龍神島の花嫁綺譚
 五頭龍という名の通り、かつての龍神島には五人の龍神がいたらしい。

 五人目の龍神の名は黎斗(れいと)。白玖斗と対で生まれた黒の龍で、五頭龍の中で一番強い力を持っていた。

 軽く息を吐くだけで嵐を呼ぶことができ、天候や海を自在に操る。黎斗はその力で、人や海を脅かしていた。

 黎斗を形作るものは闇。

 五頭龍が行ったとされる悪の所業のほとんどは、黎斗に寄るもので。彼は人々が恐怖に怯える姿を見ることに喜びを感じていた。

 自分の気の済むまで際限なく暴れる黎斗を抑えていたのが白玖斗だったが、黎斗の力はどんどん強くなるばかり。

 次第に、龍神島の五頭龍は異形の悪神だと人間たちから恐れられるようになった。

 人間から何を言われても気にはならなかったが、白玖斗は必要以上に海を荒らす黎斗を問題視していた。

 そこへ、強い霊力を持った天音が現れた。

 白玖斗は蒼樹、紅牙、黄怜と共に天音と手を結び、北の祠に黎斗を閉じ込めて封印した。

 その後、白玖斗と天音は互いを想い合うようになり、天音は白玖斗の花嫁となった。

 黎斗の力を封じてからは、島も海も人里の生活も平和で穏やかだった。

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