無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~
それを見送ると香云はそっと美恋の顔に手を添えた。
香云「大丈夫か?」
美恋「……うん」
元気のない美恋に、香云は心配の表情になる。
香云「あいつに言われたこと、気にしているのか?」
美恋「……うん」
香云「……」
香云は静かに言葉を零した。
香云「お前が自分に自信がないというのなら……」
美恋「え?」
うつむき気味だった美恋は顔を上げる。
香云「自信が持てるくらい、ずっとお前の良いところを言い続ける。好かれているか不安だというのなら、俺が愛を注いでやるから」
香云「あんなやつの言葉より、俺の言葉を信じろ」
美恋「――香云」
美恋は香云の瞳から目が離せなくなる。
純粋な、心からの言葉だったから。
美恋(……そうだね。香云がそう言うのなら)
美恋「……ありがとう。いつまでもあんな人の言葉を気にしているなんて、ヤだもんね」
先ほどまで冷え切っていた心が、今はもう温かい。
ギャル「あー……えっと」
ふいに女の人の声が聞こえた。
驚いて振り返ると、先ほどのギャルが気まずそうに立っていた。
ギャル「あの、ごめんね。ここにいるのもあれかなとは思ったんだけど、さすがにあのクズの行いに謝罪しないのはどうかなと思って……」
意外に律儀なギャルは頭を下げてきた。
ギャル「ごめんね。嫌な思いをさせて」
美恋「い、いえ。その、彼氏さんに怪我をおわせてしまって……」
ギャル「彼氏? ああ違う違う! あいつただのナンパ野郎だよ。無視してもついてきてたから、神社で白けた視線でも浴びせてやろうかなって思って来たんだよね」
美恋「え、ええ!? そ、そうなんですか!?」
ギャル「うん、そうそう! だから助かったよ。ありがと!」
ギャルはきれいにウインクをしてきた。
ギャル「あー、でも結局ウチのせいで君に嫌な思いをさせちゃったわけだし、なにかお詫びを……」
美恋「ええ!? いや、あなたのせいじゃないですし」
ギャル「でもね、ウチの気が収まらないんだよねー。……そだ!」
ずいっと美恋に近づくギャル。
ギャル「君さ、化粧とか興味ない? 良かったらメイクアップしてみない!?」
美恋「え?」
キラキラと目を輝かせるギャルに困惑する美恋。
美恋「め、メイクアップ?」
ギャル「うんそうそう! 今のナチュラルメイクも素敵だけど、その浴衣に合わせていつもと違う雰囲気にしてみてもいいんじゃないかなと思って!」
ギャル「あ、あいさつが遅れたね。ウチメイクの仕事をしていて、モデルさんとかの化粧もやらせてもらってる渡良瀬悠っていうの!」
美恋「ん? 渡良瀬?」
美恋ハッとする。
美恋「あの~。もしかして弟さんいたりします?」
悠「え? うん、いるよ!」
美恋「弟さんの名前って」
悠「弟の名前? えっとね」
悠「渡良瀬暁彦だよ!」
美恋「やっぱり!!」
悠は暁彦の姉だった。