重ねる涙の先で仕合せは紡ぐ。
閉店が21時の為、閉店業務を含め仕事が終わるのは21時半だ。
お店の裏口から外へ出ると、そこそこの雨が降っていた。
今日って、夜は雨予報だったんだ。
普段、天気予報を気にしないわたしは傘を持ち歩くことがなく、他の職場のスタッフの人たちが傘をさして帰って行く中、わたしは1人雨に打たれながら歩いて帰る。
わたしは走ることもなく、雨に滴る前髪に視界を邪魔されながら、ぼんやりと歩いていた。
そして、緑丘公園に差し掛かった時、何と無く公園に立ち寄りたくなり、わたしは公園に入ると山へ登り、雨に濡れたベンチに腰を掛けた。
目を閉じて、空を見上げると、冷たい雨が顔に落ちてくる。
わたしは、雨が嫌いじゃない。
自分の消してしまいたい過去を洗い流してくれるような気がするからだ。
いや、洗い流して欲しいという、わたしの勝手な願望だ。
わたしは親の顔を知らない。
生まれてからずっと孤児院で暮らし、18歳の誕生日を迎えると共に孤児院を出されたわたしは、20歳まで自分の体を売りながらお金を稼ぎ、その日暮らしの生活を送っていた。
だから、わたしの体は汚い。
全部で何人なのか覚えていないくらいの知らない男たちに抱かれ、何の愛も無い行為をしてきた自分が大嫌いだ。
すると、突然雨が止んだ。
あまりにも突然だったので、わたしは驚き目を開けた。
いや、雨は止んでいなかった。
わたしの上には、透明のビニール傘がさされていた。
「風邪引くぞ。」
そう言い、わたしに傘をさしていたのは、パーマのかかった長めの髪に黒いパーカーを着た背の高い男性だった。