君との恋は面倒すぎる
私がそんな蒼空くんの様子を見ていると、こちらに顔を向けてくれた。

さっきまで照れくさそうな顔は背けて見せてくれなかったのに、今度は照れくさそうではあるけど笑いかけてくれてその顔は私にしか見せない特別なものだと直感的に感じた。

そもそもこんなに笑顔を見せてくれる人ではなかったのに、最近は優しい表情やふと気の抜けた顔、自然に出た笑みを見せてくれる。

どんな表情も見逃したくなくて、気を抜いて瞬きですら出来ない。

今も目が離せなくて蒼空くんの顔を見つめていると、ゆっくりと顔が近付いててくる。


「えっ」


声に出した時にはもう唇が重なっていた。

何が起きたかその時には理解が出来なくて、気付いたら蒼空くんの綺麗な顔が近くにある。

一瞬の事で、驚いていると顔が少し離れて至近距離で見つめ合う。

その綺麗な黒い瞳に引き込まれそうな感じで、もはや引き込まれる事をもしかしたら私も望んでしまっていたのかもしれない。


「そ、らくん?」

「…嫌だった?」


ずるい、嫌じゃないの分かってるくせに。そんな聞き方。


「嫌なわけない…。」


今まで見つめ合ってそんな雰囲気になっても、デコピンされたりキスなんかしてこなかったはずなのに。何で今、ここで。

ずっといつかいつかと望んでいた。

好きな人とドキドキする様なファーストキスをしたいと憧れていた。

実際はドキドキなんて安っぽい言葉では表現できない程、驚きと嬉しさで感情がぐちゃぐちゃに混ざり合っていく。

ファーストキスがこんなに動悸が早くなって苦しいものだなんて知らなかった。
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