無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~
〇ショッピング街
美恋・日芽花・暁彦の三人でぶらぶらしている。
何がいいのかを話しながらいろんなお店を見て回る。
可愛らしい小物や、実用的な文房具などを見るがどれもぴんと来ない。
美恋「う~ん」
日芽花「なかなかないか~」
暁彦「防具とかは? 香云道場いってるだろ?」
向いにあったスポーツ用品店に入るけれど、様々なものがありすぎてどれがいいのかも分からない。
美恋「使い慣れたものの方がいいのかも」
暁彦「それはそうか」
日芽花「難しいね~」
その後もあれこれと意見は出るがピンとくるものがなかった。
〇カフェ・休憩中
三人ともぐったりとしている。
美恋「はあ~」
暁彦「さすがに疲れたね」
日芽花「どこを見てもイマイチぴんと来ないもんね」
運ばれてきたアイスティーを飲みながら見てきた候補を思い浮かべる美恋。
美恋「一番いいかなって思ったのはブランドのボールペンかなぁ」
日芽花「あのスタイリッシュなやつ?」
美恋「うん。ほら、香云って料理屋を継ぐつもりだからさ。お父さんのレシピとかいろいろと書き溜めてるんだよね」
日芽花「なるほど~。それなら日常的に使ってもらえるか」
美恋「うん。……でもなぁ」
腕を組んで悩む美恋。
暁彦「なにか迷ってるの?」
美恋「うん。それだけだとなんか特別感ないかなって」
付き合って初めて贈るプレゼントだから特別感を出したい美恋。
暁彦「まあ確かに……」
日芽花「ならさ、それプラス思い出の品とかをあげたら?」
美恋「思い出の品?」
日芽花「うん。例えば昔使っていたモノとか、昔あげたもののリメイクとかさ。何かない?」
美恋「うーん」
記憶を掘り起こす。
美恋(そう言えば……)
美恋「昔、香云とであったときにブレスレットあげたかも」
思いだすのは縁結びの糸で作ったブレスレット。
赤と白の糸を三つ編みにした簡単なものだった。
美恋(初めのうちは手首につけていたけど、いつの間にかしていなくなったんだよね)
美恋自身も忘れていたが、香云と付き合うことになった日に思いだした。
日芽花「いいじゃん! 手作りに勝るものはないよ! それにしなよ!」
美恋「でもいつの間にか着けなくなったんだよ? 嫌だったんじゃ……?」
日芽花「あげたのって昔なんでしょ? それじゃあ糸が切れたとかじゃない? 成長しているわけだし」
美恋「確かに……」
日芽花「そうと決まれば早速準備しないと!」
日芽花に後押しされブレスレットを作ることに。
美恋(昔は手伝ってもらったけど、今なら一人でも作れるかな)
なんだかんだいいつつも美恋も乗り気だった。
(ブレスレットを作るダイジェスト)
・縁結びの糸を購入
・神社の手伝いをしながら空いた時間に作っていく美恋
・香云が来るたびに見つからない場所に隠す
・スリルを味わいながらも愉しんでいる様子
・そして三日後に完成する
(ダイジェスト終了)
〇美恋の部屋・夜
美恋「よーし、完成!」
ブレスレットが出来上がったのは香云の誕生日の二日前の夜のこと。
その手元には赤と白の糸でできたブレスレットが(ブレスレットというよりミサンガとか組紐寄りのアクセサリー)。
美恋(シンプルだけど、デザインは凝ったわ。なかなかよくできたんじゃないかな)
たぶんつけてくれるだろうと思う美恋の手には、もう一つのブレスレットがあった。
美恋(……つい自分のも作っちゃった)
二つのブレスレットは対になっていて、ひと目でペアだと気がつくもの。
美恋「露骨すぎるかな?」
一人で百面相をする美恋。
独占したい欲が強いのではと恥ずかしがったり、つけてもらえなかったらどうしようという不安だったり。
そんな美恋のもとに、一通の連絡が入る。
美恋「あっ、予約していたボールペン、届いたんだ」
プレゼントに買おうと思っていたボールペンは、買い物に行った日には入荷待ちになってしまっていた。
けれど香云の誕生日までには入ると聞いたので予約をしていた。
美恋「今日はもう遅いし、明日取りにいこうっと!」