無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~

12話 コンプレックスを覆してくれるのは


 〇前回からの続き

 神社で香云(かい)を待っていた美恋(みこ)の前に中学時代の先輩が現れる。

 その人の声を聞いた瞬間、血の気が引いてしまう。


 木村「やっぱり陽縁(ひより)じゃん。うわ、懐かし!」
 美恋「……木村先輩」


 木村:中学のころ美恋に優しくしてくれてた先輩。けれども陰で美恋のことを「可愛くない女は恋愛する権利がない」と笑っていた人。


 木村はギャルっぽい女の人と一緒にいた。


 美恋(彼女? にしてはなんか……)


 よそよそしい女の人の態度(たいど)に疑問を持つが、木村の声に思考を中断する。


 木村「そういや、お前ん家ここだったか」
 ギャルっぽい女の人「……だれ?」

 木村「俺の後輩だよ。こいつ、ここの神社の娘で巫女(みこ)やってんの」


 美恋「あ、えと」
 木村「こいつさ、昔俺のこと好きだったんだぜ!」


 紹介され、ぺこりと頭を下げようとする美恋だったが、木村の言葉に固まってしまう。


 木村「まあ付き合ってないけどね。俺の好みは君みたいな派手(はで)な子だし。ほら見て。こいつ小さいし、メイクっ気もないし、座敷童(ざしきわらし)みたいじゃね? ウケるっしょ!」

 木村「俺と付き合えると思われてたら最悪だよ~! 絶対ないよなー。ぎゃはは!」


 明らかに嘲笑(あざわら)われた美恋、ぎゅっと拳に力が入る。


 美恋(……なんで、こんな風に言われないといけないんだろう)


 美恋は確かに中学時代、木村のことをいいなと思ったことはある。
 けれどそれは一時的なものだった。


 美恋(だってこの人……こういう人だって気がついたから)


 (中学時代の回想、フラッシュバック)


 木村は初めは優しかった。だから惹かれていた。


 けれどある日、美恋を嘲るような話を友人たちに言いふらしているところを目撃してしまう。


 木村『あんな奴、俺が好きになるわけねーじゃん?』

 木村『ちょっと優しくしたらコロッと落ちたよ。ウケる』

 木村『けどさー、金持ちかと思って近づいたけど全然だったわ。まじ意味ねえわ』


 木村友『ひでーな』
 木村『そうかー? 女は可愛くないと恋愛する権利すらないだろ。あんな座敷童みたいな女に、すこしでも夢を見せてやったんだ。十分すぎる程優しいだろうが』

 木村友『うわ、マジでひでえw』


 それを建物の影から聞いていた美恋は呆然(ぼうぜん)とする。


 そして木村達が去った後に泣きながら歩いていく。
 心に傷を負った美恋は、それ以降自信を無くした。


 かわいくない自分は恋をすることなんてできないんだ。


 美恋はそう思い込み、恋することを諦めた。


 だからこそ香云からの気持ちに気がつくことはなかったのだ。


 (回想終了)

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