無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~
美恋「日芽ちゃん、暁彦くん! きてくれてありがとう!」
日芽花「やっほ~美恋! きたよ~」
暁彦「お疲れ様。今年も大盛況だね」
美恋「あはは、おかげさまで。って言うか二人とも、すっごく素敵だね!」
日芽花と暁彦の浴衣姿に目を輝かせる美恋。
日芽花「ありがと~。今日の為に奮発したんだ~!」
オレンジベースの生地に花柄があしらわれた可愛らしい浴衣を見せてくる日芽花。
美恋「めちゃくちゃ似合ってるよ!」
暁彦「可愛いよな」
日芽花「えへへへ」
暁彦「やっぱりひめはなんでも似合うな」
日芽花「あっくんも着流し色っぽくて最高だよ!」
暁彦「ありがと」
二人は見つめ合いほほえみあう。完全に二人の世界だった。
美恋(本当にこの二人はお似合いというか、波長がすっごく合ってるんだろうなぁ)
見ていてほほえましくなるほど柔らかい時間が流れていることに少し羨ましく思っていると、こちらを見た日芽花と目が合う。
日芽花「ところで美恋はまだ仕事中なの?」
美恋「あ、今さっきもう休んでいいって言われたから、ちょうど着替えてこようかなって思ってて」
日芽花「美恋も浴衣着るの?」
美恋「そのつもりだよ」
日芽花「うわー! 見たい! 着替えてきてよ~! 待ってるからさ」
美恋「え、待たせるのは悪いよ」
日芽花「いいの! だって皆で浴衣姿の写真撮りたいし」
美恋「! それは確かに!」
納得した美恋、急いで着替えてくる。
美恋「お待たせ~!」
巫女服姿から紺色の生地に花火柄の浴衣姿になる美恋。
日芽花「きゃー! やっぱり似合うね!」
美恋「えへへ、そうかな」
日芽花「うんうん、これは香云くんもメロでしょ。……ところで香云くんは?」
美恋「あ、香云は道場の出し物を手伝っていて、もうすぐ終わるってさっきメール来てたよ」
日芽花「そうなんだ。じゃあさ、写真とって送ってやろうよ」
日芽花はそう言うとスリーショットを撮り、香云へ送信する。
その顔はニヤニヤと笑っていた。
美恋「なんて送ったの?」
日芽花「んー? ふふ、秘密!」
楽しそうな日芽花に首を傾げる美恋。
日芽花「じゃあ香云くんが来るまで、せっかくだからおみくじも引かない? あ、もう終わりなんだっけ?」
美恋「祈祷は終了しているけど、お守りとかおみくじならまだ引けると思うよ」
日芽花「よし、じゃあ引こ!」
さっそくおみくじを引く三人。
日芽花「やった、大吉!」
暁彦「オレもだ」
喜び合う二人をよそに、美恋はショックを受けた様子。
美恋「……凶なんですけど」
美恋の引いたくじには「凶」の文字が。
しかも内容が不吉。
美恋「『人の言葉に心を乱されることあり。注意されたし』って……」
日芽花「ありゃー。どんまい」
暁彦「まあこういうのは気の持ちようだよ。気にしない気にしない」
美恋「そ、そうだよね!」
とそこに香云からメールが届く。
美恋「あ、香云も手伝い終わったみたい。すぐに来るって」
日芽花「香云くんくるまで待ってよっか?」
美恋「ううん。たぶんすぐ来るだろうし、二人の時間奪っちゃうのも申し訳ないから大丈夫だよ!」
日芽花「そう? じゃああたし達はそろそろ行くね」
美恋「うん! 二人とも来てくれてありがとね! お祭り楽しんで!」
二人と別れる美恋。
境内で一人待つ。
美恋(もうすぐ香云が来る……。二人きりになるの、香云の部屋での一件以来だ)
意識すると途端に気になりだしてそわそわする。
髪を直してみたり、浴衣を気にしたり。
美恋(どうだろう、二人はああいってくれたけど、変じゃないかな?)
普段の巫女服姿は見慣れているだろうけど、浴衣は華やかなものにしたからっギャップがあるかもしれないと心配。
けれどそれ以上になんて言ってくれるのかが楽しみ。
美恋(……早く来ないかな)
?「あれ? 陽縁?」
美恋「っ」
一人で待っている美恋を呼ぶ男の声が聞こえて、血の気が失せる美恋。
聞き覚えのある声は、中学時代の嫌な思い出を蘇らせる。
美恋(……振り返りたくない。この声、だって、この声は……)
?「おい、お前陽縁だろ?」
嫌だと思うも、再び呼ばれれば振り向くしかないわけで――。
美恋「……木村、先輩」
先ほどまでの楽しそうな顔が嘘のように顔色が悪くなる美恋だった。