無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~
3話 どうして?
〇人が少ない神社の奥
静かな道を美恋が歩いている。その表情は晴れやか。
美恋(うまく舞えてよかった~。皆盛り上がっているみたいだし、早く着替えて私も見に行こう!)
そんなことを考えて歩いていると、突然後ろから腕をつかまれる。
美恋「!?」
驚く美恋だったが、相手の力が強くて物陰に引き込まれる。
美恋「な、なに!? だれ!?」
不審者「へ、へへ」
慌てて振り返った美恋の前には、見たこともない中年の男が立っていた。
男は明らかにおかしな様子で、美恋を見てにやにやと笑っている。
美恋(そ、そう言えば、最近小学生や中学生の後をつけている不審者の目撃情報があったような!?)
美恋は男がその不審者ではないかと予想し、ぞっとする。
美恋「ちょ、は、離して!」
不審者「や、やっとみつけた。僕の理想の黒髪幼女……」
美恋「よ、幼女!!?」
美恋(ひょっとして私のこと小学生か中学生だと思ってる!?)
美恋(と、とにかく逃げないと……!)
腕に鳥肌を立てながらも腕を振りほどこうともがく美恋。
美恋(でも、この人を放っておいたら次の被害者が出ちゃうんじゃ……?)
そう思うとぴたりと止まる。
美恋(そうなったら小さい子が狙われることになる。そんなのダメだ!)
幸い、自分も護身術なら少しだけかじったことがある。
そう思った美恋は、意を決して男を取り押さえようと向き合った。
そのとき。
不審者「いてええええ!?」
美恋「!?」
突然叫び出した不審者に驚く。
見れば、美恋の腕を掴んでいたはずの不審者の腕が後ろにひねりあげられていた。
視線を上げると、不審者を取り押さえていたのは鋭い目をした香云だった。
美恋「か、香云!」
香云「美恋、下がってろ」
そういった香云の目からは激しい怒りが見て取れる。
香云「……おっさん。ロリコン趣味か知らないけど、恥ずかしくないわけ? 白昼堂々と巫女を襲うなんてさ」
香云「最近話題になっていた不審者って、お前のことだろ? もう警察も呼んである。逃げようとなんて思わねぇことだ」
今まで見たことがないくらい怒っている香云に、美恋はびくりと肩を揺らす。
不審者は香云を一目見ると、掴まれている腕を振りほどこうともがいた。
不審者「は、はなせよっ! クソガキがっ!」
不審者は初めは強気な口調だったが、全然振りほどけない腕に焦りを覚えていく。
香云「……お前は俺の大切な相手を傷つけようとした。腸が煮えくり返ってしかたがねぇ。本当ならこんな腕、へし折ってやりたいが……」
不審者「いてええ!」
香云は取り押さえる手にさらに力を籠めた。
本当にやりかねない香云に、美恋は焦って止める。
美恋「か、香云! ダメだよ! そんなことしたら、香云が悪くなっちゃうかもしれない!」
香云「……美恋がそう言うのなら」
ややあって力を緩める香云。不審者に低い声で囁く。
香云「だが許したわけじゃない。お前の処遇はこの人たちに任せることにしただけだ」
香云の後ろにはいつの間にか強面マッチョ集団がいた(マッチョ集団、首や拳をゴキゴキと鳴らしている)。
それをみた不審者は青ざめて震えた。
香云「……そう言うことなんで、後は頼みます」
美恋の兄(陽縁紗月)「任された。香云は美恋を安全なところに連れてってくれ」
香云「そのつもりっすよ」
美恋は香云に手を繋がれて家へと向かった。