無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~
〇帰り道・夕暮れ
ブスっとした表情の美恋と、苦笑いを浮かべた香云が一緒に歩いている。
美恋「聞いてないんですけど」
香云「まあ言ってないからな」
日芽花に聞いた内容を思いだす美恋。
内容:美恋の彼氏になるには「俺たちを倒せる強い男じゃないと認めん!」というムーブをかましていた家族に認められる必要があったこと。
美恋(過保護だとは思っていたけど、ここまでだったとは……!)
美恋「やだもう、恥ずかしい……」
がっくしと落ち込む美恋。
香云「まあお兄さん達も美恋を心配してのことだろ」
美恋「だとしても恥ずかしすぎるって……。っていうか香云が道場に通い続けていたのもそのせいってきいたんだけど」
香云「まあな。お前に想いを伝える様になったのは、兄さんたちからようやく認めてもらえたからだし」
美恋「……変なところで真面目を発揮しないで」
ふいに立ち止まった香云に、美恋も立ち止まる。
香云「俺はお前傍に居たい。そのために必要ならなんでもやるよ」
美恋「っ」
急に素直な言葉を掛けられて動揺する美恋。
香云「……美恋は俺が傍にいるのは嫌? あいつのほうがいい?」
美恋「香云……」
朝灯のことを気にしている香云。
すごく切なそうな表情でいわれ、言葉が出てこなくなる美恋。
見つめ合ったまま少し時間が経つ。
香云「……帰ろうか」
美恋「……うん」
(美恋のモノローグ)
切なげに私を見つめる目も。
愛おし気に名前を呼ぶ声も。
触れたいのを我慢するかのように上げられた手も。
全部、私は知らなかった。
ずっと一緒にいて、なんでもしっていると思っていたのに……。
知っているつもりで知らなったんだ。
でも、知らないままでいたくない。
もっと見たい。私の知らない顔を見せてほしい。
そう思ってしまう自分に、私はもう気がついている。
そう思うのは、きっと――香云のことが好きだから。
だからこのままではダメなんだ。
(美恋のモノローグ終了)
美恋の手が固く結ばれた描写カットイン。