無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~
7話 幼いころの話
〇下校途中にある公園
ブランコに腰を下ろした美恋が、ぼんやりと空を眺めていた(夕暮れの物寂しい雰囲気)。
美恋「……」
先ほどの朝灯とのことを思いだす美恋。
そこに息を切らした香云がやってくる。
香云「はあ、はあ。やっぱりここにいた!」
美恋「あれ、香云?」
香云「あれ、じゃないわ。お前な、迎えに行くっていったろ。一人で帰るなよ! 家までいって帰って来てないって言われたとき、心臓止まるかと思っただろ!」
美恋「……あ、そうだったね。ごめん」
美恋にいつもの元気がないと気がつく香云、心配そうな視線を送る。
香云「どうした?」
美恋「……私って、ヒドい人間だなって思ってさ」
美恋はその視線に自嘲気味に笑う。
香云「なにかあったのか?」
美恋「……朝灯くんにね、返事をしてきたの」
香云「!」
一瞬だけ目を広げる香云、視線をさまよわせた後に覚悟を決めたように問う。
香云「……なんて?」
美恋「断ったよ」
美恋は静かに語る。
美恋「あんなに私のことを好きだって思ってくれる人なんて滅多にいないのに、傷つけちゃった」
美恋「平気そうに振舞っていたけど、すごく傷ついていたと思う。泣きそうな笑顔だったもの」
美恋「……でも、私には慰める資格なんてない」
美恋はブランコから立ち上がって、香云の目の前にやってくる。
美恋「だって私は朝灯くんの気持ちに応えてあげられない。私も、自分の気持ちに気がついちゃったから」
美恋「私ね、ずっと考えてた。私の香云に対するこの気持ちがなんなのか」
美恋は胸の前でぎゅっと手を握る。
美恋「今まで香云が傍に、隣にいることが当たり前で気がつかなかったけど……。でも香云が隣にいない所を想像できない。……ううん、違う。想像したくないの。香云の隣に、私以外の人がいるところを」
顔をあげた美恋は真っ直ぐに香云を見つめる。
泣きそうな、苦しそうな、それでいて覚悟を決めた目。
美恋「私ね、香云のことが好きなんだ。離れるなんて、想像できなかった。……きっと、香云から告白される前からそうだったと思う」
美恋(苦しんでいるときも、悲しんでいるときも、どんな時でも傍にいてくれた。私にとって香云は、特別な存在だったの)
美恋「だからね。まだ返事が遅くないなら――」
言葉の途中で抱きしめられる。
美恋「え!?」
驚いて離れようとする美恋だったが、香云は離さないと力を強くする。
美恋(こ、こんなに力強かったの?)
思っていた以上に力が強く、香云が男だということを分からせられる美恋。
ドキドキして顔が赤くなっていく。
美恋「か、香云?」
香云「俺も」
美恋「え?」
香云「俺も、ずっと好きだった。ずっとだ」
香云は甘えるように美恋の首筋に顔を寄せる。
初めて見せられる甘い雰囲気に、美恋は激しく動揺する。
美恋「ど、どどどど、どうしたの!? 今日はなんだか甘えただね!?」
香云「当たり前だろ。ずっと待ち望んでいた相手と、気持ちを通わせられたんだから」
美恋「っ」
香云「――お前は俺がいつからお前に恋焦がれていたか、知らないだろう。どれだけ触れたいのを我慢してきたのか」