無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~

 〇時間経過・その日の夜

 香云の両親が慌ただしくしていて何事かと思う香云。
 聞けば美恋が暗くなっても家に戻っていないらしい。


 香云の母『どうしよう……。寒い時期だし、あの子体が弱って動けなくなっているのかも……』
 香云の父『落ち着け。俺らが焦っても仕方がないだろう。神社の人たちも捜索(そうさく)に当たっているっていうし』

 香云の母『でも……! あの子までいなくなっちゃったら私……』


 錯乱(さくらん)したように泣く母を見て、まさかと思い走り出す香云。
 昼間いた隠れ場所に行くと、暗闇の中舞っている美恋の姿が。


 幼い香云『お前……!』
 幼い美恋『あ、香云くん! きてくれたんだ』


 美恋は体力が尽きかけでふらふらしている。


 幼い香云『なにやってるんだよ!』
 幼い美恋『だって夜まで舞っていたら受けとってくれるっていっていたから』

 幼い香云『だからって本当にやるやつがいるか!?』
 幼い美恋『わたしが舞って、香云くんが喜んでくれるならやるよ?』


 当然のようにそう言われ、驚く香云。


 幼い香云『なんで……』

 幼い美恋『だって香云くん、ずっとさびしそうだったから』
 幼い香云『え?』


 美恋の言葉に首をかしげる。
 美恋は思いだしたようにブレスレットを取り出した。


 幼い美恋『これね、香云くんと香云くんの家族の仲が深まりますようにってねがいながら作ったんだよ』
 幼い香云『……え?』

 幼い美恋『だから受け取ってくれたら、香云くんの家族はだいじょーぶだよ。神様が家族の仲を深めてくれるから、さびしくないよ』
 幼い香云『……僕の、ため?』

 幼い美恋『うん!』
 幼い香云『なんで……。僕、お前にイヤなことばかりいっていたのに』


 満面の笑みでうなずく美恋。
 香云はいたたまれなくなってうつむく。


 幼い香云『なあ、なんでそんなにがんばれるの?』
 幼い美恋『うーん。私は皆に心配かけてばかりだから、せめてできることはしたいなって。そうすればみんな笑ってくれるから』


 美恋は昔から自分のことよりも人のことを考える性格だった。


 幼い美恋『もちろん香云くんにもだよ! だからこれを受けとってほしいんだ』


 ニパッと笑う美恋からブレスレットを受け取る香云。
 美恋の優しさと真っ直ぐな心に触れた香云の中で、美恋の存在が大きくなっていた。


 (回想終了)

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