希望を見つけ出せたなら
第三章「ぼんやりと見えてくる、あの頃を」


朝日がさんさんと降り注ぐ光で私は起きた。部屋から出るとルナの姿があって、ちょっとした支度をしているようだった。顔を洗って拭こうとしている時に私に気付いたようで軽く会釈しながら顔を拭いていた。「おはよぉ」私はルナに言った。「おはよ!葵ちゃん」おぉ。すごい朝から元気だ…まだ完全に眠気が取れていない私とは対照的だな…。「今日は、お買い物に行くから一緒に行かない?」「うん、いいよ。ちなみに何買いに行くの?」と返してみた。「うーん。お洋服とか、アクセサリーとかそういうのをみにいきたいな。あ、あとは普通にパンとか明日のご飯のものとかかなぁ」「なるほどね!」そんな小さな会話を終えて、お出かけの準備をしていた。
「いってきまーす!」支度を終え、私たちは大きなショッピングモールを目指してモノレールに乗っていた。隣町ではそう遠くなく20分もしないで着いた。初めてのるモノレールだったので、もうちょっと長く居たかったけどしょうがない。
「ねね、このお洋服どうですか⁉︎」っと言いながらルナがすごい勢いで私の元へ来た。 すごいな勢いが…。見てみると、かわいい花柄のワンピースで私好みなものだった。でも小柄な背丈のルナには少し大きいようには見えた。「ちょっと大きいかな?」というと「…そうだよね、でもさぁこのワンピースこのサイズしか売ってないんだけど」少し怒りっぽくルナは言っていた。「それは残念だね。また別のお店にも似合うのあると思うから、行ってみよ!」「うん!」
「これはどう?」「いやルナだったらこの服の方が…」「あぁ!これもかわいいね!」「あとはこれとか…」「なるほどそれも…」なんて会話をしていたらあっという間に時間が過ぎていた。「そろそろ、帰ろっか!」「うん!」家に帰ったあと、私たちは、買った服を着てファッションショーごっこをして遊んで、一日が終わった。
次の日も、その次の日も私たちは、家でのんびりゲームをしていたり、遊園地とか水族館とか色々な所を巡って行った。ここにくる前のことなんてとうに忘れ、充実していた。

––––––––––––「おはよぉー」今日も眠い目を擦り、私はそう呟いた、「葵ちゃんおはよ!」やっぱり、ルナは元気はつらつだ。「ねぇ、今日は何するの?」「今日は、どうしようかなぁ。そうだ!今日ねこの街で、花火大会があるの!よかったら一緒に行かない?」花火大会。想像しただけでワクワクしてきた。「うん!行きたい!」花火大会かぁ。私もよく行ったことがあったな。初めて花火を見た時。大きな音と共に広がる眩しい光が苦手で、よく家の中で耳を塞いで、薄い掛け布団を体に纏わせて、隠れて、怯えてたっけ。でも今となったら、夏の終わりをどこか感じさせて、とても風情のあるものだと感じている。涙腺が脆くなったのか、感受性が豊かになったのかわからないけど、花火はなぜか泣けてきてしまう。



––––––––––––あれ?私、いつの間にここに来る前のこと思い出せるようになったんだ?でもだめだ。これ以外のことは思い出せない。思い出そうとすると、また頭の奥がズキズキと痛む。「それじゃあ!お祭りは4時くらいから始まるので、それまではくつろいでてくださ〜い!」「うん。ありがとう。」そう言って、私はまた自分の部屋へと帰っていった。どうして、思い出せたんだろう。どうして他のことは思い出せないんだろう。二つの疑問が頭の中を駆け回る。なんでだろう。なんでだろう。私ずっとここにいて良いのかな………



––––––––––––夕暮れ時––––––––––––


「行きましょう!葵ちゃん!」「うん!」コツコツと下駄のいい音が響く。水色の鮮やかな浴衣姿でルナはとても似合っている。対して私は白のシャツに長ズボン。なかなか対照的で、横にいてお互い変に目立たないだろうか………とか考えてたらいつの間にか会場に着いていたらしい。「さぁ葵ちゃん!どこから回っていきますかっ!」目をキラキラさせてルナは言う。「焼きそば、かき氷、ベビーカステラ…うーんどれもいいな」長いこと考えているとルナがこっちをぱちぱちと覗いていることに気づいた。「ど、どうしたの?」「い、いやぁ葵ちゃんと出会ってから、いっつもクールですぐ何か決めてるイメージだったけど。初めてこんな悩んでるところ見たなぁって思ってさ」「なぁにそれっ。私かっていろいろ悩むんだよっー」そんなじゃれあいをしながら、屋台の方へと向かっていった。「まずは、私の好きなところから行っていい?私、かき氷だけは絶対お祭り来ると食べるんだよね」「そうなんですか⁉︎私も一緒で、お祭りに行くと絶対行きますね!」と言いながらかき氷の屋台の前に来てお互い頼んでいると「味も一緒じゃん!」と私は大きな声で言った。私もルナもどっちもブルーハワイ。すごい親近感があるなぁと感じた。他にも焼きそばや、唐揚げとか買って、花火が見える広場に来て腰を下ろしていると。急にドーンっと大きな音があたりを轟かした。「うわっ」ルナも私もとてもびっくりした。「やっぱり初めはびっくりしちゃうね!でも綺麗だな…」ルナも「そうですね…」よっぽど感銘を受けていたのか、口数もオーラもいつもより違っていた。ふと横に視線をやると…ルナが涙を流していた。イメージが付かなかった。艶やかな頬を伝っていく涙と煌びやかな花火が私たちを彩ってあっという間にフィナーレだった。
「楽しかったね!ルナ」「うん」この後も喋りながら家へ向かっていたけど少しルナは疲れている…?ような感じでいつもと違った。
ルナの様子が急変したのは翌朝のことだった。
いつものように、眠い目を擦りながら部屋から出る。でも今日はルナの姿が見えない。「あれ?」と思いながら身支度していても出てこない。おかしいと思ってルナの部屋をノックする。「…ルナ?いる?」数秒後にルナの声が返ってきた。「うん…起きてるよ…」いつもの元気は無くなっていて全くの別人のようだった。「る、ルナ?大丈夫?」恐る恐る聞いてみると「…大丈夫ですよ。でも少し一人にさせてください。」と無愛想だけが返ってきた。「そっかお大事にね」そう言ってルナの部屋から離れて行った。


–––––––––––ルナを助けないと–––––––––––

ただその一つだけで私の心は満たされていた。


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