無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~

 〇次の日・ショッピング街

 朝のうちは神社の手伝いをしていたので夕方に引き取りに。

 ボールペンのラッピングをしてもらい会計を済ませる。


 美恋(思いのほかぎりぎりになっちゃったな)


 美恋の家では明日のパーティーの為、日芽花達が飾り付けをしてくれている。


 美恋(私も早く帰って手伝わないと!)


 美恋は楽しそうに帰り道を進んでいった。



 〇時間経過(最寄りの駅を降りた所)

 美恋、何度か後ろを振り返るも誰もいない。
 不安そうな顔で再び歩き始める。


 美恋「……」


 美恋(誰か……ついてきている?)


 夕方だったし、仕事帰りのサラリーマンや買い物帰りの人だろうと思っていたが、ショッピング街を出てからずっと後ろから足音が聞こえてきていた。

 けれど後ろを振り返っても誰もおらず、なんとなく嫌で遠回りをしたのに足音が消えることはなかった。


 だんだん日も沈んできて、暗くなりかけなのが余計に恐怖心を煽る。


 美恋(考えすぎな気もするけれど……)


 美恋は思わず香云にメールを送る。
 そのとき、足音が早くなったのに気がついた。


 とっさに走り出す美恋。


 美恋(怖いっ……香云!)


 そのまま神社に向かう訳にもいかず、神社近くの商店街に逃げ込む。

 商店街にはまだ人がたくさんいたので少し安堵する。


 後ろを振り返っても人に紛れて誰がついてきていたのか分からない。


 美恋(……しばらくここにいよう。きっと香云がすぐに来てくれるはずだから)


 メールを告げるバイブが鳴った。
 香云からメールが来たらしい。


 ほっとして確認しようとした。そのとき




 美恋「っ!?」



 路地裏(ろじうら)から腕が伸びてきて、美恋の口を(ふさ)ぎ、引きずり込んだ(スマホは落としてしまう)。



 薄暗い路地裏で、すぐ後ろに荒い息を零す何者かがいる。
 美恋は感じたことのない恐怖で錯乱(さくらん)するが、身動きが取れない。


 恐怖から涙が浮かび震えてしまう。


 と後ろの男が美恋を振り返らせる。




 美恋「――!!」




 男は以前美恋が舞を舞った日に現れた不審者だった。
 目は血走り、息が荒くなっていて本能的に恐怖を覚える。


 美恋(な、なんで!? どうしてここに)



 不審者「お前の……お前のせいだ!」

 不審者「お前の生でぼくの人生はめちゃくちゃになったんだ!」

 不審者「責任をとれよっ!」



 不審者は意味不明な言葉を羅列(られつ)し、美恋へと怒りをぶつけてくる。


 美恋(やだっ、怖いっ……!!)


 美恋は恐怖から涙をこぼしてしまう。
 それを見た不審者は優越感(ゆうえつかん)に浸った。


 不審者「ああいい気味だ。そうだ、お前は罪を償うためにぼくに使われればいい」


 男はそう言うと美恋を引き倒し、またがってくる。


 美恋(やだっ、いやだ!)


 気持ち悪さでぎゅっと目を瞑る美恋。



 美恋(――香云!!)


 心の中で香云を呼ぶ。

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