無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~
(過去回想導入、香云のモノローグで)
俺と美恋の母親は親友同士で家も近かった。それに同じ時期に子供を授かった。それが俺たちだ。
当然ながら生まれてからも親しくするつもりだったらしいが、美恋の母親は美恋を産んで、そのまま帰らぬ人になってしまった。
しかも生まれた美恋も体が弱く、俺がすくすく育っていく間に何度死にかけたか分からないくらいだった。
そんな美恋を、母は放っておくことなどできなかった。
親友の忘れ形見である美恋を、なんとか生かそうとしていた。
成長した今となっては、その気持ちもよく分かる。
けれど、幼いころの俺にそんな事情など分かるはずもなく、俺は母の感心を奪う美恋を疎ましく思っていた。
本当の子供は俺なのに、どうして美恋ばかり気にかけるのか。
どうして俺を一番に愛してくれないのか。
そんな幼い嫉妬心を持っていたんだ。
もちろん愛されていないなんてことはなかった。
母は優しかったし、父も愛情深く育ててくれていた。
ただ物心ついてからは、母の愛情を独り占めできないことをずっと不満に思っていた。
だから子供のころ、俺はすぐに逃げる癖がついていた。
逃げ出せば、親が必ず迎えに来てくれるから。
他の何を放っておいても、俺を探してくれるから。
それが親を困らせているのは分かっていても、自分に目を向けてくれるのならなんでもよかったんだ。
そうして過ぎていき、5歳になったころ。
ようやく美恋の状態が安定して、家の外に出られるようになった。
ちょうどそのときだ。俺と美恋が初めて出会ったのは。
(香云のモノローグ終了。そのまま二人の出会いの回想へ)