無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~

 美恋の唇が香云の頬から離れる。
 静寂(せいじゃく)が部屋を包んだ。


 香云「……え?」
 美恋「イタズラ大成功、なんてね」


 美恋はドキドキとなる心臓をおさえて香云を見上げる。
 至近距離にいた香云は、ポカンとした顔をしていた。


 美恋(っこれ、意外と恥ずかしい!)


 本当に緊張しているのなら不意打ちで照れてくれるはずだと思うも、思いのほか自分の方が恥ずかしくなってしまう美恋。



 羞恥心(しゅうちしん)をごまかすように立ち上がる美恋。



 美恋「ど、どう? さすがにドキドキしたんじゃ……な、い……?」




 言葉の途中で、獰猛(どうもう)な視線を受け、びくりと震える。


 美恋「……え?」


 怒ったような、切羽(せっぱ)詰まったような視線のままの香云は、じりじりと美恋に迫っていた。


 美恋「え? え? ちょっと香云? ……ウワッ」


 思わず後ずさりをする美恋。
 けれどすぐに行き止まり、置いてあったベッドに足を取られて仰向けに倒れこむ。


 美恋(や、やばい!)


 そう思って逃げようとするも、香云に両手をからめとられ、上に乗られて逃げられない。


 美恋「か、香云……?」


 心臓の音がうるさいくらいに聞こえてくる。

 覆いかぶさるように美恋の上に乗った香云は、未だに肉食獣のような目つきで、美恋はなぜだか体が熱くなってきた。



 唇が触れるか触れないかの至近距離で見つめ合う。


 美恋「あの……」
 香云「お前、うかつすぎ」


 つぶやくように言われた言葉がどういう意味か問おうとする美恋だったが、声を出す前に唇をふさがれてしまうのだった。



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