無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~
〇学校(日中)
その日から美恋は香云を避け始めた。
様子のおかしかった美恋を気にした香云が美恋を何度も尋ねてくるが、そのたびに教室を不在にしているをダイジェスト。
・先生に呼び出されたからと走って逃げる美恋
・チャイムと同時に席を立つ美恋
・昼ごはんをもって見つからない場所に向かう美恋
美恋(とにかく気持ちに整理を付けたい。だからなるべく鉢合わせないように……)
なんてことをしているとあっという間に放課後に。
いつもは教室で香云をまっているが、今日は気まずさから教室にいることはできなかった。
美恋(いく場所もなくて気がついたらここにきていたけど……)
無意識に来ていたのは告白スポットの近くの渡り廊下だった。
向かう先に香云がいないか慎重に様子を伺う。
美恋「よし。いない」
香云「誰がいないんだ?」
美恋「うわー!?」
突然後ろから声がして飛び上がる美恋。
慌てて振り返ると不機嫌そうな香云が立っている。
美恋「あ、か、香云! な、なんでここに!?」
香云「こっちこそ聞きたいんだけど。お前、今日明らかに俺を避けてるよな」
美恋「え!? そ、そうかな? き、気のせいだよ~」
香云「だったら俺の目を見て言えよ」
明らかに嘘だと分かる美恋の言葉に、香云は呆れたようにため息をはく。
香云「なあ、教えてくれよ。なんで避けてるんだ?」
美恋「そ、それは……」
香云「……俺が嫌いになった?」
美恋「ち、ちがうよ!」
悲し気につぶやく香云に、思わず強めの否定が出る。
顔を振る美恋に、香云の眉間のしわは余計に深くなる。
香云「ならどうして?」
美恋「……」
香云「まただんまり?」
眉を寄せた香云に、美恋は胸の内を明かす。
美恋「……その、自分の気持ちにけじめを付けたくて」
香云「けじめ? なんのけじめだ?」
美恋「……」
香云「もしかして……俺から離れるけじめ、とかじゃないよな?」
美恋「っ」
香云の言葉にびくりとする美恋。
思わず上げた顔は、どうしてわかったのかと如実に現れている。
香云「……なんで? なんで俺から離れようとするの?」
美恋「……」
香云「俺のことが嫌いなのか? 顔も見たくないから避けていたってことか?」
美恋「そうじゃないよ」
香云「じゃあなんでだよ! 言ってくれないと分からねぇよ!」
珍しく焦った声を出す香云。
苦しそうに眉を寄せ、美恋の腕を掴む。
香云「俺のことが嫌ならはっきりフってくれ。なんでか分からないまま、そうやって逃げられるのが一番辛いんだよ……」
項垂れるようにうつむいた香云。
弱弱しい香云の姿を見た美恋は胸を痛める。
美恋(どうして香云がそんな顔をするの……)
美恋(そんな傷ついたみたいな顔を……)
美恋「っ」
香云の悲しんでいるところなど見たくなくて手を伸ばす。
けれど脳内で女の子とキスしていた香云の姿が浮かんで手を止めた。
感情がぐちゃぐちゃになった美恋は思わず口を開いてしまう。
美恋「だって……!」
美恋「だって私のこと好きとか言いながら、他の女の子とキスしてたじゃない!!」
押さえていた感情が爆発。涙が頬を伝う。
香云「……は?」
美恋「なんでよ! なんで拒否しなかったの!? あの子が可愛かったから!? 私とすらキスなんてしたことないくせに、告白されたらああいうことしちゃうんだ!? よかったですね、私よりすんごく可愛い子にモテて!」
香云「お、おい? なにを」
美恋「ああいうメイクばっちりで可愛らしい子が好みなんだったらそっちに行けばいいじゃない! 私は巫女だから派手なメイクも髪染めもできないの分かってるでしょ!?」
香云「まてって」
美恋「この浮気者! 女ったらし! どうせ私は可愛くないですよーだ!」
美恋、ワンワンと泣き始める。
対する香云はなんとなく察した顔をして頭を抱えていた。
香云「い、いや美恋。お前、何か勘違いしているから」
美恋「何が勘違いなのよ!」
香云「いや、だから。俺は誰ともキスなんて……」
美恋「うそ! だってばっちり見たんだよ!? 告白スポットのこの場所で! 香云と美少女が顔を寄せ合ってるのを!」
香云「いやだから! 聞いてくれって!」
?「先輩?」
香云と美恋が言い合いをしているところに、鈴を転がしたような声が響く。
二人がそちらを見ると、香云とキスをしていた下級生がいた。
下級生は泣いている美恋を見た途端、険しい顔になって香云に詰め寄る。
そして香云の胸倉を掴んでドスの効いた声を出した。
下級生「テメェ! オレの好きな子、泣かせてんじゃねえよ!」
あまりのギャップに止まる美恋。(涙も引っ込んでいる)
美恋「………………え??」
美恋(オレの好きな子?? 泣いてる? というか、なんで香云にケンカ腰で……??)
今にも殴りかかろうとする下級生に問いかける。
美恋「ちょ、ちょっと待って? 詰め寄る相手間違えてない? あなた、香云のことが好きなんじゃ……??」
下級生「ち、違いますよ! なんですかその勘違い!」
美恋「え、勘違い?」
下級生「そうです! だってオレが好きなのは陽縁先輩ですから!」
自信満々に全否定する下級生に再び固まる現場。
ひゅお~という効果音が聞こえる。
美恋「……え。えええ~~~!??」