無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~
1話 幼なじみの本命は?
〇空き教室(放課後)
新入生が入って1か月が経った5月のこと。
主人公(陽縁美恋)は、下級生の女の子から恋愛相談を受けていた。
陽縁美恋:150cmくらいの小柄な女の子で、背中までくらいの黒髪ストレート。前髪はややぱっつんで、日本美人っぽい雰囲気だけど幼めの顔つき。
下級生:亜麻色のミディアムの髪を外はねにし、編み込みのカチューシャをしている美少女。
下級生「――それで、やっぱり仲良くなりたくて……」
美恋「そっか。ならまずは接点を作っていかないとね」
下級生「やっぱりそうですよね!? うん! そうします!」
下級生は相談が終わると笑顔で立ち上がった。
下級生「ほんとにありがとうございました! やっぱり先輩に相談してよかったです! さすがは縁結び神社の娘さん! 恋愛相談はお手の物って感じでカッコいいです!」
美恋「あはは、どういたしまして。役に立てたのならよかったよ」
美恋は少しぎこちない笑みを浮かべ、去っていく下級生を見送る。
美恋「……はあ~」
教室に誰もいなくなったことを確認すると大きなため息をつき、机に体を預けた。
そのときドアが開き、美恋の親友である日芽花が入ってくる。
代崎 日芽花:肩下までの茶髪をゆるふわに巻いたモデル体型の女の子。美恋とは中学から一緒の親友。恋多き乙女。現在は一つ上の先輩(暁彦)と付き合っており、運命の人と言っている。
日芽花「おつかれ~。今日も頑張ってたね。ホント大したものだよ、毎日毎日さ~」
日芽花は買ってきた飲み物をつっぷした美恋の顔につける。
美恋「つめたっ」
日芽花「コレ、大変そうな美恋に日芽花からの差し入れでーす」
美恋「うわー、ありがとう。実はすっごい喉乾いてたんだよね」
ペットボトルを受け取り喉を潤していると、日芽花が美恋の前の席に座る。
日芽花「それにしてもさ、最近ずいぶん増えたよね。恋愛相談」
美恋「あはは……。まあ、下級生に私が『よすが神社』の娘だって知っている人がいたみたいだからね」
よすが神社:縁結びで有名で、高校の隣町にある神社。美恋はその神社の宮司の娘。
新入生が入ってきて以降、1か月であっという間に美恋のウワサが広がった。
その結果、恋する乙女たちがこぞって美恋に相談しようと押しよせてきたのだった。
日芽花「家のことバレたくなくて、せっかく隣町の高校に入学したのに……。災難だよね~」
美恋「うーん、まあ仕方がないよ。頼られるのは嫌いじゃないしね。……といっても、私に相談されてもご利益なんてないと思うけど」
遠い目をする美恋。日芽花は納得したように頷いた。
日芽花「まあ美恋、付き合ったことないもんね」
美恋「うぐっ!」
日芽花の直球の言葉に胸を押さえる。
うめき声をあげながらも、なんとか日芽花を見上げた。
美恋「うう……。人のコンプレックスをそんな剛速球でなげんといて……」
美恋は縁結び神社の娘なのに恋愛経験が乏しいことを気にしていた。
だからそれを隠し、陰で本やテレビで勉強しながら相談を受けている。
美恋(期待を裏切りたくないし、バレるわけにはいかないけど……)
日芽花「ごめんごめん。でもさー、それをコンプレックスっていうのなら、誰かと付き合ってみたらいいのに」
美恋「日芽ちゃん、私の家の事情知ってるでしょ」
机の上で手を組み、ものすごく深刻な顔をする美恋。
日芽花は思わず苦笑いを浮かべる。
日芽花「神職の皆さんも美恋の家族も、そろいもそろって強面マッチョさんだもんね。あはは」
美恋「笑いごとじゃないの! あの集団のせいで私がどれだけ苦労しているか……!」
拳をにぎり何とも言えない顔になる美恋。
日芽花「でもいい人たちじゃない。あの筋肉も、境内にある道場のおかげなんでしょ? なんだっけ、護身術? 愛する人を守るための力をつける道場だっけ。いいじゃん。愛だよ」
美恋「そりゃそうだけど……」
護身術道場:「よすが神社」にある、小さいながらも人であふれている道場。
愛する人を守れるように強くならなくてはという高尚なモットーから作られたらしく、神職の人たちは大抵道場へ通っている。
稽古に熱が入るあまり、自主的に体を鍛える人が続出し、結果的にマッチョが増えてしまった。
日芽花「あたしは面白いと思ったよ?」
美恋「そう言ってくれるのは日芽ちゃんくらいなのよ……」
がっくりと肩を落とす美恋。
美恋は常日頃神社にいる強面マッチョ集団に囲まれていたため、それを知っている男は近づいてこない。
日芽花「……まあ、男の子は尻込みしちゃうかぁ。でもさ、見方を変えてみたら本気度の高い人しか来ないってことじゃない?」
美恋「本気度?」
日芽花「あの集団を見ても美恋の為に引かない覚悟がある人だけが残るってこと。いうなら運命の人って感じ?」
きゃーと目を輝かせる日芽花。
美恋「運命の人っていうと、日芽ちゃんにとっての暁彦くんみたいな?」
日芽花「そうそう!」
美恋「運命の人か~。そう言える人がいるっていいよね。あこがれるな~」
日芽花「美恋も作ればいいじゃない」
美恋「作れたらいいんだけどね……」
諦めた顔をする美恋に、日芽花は意味深に笑った。
日芽花「意外と近くにいるかもよ?」
美恋「?」
首をかしげているとちょうど下校時間を告げるチャイムがなった。
日芽花「あ、やば。今日はバイトがあるんだった。ごめん美恋。もう帰るね」
美恋「あ、うん。心配してくれてありがとう。バイト頑張って」
美恋は日芽花を見送って、帰路についた。
新入生が入って1か月が経った5月のこと。
主人公(陽縁美恋)は、下級生の女の子から恋愛相談を受けていた。
陽縁美恋:150cmくらいの小柄な女の子で、背中までくらいの黒髪ストレート。前髪はややぱっつんで、日本美人っぽい雰囲気だけど幼めの顔つき。
下級生:亜麻色のミディアムの髪を外はねにし、編み込みのカチューシャをしている美少女。
下級生「――それで、やっぱり仲良くなりたくて……」
美恋「そっか。ならまずは接点を作っていかないとね」
下級生「やっぱりそうですよね!? うん! そうします!」
下級生は相談が終わると笑顔で立ち上がった。
下級生「ほんとにありがとうございました! やっぱり先輩に相談してよかったです! さすがは縁結び神社の娘さん! 恋愛相談はお手の物って感じでカッコいいです!」
美恋「あはは、どういたしまして。役に立てたのならよかったよ」
美恋は少しぎこちない笑みを浮かべ、去っていく下級生を見送る。
美恋「……はあ~」
教室に誰もいなくなったことを確認すると大きなため息をつき、机に体を預けた。
そのときドアが開き、美恋の親友である日芽花が入ってくる。
代崎 日芽花:肩下までの茶髪をゆるふわに巻いたモデル体型の女の子。美恋とは中学から一緒の親友。恋多き乙女。現在は一つ上の先輩(暁彦)と付き合っており、運命の人と言っている。
日芽花「おつかれ~。今日も頑張ってたね。ホント大したものだよ、毎日毎日さ~」
日芽花は買ってきた飲み物をつっぷした美恋の顔につける。
美恋「つめたっ」
日芽花「コレ、大変そうな美恋に日芽花からの差し入れでーす」
美恋「うわー、ありがとう。実はすっごい喉乾いてたんだよね」
ペットボトルを受け取り喉を潤していると、日芽花が美恋の前の席に座る。
日芽花「それにしてもさ、最近ずいぶん増えたよね。恋愛相談」
美恋「あはは……。まあ、下級生に私が『よすが神社』の娘だって知っている人がいたみたいだからね」
よすが神社:縁結びで有名で、高校の隣町にある神社。美恋はその神社の宮司の娘。
新入生が入ってきて以降、1か月であっという間に美恋のウワサが広がった。
その結果、恋する乙女たちがこぞって美恋に相談しようと押しよせてきたのだった。
日芽花「家のことバレたくなくて、せっかく隣町の高校に入学したのに……。災難だよね~」
美恋「うーん、まあ仕方がないよ。頼られるのは嫌いじゃないしね。……といっても、私に相談されてもご利益なんてないと思うけど」
遠い目をする美恋。日芽花は納得したように頷いた。
日芽花「まあ美恋、付き合ったことないもんね」
美恋「うぐっ!」
日芽花の直球の言葉に胸を押さえる。
うめき声をあげながらも、なんとか日芽花を見上げた。
美恋「うう……。人のコンプレックスをそんな剛速球でなげんといて……」
美恋は縁結び神社の娘なのに恋愛経験が乏しいことを気にしていた。
だからそれを隠し、陰で本やテレビで勉強しながら相談を受けている。
美恋(期待を裏切りたくないし、バレるわけにはいかないけど……)
日芽花「ごめんごめん。でもさー、それをコンプレックスっていうのなら、誰かと付き合ってみたらいいのに」
美恋「日芽ちゃん、私の家の事情知ってるでしょ」
机の上で手を組み、ものすごく深刻な顔をする美恋。
日芽花は思わず苦笑いを浮かべる。
日芽花「神職の皆さんも美恋の家族も、そろいもそろって強面マッチョさんだもんね。あはは」
美恋「笑いごとじゃないの! あの集団のせいで私がどれだけ苦労しているか……!」
拳をにぎり何とも言えない顔になる美恋。
日芽花「でもいい人たちじゃない。あの筋肉も、境内にある道場のおかげなんでしょ? なんだっけ、護身術? 愛する人を守るための力をつける道場だっけ。いいじゃん。愛だよ」
美恋「そりゃそうだけど……」
護身術道場:「よすが神社」にある、小さいながらも人であふれている道場。
愛する人を守れるように強くならなくてはという高尚なモットーから作られたらしく、神職の人たちは大抵道場へ通っている。
稽古に熱が入るあまり、自主的に体を鍛える人が続出し、結果的にマッチョが増えてしまった。
日芽花「あたしは面白いと思ったよ?」
美恋「そう言ってくれるのは日芽ちゃんくらいなのよ……」
がっくりと肩を落とす美恋。
美恋は常日頃神社にいる強面マッチョ集団に囲まれていたため、それを知っている男は近づいてこない。
日芽花「……まあ、男の子は尻込みしちゃうかぁ。でもさ、見方を変えてみたら本気度の高い人しか来ないってことじゃない?」
美恋「本気度?」
日芽花「あの集団を見ても美恋の為に引かない覚悟がある人だけが残るってこと。いうなら運命の人って感じ?」
きゃーと目を輝かせる日芽花。
美恋「運命の人っていうと、日芽ちゃんにとっての暁彦くんみたいな?」
日芽花「そうそう!」
美恋「運命の人か~。そう言える人がいるっていいよね。あこがれるな~」
日芽花「美恋も作ればいいじゃない」
美恋「作れたらいいんだけどね……」
諦めた顔をする美恋に、日芽花は意味深に笑った。
日芽花「意外と近くにいるかもよ?」
美恋「?」
首をかしげているとちょうど下校時間を告げるチャイムがなった。
日芽花「あ、やば。今日はバイトがあるんだった。ごめん美恋。もう帰るね」
美恋「あ、うん。心配してくれてありがとう。バイト頑張って」
美恋は日芽花を見送って、帰路についた。
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