龍神島の花嫁綺譚
四
「いらっしゃい、陽葉さん」
陽葉が東の邸宅の前に着くと、まるで図ったように蒼樹が玄関の戸を開けた。
「ようやく、私のところに来る決意を固めてくれましたか」
手をとって、にっこりと笑いかけてくる蒼樹に、陽葉は「いえ」とひきつった笑みを返した。
「今日の分のお米をいただきに……」
いつものようにお櫃を差し出す陽葉に、蒼樹が「そうですか」とやや声のトーンを落とす。
「どうぞ入ってください。ちょうど今、釜戸で炊けた米を蒸らしているところです」
蒼樹に招かれて、陽葉は東の邸宅の中に足を踏み入れた。
案内されて向かうのは、東の邸宅の台所。食事を分けてもらうために何度かお邪魔したその場所では、三人の女性が料理しながらおしゃべりをしていた。
額の上に小さなツノが二本生えた彼女たちは、人ではなく東の邸宅に使える使用人のあやかし。彼女達は、蒼樹に連れて来られた陽葉を見るとおしゃべりをぴたりとやめた。
陽葉が東の邸宅の前に着くと、まるで図ったように蒼樹が玄関の戸を開けた。
「ようやく、私のところに来る決意を固めてくれましたか」
手をとって、にっこりと笑いかけてくる蒼樹に、陽葉は「いえ」とひきつった笑みを返した。
「今日の分のお米をいただきに……」
いつものようにお櫃を差し出す陽葉に、蒼樹が「そうですか」とやや声のトーンを落とす。
「どうぞ入ってください。ちょうど今、釜戸で炊けた米を蒸らしているところです」
蒼樹に招かれて、陽葉は東の邸宅の中に足を踏み入れた。
案内されて向かうのは、東の邸宅の台所。食事を分けてもらうために何度かお邪魔したその場所では、三人の女性が料理しながらおしゃべりをしていた。
額の上に小さなツノが二本生えた彼女たちは、人ではなく東の邸宅に使える使用人のあやかし。彼女達は、蒼樹に連れて来られた陽葉を見るとおしゃべりをぴたりとやめた。