通常業務や訓練に加えて、今度はこの前の魔物に対する連携技を細かく分析しだすんだもの)
 リベルトの軍服や夜着を洗濯するフィリスの目にも、うっすらと隈が滲んでいる。さすがに二十四時間、フィリスもずっと寝ずに付き合うわけにもいかない。
それでもリベルトが気になって、二、三時間程度の仮眠で目が覚めてしまう。それが一日だけならいいが、数日続くとフィリスの頭もぼーっとしてきた。
(リベルト様は私以上に寝てない挙句、食事もまともにとっていない)
 空はもうすぐ、青からオレンジ色に変わろうとしている。
 リベルトはこの時間、騎士団と魔法団との合同訓練中だったが、もうすぐ部屋に戻ってくるだろう。
(あんな調子で合同訓練なんて、大丈夫かしら)
 現場にはアルバやエルマーも付き添っているため、なにかあればすぐに連絡が入るだろう。連絡がないことがリベルトの無事を物語っているとはいえ、フィリスは心配でたまらなかった。
 まだお日様のぬくもりが僅かに残った衣服をリベルトのクローゼットに戻していると、部屋の扉が開いた。訓練を終えたリベルトが戻って来たのだ。
「お疲れ様でした」
 声をかけると、リベルトは片手で額を押さえ、足をもつれさせてその場にしゃがみ込む。
「リベルト様!?」
 駆け寄り背中を擦ると、リベルトが痛そうに眉をひそめた。
「……背中、痛むんですか?」
「……訓練中、防御が遅れて強く打ってしまった」
「!? 治癒魔法はかけてもらいましたか?」
「いいや。誰も気づいてないし、わざわざそこまでする必要はない」
 アルバからの前情報だと、リベルトが訓練でミスをすることはほとんどないと言っていた。それにもかかわらず防御が遅れるなんて、判断力も対応力も鈍っている証拠だ。
 リベルトは立ち上がると、また机に向かおうとする。フィリスは咄嗟にリベルトの腕を掴んで制止した。
「休んでください」
「……まだ大丈夫だ」
 見るからに大丈夫でないくせに、本人が何故それに気づかないのか。
 この三日間さんざん我慢したが、もうフィリスは限界だった。
「いい加減にしてください! 休めって言ってるのがわからないんですか! 人の言うことを聞いてください! なんのための耳ですか!」
 すぅっと深呼吸をして、フィリスは言いたかったことを声を上げてぶちまけた。真正面から叱られて、リベルトはフィリスを見つめながら呆然としている。
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