無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~

13話 灯篭祭り


 〇お祭り会場・夕方

 まだ少しだけ陽が沈み切っていない空の下、灯りだした灯りが二人のシルエットが浮かび上がらせる。

 手を繋いで前を行く香云(かい)の表情は美恋(みこ)からは見えない。



 美恋(香云、さっきから何も言わないけど)


 ちらりと前を行く香云を伺うと、耳が赤くなっていることに気がつく。
 繋いだ手も熱く、ドキドキしてくれていると分かる。


 美恋(……嬉しいな)


 美恋(そう言えば……いろいろあってゆっくり見ていられなかったけど)



 香云の着ている浴衣(ゆかた)に視線を移す美恋。


 美恋(いつもと違う雰囲気(ふんいき)で……なんというか色っぽい)


 意識するとなんだか気恥ずかしくなってくる。


 美恋(すごいカッコいい……って伝えたいけど、こ、言葉が出てこなくて!)


 ひとりでヤキモキする美恋だったが、ふと周りの人たちが灯篭(とうろう)を用意し始めていることに気がつく。
 闇の中にぽうっと浮かぶ光が幻想的。


 美恋「あ、もうそんな時間か」
 香云「先に灯篭を買いに行くか? 確か楽しい時間を詰め込んでその想いが永遠になるように願いを込めて川に流すんだろ? だったらしばらくもって歩いた方がいいよな」

 美恋「あ、うん。そう言われているよ。よく知ってるね」
 香云「そりゃあ調べたからな」

 美恋「え?」


 美恋(香云が、調べた?)


 驚いて固まる美恋に()ねたように振り返る香云。


 香云「なんだよ。せっかくなら灯篭流しのジンクスにあやかりたいと思うだろ」
 美恋「あ」


 灯篭流しのジンクス:『想い人と共に流した灯篭が寄り添っていけば、この先その相手と離れることはない』というもの。


 美恋(香云もそう思ってくれているんだ)


 香云が美恋と離れたくないと思っていることに気がつき、思わずほほえんでしまう。


 美恋「じゃあとびきりのものを探しに行かないとね」
 香云「ああ。どんなやつがいい?」

 美恋「うーん」


 灯篭はいろんな店で売られており、それぞれ違う形をしているため迷う美恋。


 美恋「丸も可愛いけど、王道の四角形もきれいだし……。でも流れやすい形を選んだ方が……」


 ブラブラしながらも真剣に灯篭を見て回る。


 しばらく歩いていると、可愛らしい六角形の灯篭が目に入る。


 美恋「あ、ねえ。あれはどうかな?」


 出店の前にいくと店主に話しかけられる。


 店主「いらっしゃい! ぜひ見てってくれ! 今年のは自信作なんだ。しかもな、灯篭を買ってくれた人には灯篭に好きな文字を刻むサービスもやってるんだぜ」

 美恋「灯篭に文字を刻む?」
 店主「おっ! 興味あるかい? ほら、あっち!」


 店主が指さす先には人で(にぎ)わうブースがあった。


 店主「あそこで灯篭の内側の紙に好きな言葉とか絵を入れられるようにしてるんだよ」
 美恋「へえ~」

 店主「まあ書けるスペースは少ないけど、願い事を書く人が多いかな。せっかく灯篭流しをするんだ。灯篭にも願いを書いた方が叶いそうな気はするよな!」
 美恋「!」


 美恋(た、確かに!)


 店主の話に目を輝かせた美恋。
 香云を見れば、頷いてくれたのでここの灯篭を買うことに。

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