無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~
10話 お勉強会のハプニング・後編
〇前回の続きから
ベッドの上で覆いかぶさるようにして唇を奪われた美恋。
何が起っているのか分からないながらも逃げようと顔を反らす。
美恋「っん、ふ、か……ぁ、んむ」
けれど香云は逃がさないというように追ってきては唇を塞いでくる。
美恋(な、なに? どうなってるの?)
美恋はパニックになるけれど、だんだんと息が続かなくなってきて、思考がぼやけてしまう。
美恋(体……あつい。苦しい。でも、)
息継ぎをしたくて顔をずらすとすぐに追ってくる香云から逃げられずに、抵抗をやめる美恋。
美恋(……食べられているみたい)
部屋の中には息苦しそうなくぐもった声だけが響く。
美恋「か、かい」
香云「……」
息も絶え絶えに訴えると、ようやく離れていく。
けれど手はからめとられたままで、上からも退いてくれない。
香云は涙目で赤くなっている美恋の一挙一動を見逃さないように見つめ続けていた。
唇が離れたことで息を整える美恋からは、香云の瞳が爛々と輝いているのが見えた。
まるで自分を食べつくしたいというかのような視線に、思わず体をひねる。
が香云の力に適う訳もなく、びくりともしない。
そんな美恋を見て、香云の喉元が上下した。
香云「…………美恋はさ、俺がどれだけ長い間我慢してきたか、知っているはずだろ?」
美恋「え……」
ややあって香云は静かに問いかけてくる。
けれど瞳は決して反らさない。
香云「そんな相手が自分の部屋にいて、付き合えていて。しかもイタズラのつもりか知らないけど、キスをしてきたら……。歯止めが利かなくなるに決まってるだろ」
再び唇が降りてくる。
美恋「ぁ、香云……」
唇が触れるかどうかの微妙なところで止まる香云。
今度は何を思ったのか、耳元に唇を近づけた。
香云「それとも……誘ってるの?」
美恋「!!」
耳に熱い吐息がかかる。
切ないような、我慢を強いられているような、そんな声色だ。
それを認識すると美恋もなんだかふわふわとした気分になってくる。
美恋(……なん、だろう。変な気分)
熱いような、むずかゆいような。
心の奥がしびれているかのような気分。
美恋はそれがなんなのか考えようとするけれど、酸素不足でぼうっとする頭では思考がまとまらない。
だからただ香云を見上げていた。
香云「……っ。違うなら、抵抗してみてよ」
香云の手は頬をなで、髪を掬い、キスを落とす。
それだけで先ほどの唇の感触を思いだしてしまい、身体がうずいた。
美恋「ひぁ、香云……」
なんとなく怖くて香云の名を呼ぶ。
けれどそれは香云を煽るだけだったらしく、唇が頬へ、首筋へと降りていった。
鎖骨の辺りに、香云の唇が触れる。
チクリと痛みを感じて、ようやく状況を飲み込めた。
美恋「!」
美恋「ま、まま待って!」
慌てて制止する美恋。
香云「……何」
びくりとするほど低い声が降ってきて、怯む美恋。
美恋「ご、ごめん。ほんと考えなしだった!反省してるから、お願い。待って」
涙目で懇願すると、しばらく見つめ合った後、大きなため息が聞こえる。
香云「……ほんと、よく考えて行動してほしいよ」
そんな言葉が聞こえると、体の上から重みが消えた。
起き上がり見れば、香云は頭を掻いて距離をとっている。
香云「ようやく付き合えたのに、美恋の嫌がることなんてしたくないしな。俺はお前を大事にしたいんだから」
美恋「う、うん。ほんと、ごめんね」
美恋もいそいそと起き上がり、ベッドから降りる。
香云「……はあ」
ため息の止まらない香云は首を掻きながら、勉強道具を片付ける。
香云「こんな状態じゃ、勉強なんて教えられないだろ。今日はもう帰れ」
美恋「あ、うん」
美恋は逃げるように家に戻っていった。
〇美恋の部屋
走って帰ってきて、部屋に入るなりその場にしゃがみ込む。
美恋「……び、びっくりした」
ドアに背を預け赤面。
思いだすのは唇の感触。
美恋「うわ~~~!」
頭に浮かんだ光景をかき消すように腕を振り、ぽつりとつぶやく。
美恋「…………明日からどんな顔して会えばいいの?」