ただ君に
「ねぇ。私たち別れましょう?」
そう。彼女から告げられたような気がする。

夕焼け。真っ赤に染まった学校。
独りで帰る帰路は「悲しさ」そのものだった。

「あぁ。やっぱり嫌われちゃったかな…」
そう自分でも分かっていた。

「あっ…。」
ふと、スマートフォンからカレンダーを開くと、彼女と別れてもうすぐ1年が経とうとしていた。

僕の心は今でも彼女で満たせれていた。僕の空っぽな心に強く残ってくれるほど、僕にとってそれは最高な出来事だっただろう。


そんな終わりを目の前にして、僕は何も言葉がでずに、その後ろ姿を見送るしかできなかった。
それは、ただモヤモヤした気持ちだけが僕には取り残された。

忘れなきゃ前には進めない。でもそんな簡単に忘れられるはずがない。

「パッ」っと。僕の目の前は急に真っ暗になった。
「…マサ。マサ…!」

ハッとした。彼女の声が急に響く。

そこには僕の会いたかった人で、謝りたかった人だ。
僕は、思うがままに今まで思っていたことを明かした。

「ねぇ…。あの時。何も言えなくてごめん。」

ユミは首を横に小さく振った。

「ユミの気持ち分かっていたのに。何も…言えなくて…」

ユミは優しい顔でそっと僕に近づいてくれた。

「あれから、僕ずっと思ってたんだ。『ずっと謝りたい』って」

ユミはさっきよりも大きく首を横に振って僕の方に近づいて。

「ありがとう。」

彼女の長い髪が綺麗に風になびいている。

「ユミの気持ち分かっていた。でも何も…言えなくて…」

ユミは優しい顔でそっと僕に近づいてくれた。

「あれから、僕ずっと思ってたんだ。『ずっと謝りたい』って」

ユミはまた小さく横に首を振って僕の方に近づいて。

「ありがとう。」

ふわり。と彼女の甘い匂いが僕を包んだような気がする。
それは(なが)くて、(みじか)くて。
すーっと。消えていくようだった。

僕の前はもう何も見えない。ボヤけて、霞んで、歪んで。
神様がくれたこの時間を。


我に帰る。目の前はまた先ほどまで見ていた、赤焼けの空と駅のプラットホームだった。


あの日。

ユミの心は疲れ切っていた。
僕は分かっていた。でもあと一歩踏み込めなかった。

彼女は電車に飛び込んだ。
ドンッと大きな音が今も僕の脳に焼き付いている。

前日。
彼女は僕に一つのメールをくれた。
「今どこにいる?」

僕は彼女に居場所を伝えた。
彼女に出会った時、彼女の目はいつもの輝いたものでは無く。赤らんでいた。
悲しかったことがあったのだろう。

ユミは、淡々と愚痴を僕に初めてこぼしてくれた。
でも、僕はただ頷くことしかできなかった。

そして、次の日。
もう彼女に逢えないことを知ってしまった。


君を助けたくて。また君に会いたくて。ただ君に。

でも現実はそう甘いわけではない。
あの日。彼女の虚な目には何が映っていたのだろうか。

1年経った今でも、気持ちは変わらない。
だから僕も飛び込もうとしていた。
でも、急にユミが目の前に現れた。

それは、彼女の最後の力だったんだろう

彼女の切実な想いを裏切らないためにも、


僕は、まだ君のために生きるよ。


彼女もまた優しい笑顔を見せてくれたような気がした。
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