無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~


 一人になった美恋は机に突っ伏した。


 美恋「うあああ~~」

 美恋(私ったら、もう、もうっ!!)


 ひとしきり(もだ)えると少し冷静になった。


 美恋(……でも、香云は余裕ありそうだったな。自分ばかり意識していて、正直悔しい……)


 (うずくま)ったまま考える。


 なんとかして香云にも同じ気持ちを味わってほしいけれど……。


 美恋(でもどうやれば……というか、香云って本当に私のこと好き、なんだよね?)

 美恋(だったらなんで余裕そうなんだろう……)

 美恋(うーん)


 その後も一人で考えるが、なぜなのかなど分からず再び突っ伏す。


 美恋「はあ、もう分かんないよ」


 勉強に手を付けようとしても、どうしてもその答えを求めてしまう。
 こうなってしまうと集中などできるはずがない。


 美恋「……気分転換(てんかん)に、なにか」


 部屋を見回すと本棚が目につく。

 本棚には参考書や漫画の他に、アルバムなどが飾ってあった。


 美恋「わー懐かしい!」


 ぺらぺらとアルバムをめくると、美恋と香云の幼い写真がたくさんあるのを見つける。


 美恋「あっ。これって香云と仲良くなったころの写真だ!」


 その写真は二人で並んでピースをしている。
 香云の腕には赤と白のブレスレットが付いている。


 美恋(そう言えばいつの間にかブレスレットをつけなくなったんだよね。切れちゃったのかな?)


 と、そのとき香云が戻ってきた。


 香云「ん? なにやってんだ?」
 美恋「あ、香云。アルバム見てるの」
 
 香云「お前な、勉強は?」
 美恋「いいじゃない。全然集中できないんだもの。それよりみて。懐かしい写真ばっかり!」


 香云は飲み物をテーブルにおいて、美恋のそばによってくる。


 香云「懐かしいな」
 美恋「ね~。たくさんあるからつい見ちゃって」

 香云「しかたねーな」


 香云は楽しそうな美恋に(あき)れながらも、共にアルバムを見る。


 美恋「にしてもさ。このころからずっと関係が続いているって、嬉しいことだね」
 香云「どうした急に」

 美恋「んー。なんとなく?」
 香云「なんだそれ。つーか、今は幼なじみじゃなくて彼氏彼女だぞ」

 美恋「分かってるよー。でも、香云は今までより余裕(よゆう)があるみたいだけど」
 香云「は? 俺に余裕?」

 美恋「うん。関係が変わってから私ばっかりドキドキしてる。なんか悔しい」


 ふくれっ面の美恋に、香云は後頭部を掻いた。


 香云「お前、ほんと分かってないな。俺だって緊張してんだぞ」
 美恋「ええ? 本当に?」

 香云「ああ」
 美恋「ふーん?」


 香云はそう言うが、いたって普通に見える。
 ポーカーフェイスがうまいのは知っていたが、美恋はそれが不満だった。


 だから少しだけイタズラ心が芽生えた。


 美恋(香云が本当に緊張しているのなら……)


 香云をちらりと見上げると、アルバムに目を落としていて無防備(むぼうび)だった。


 美恋(……)


 ウズッとする美恋。
 気がつくと香云の頬にキスを落としていた。

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