このたびエリート(だけど難あり)魔法騎士様のお世話係になりました。~いつの間にか懐かれて溺愛されてます~
「安心しろ。俺が結婚したいのはフィリスだけだ」
「……私はリベルト様に釣り合うような相手ではないですが、いいんですか?」
「言っただろう。君に釣り合う男になってみせると。フィリスがいてくれたら、俺はまだまだ強くなれる」
(いや……私が釣り合う女性になる側なんだけど……なんでそうなるのかしら。まぁ、いいか)
リベルトの中では、フィリスが釣り合わない相手という考え自体がないようだ。それはそれで、フィリスは嬉しかったりする。
「それと……ドレス以外にも、君に用意していたものがあるんだ」
リベルトはジャケットのポケットから、小さな箱を取り出した。
なんだろう? フィリスがそう思っていると、リベルトはぎこちない手つきで箱を開封する。
「! ……これって」
箱の中には、紫色のリボンが入っていた。
「渡すのが遅くなってすまない。プレゼントなんて初めてで、気に入ってもらえるかわからないが……フィリスさえよければ、明日からバッジではなく、このリボンをつけて仕事をしてくれないか?」
アルバが最初に言っていた。
『主人が自分のカラーと呼べる色のリボンやネクタイを渡して、専属の証とする』と。
リボンを見るまですっかり頭から抜けていたし、まさかリベルトからもらえる日がくると思っていなかった。
「ありがとうございます」
フィリスは箱を受け取ると、瞳を輝かせて真新しいリボンを見つめる。柔らかな光沢を放つ細めのリボンは、襟元につけると一気に優雅な雰囲気を添えてくれそうだ。それに――。
「紫色……リベルト様の瞳と同じ色ですね」
「……ああ。一応、ほかの誰とも被っていないことを確認した。そもそも、専属をつけているやつはほとんどいないがな」
君にも似合う色だと思う。
顔をほのかに赤らめて、リベルトは控えめに言葉を漏らした。
(嬉しい。すっごく、想像以上に嬉しい)
リボンを眺めていると言いようのない気持ちがこみ上げてくる。リベルトに認められた喜びももちろん大きいが、それ以上に、彼に対する愛おしさが止まらない。
「リベルト様。私、もう既に、あなた以外の男性を見ることはできなさそうです」
「……フィリス?」
「つまり、ええっと……私も好き、です」
こんなに素敵なプレゼントをもらっておいて、なにもお返しができていない。この状況でフィリスができる最大のことは、素直な気持ちを伝えてあげることだろう。
外に出て体温は下がったはずなのに、会場にいたときよりも身体が熱い。羞恥と昂る熱に耐えながら、フィリスは言う。
「これからも、一緒にいてくださいね」
おずおずと背中に腕を回し、フィリスも抱きしめ返す。驚いた顔をしていたリベルトの瞳が、幸せそうに目尻を下げた。
「もちろん。一生離さない。……俺を好きになってくれてありがとう」
フィリスの額に、リベルトのキスが落とされる。そのまま頬にも口づけられると、リベルトが切なげに吐息を漏らして言う。
「キスがしたい」
「い、今したじゃないですか」
「それとは違う。……わかってるだろ?」
リベルトの右手が肩から首筋へ、そして頬にそっと触れる。見続けると溶けてしまいそうな眼差しに、いよいよフィリスは観念した。
「そういうのは、いちいち聞かなくていいんです」
「そうか。勉強になった」
フィリスも経験がないため知らないが、照れ隠しからそう言った。
そっと上を向かされて、リベルトの顔が近づいてくる。
「……好きだ」
唇が触れる直前に、リベルトの囁きが甘く耳に響いた。
(私も、好き……)
直後にキスをされその言葉は声に出せなかったが、きっとリベルトに伝わっているだろうとフィリスは思う。
唇が離れ、キスの余韻に幸せを噛みしめながらフィリスは冗談まじりに呟く。
「ここが会場だったら、映像魔法に今のも記録されちゃってましたね」
「……映像魔法。ああ。あれははったりだ」
「……え!?」
驚いて、胸に埋めていた顔を離す。
「会場全体を記録できるような魔法は現段階では存在しない。ただ、ワイバーンから特殊な素材の金属片を回収したのは本当だ。……容疑者は絞り込めていなかったがな」
なんにせよ盛大に脅しておいたから自首するだろうと、リベルトは冷静に言い放つ。
(あんなに堂々とはったりをかましていたなんて……さすがリベルト様……)
あの場でリベルトが機転を利かせてなかったら、ラウルには完全に逃げられていただろう。
「どちらにしろ、もう会場には戻らなくていいだろう」
「いいんですか? まだまだ慰安会は続くのに」
「ああ。俺はフィリスとふたりで過ごせたらそれでいい。……それに会場に戻ると、君はキス(これ)を許してくれないだろ?」
不意打ちにもう一度キスが降ってくる。聞かなくていいいと言ったのはフィリスだが、突然されるとドキッとして心臓がもたない。
「……はぁ。ダメだ。止まらなくなる」
「リベルト様、魔法騎士団で色ボケは厳禁ですよ?」
「大丈夫。俺は仕事をおろそかにはしない。……それに、今日は互いにプライベートだ」幸せそうに笑うリベルトを見ると、言いようのない愛おしさがこみ上げる。
フィリスも熱に浮かされて、今日くらいは彼の好きにされていいかな、なんて思ったりした。
「……私はリベルト様に釣り合うような相手ではないですが、いいんですか?」
「言っただろう。君に釣り合う男になってみせると。フィリスがいてくれたら、俺はまだまだ強くなれる」
(いや……私が釣り合う女性になる側なんだけど……なんでそうなるのかしら。まぁ、いいか)
リベルトの中では、フィリスが釣り合わない相手という考え自体がないようだ。それはそれで、フィリスは嬉しかったりする。
「それと……ドレス以外にも、君に用意していたものがあるんだ」
リベルトはジャケットのポケットから、小さな箱を取り出した。
なんだろう? フィリスがそう思っていると、リベルトはぎこちない手つきで箱を開封する。
「! ……これって」
箱の中には、紫色のリボンが入っていた。
「渡すのが遅くなってすまない。プレゼントなんて初めてで、気に入ってもらえるかわからないが……フィリスさえよければ、明日からバッジではなく、このリボンをつけて仕事をしてくれないか?」
アルバが最初に言っていた。
『主人が自分のカラーと呼べる色のリボンやネクタイを渡して、専属の証とする』と。
リボンを見るまですっかり頭から抜けていたし、まさかリベルトからもらえる日がくると思っていなかった。
「ありがとうございます」
フィリスは箱を受け取ると、瞳を輝かせて真新しいリボンを見つめる。柔らかな光沢を放つ細めのリボンは、襟元につけると一気に優雅な雰囲気を添えてくれそうだ。それに――。
「紫色……リベルト様の瞳と同じ色ですね」
「……ああ。一応、ほかの誰とも被っていないことを確認した。そもそも、専属をつけているやつはほとんどいないがな」
君にも似合う色だと思う。
顔をほのかに赤らめて、リベルトは控えめに言葉を漏らした。
(嬉しい。すっごく、想像以上に嬉しい)
リボンを眺めていると言いようのない気持ちがこみ上げてくる。リベルトに認められた喜びももちろん大きいが、それ以上に、彼に対する愛おしさが止まらない。
「リベルト様。私、もう既に、あなた以外の男性を見ることはできなさそうです」
「……フィリス?」
「つまり、ええっと……私も好き、です」
こんなに素敵なプレゼントをもらっておいて、なにもお返しができていない。この状況でフィリスができる最大のことは、素直な気持ちを伝えてあげることだろう。
外に出て体温は下がったはずなのに、会場にいたときよりも身体が熱い。羞恥と昂る熱に耐えながら、フィリスは言う。
「これからも、一緒にいてくださいね」
おずおずと背中に腕を回し、フィリスも抱きしめ返す。驚いた顔をしていたリベルトの瞳が、幸せそうに目尻を下げた。
「もちろん。一生離さない。……俺を好きになってくれてありがとう」
フィリスの額に、リベルトのキスが落とされる。そのまま頬にも口づけられると、リベルトが切なげに吐息を漏らして言う。
「キスがしたい」
「い、今したじゃないですか」
「それとは違う。……わかってるだろ?」
リベルトの右手が肩から首筋へ、そして頬にそっと触れる。見続けると溶けてしまいそうな眼差しに、いよいよフィリスは観念した。
「そういうのは、いちいち聞かなくていいんです」
「そうか。勉強になった」
フィリスも経験がないため知らないが、照れ隠しからそう言った。
そっと上を向かされて、リベルトの顔が近づいてくる。
「……好きだ」
唇が触れる直前に、リベルトの囁きが甘く耳に響いた。
(私も、好き……)
直後にキスをされその言葉は声に出せなかったが、きっとリベルトに伝わっているだろうとフィリスは思う。
唇が離れ、キスの余韻に幸せを噛みしめながらフィリスは冗談まじりに呟く。
「ここが会場だったら、映像魔法に今のも記録されちゃってましたね」
「……映像魔法。ああ。あれははったりだ」
「……え!?」
驚いて、胸に埋めていた顔を離す。
「会場全体を記録できるような魔法は現段階では存在しない。ただ、ワイバーンから特殊な素材の金属片を回収したのは本当だ。……容疑者は絞り込めていなかったがな」
なんにせよ盛大に脅しておいたから自首するだろうと、リベルトは冷静に言い放つ。
(あんなに堂々とはったりをかましていたなんて……さすがリベルト様……)
あの場でリベルトが機転を利かせてなかったら、ラウルには完全に逃げられていただろう。
「どちらにしろ、もう会場には戻らなくていいだろう」
「いいんですか? まだまだ慰安会は続くのに」
「ああ。俺はフィリスとふたりで過ごせたらそれでいい。……それに会場に戻ると、君はキス(これ)を許してくれないだろ?」
不意打ちにもう一度キスが降ってくる。聞かなくていいいと言ったのはフィリスだが、突然されるとドキッとして心臓がもたない。
「……はぁ。ダメだ。止まらなくなる」
「リベルト様、魔法騎士団で色ボケは厳禁ですよ?」
「大丈夫。俺は仕事をおろそかにはしない。……それに、今日は互いにプライベートだ」幸せそうに笑うリベルトを見ると、言いようのない愛おしさがこみ上げる。
フィリスも熱に浮かされて、今日くらいは彼の好きにされていいかな、なんて思ったりした。