無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~



 ――ガンッ!!



 そのときすごい音が聞こえ、体の上から重みがなくなる。


 恐る恐る目を開けてみると、美恋を庇うように前にでた香云の姿があった。


 美恋「か……い」


 奥の方には吹っ飛ばされた不審者が(うずくま)っていた(香云に殴り飛ばされた)。
 けれど美恋は香云しか見えていていない。


 美恋「香云……」
 香云「美恋、下がってろ」


 発せられた香云の声はひどく怒りが(にじ)んだもの。


 殴り飛ばされた男は唾を飛ばしながら(ふところ)から包丁(ほうちょう)を取り出した。

 が香云は冷静なままだった。


 香云「ストーカー、強姦(ごうかん)未遂(みすい)、傷害罪、強要罪、さらに銃刀法違反(じゅうとうほういはん)まで重ねるか」


 むやみに突っ込んでくる不審者の腕を払い、足と肩を掴んで地面にたたきつける。


 不審者「うっ!」


 不審者はうめき声をあげて気絶した。

 香云は包丁を蹴り、万が一にも不審者の手に渡らないようにどかすと、美恋の元に走ってきた。



 香云「美恋」

 美恋「か、い」
 香云「ああ。俺だ。よく助けを呼んでくれたな。ありがとう。大丈夫。もう大丈夫だから」


 香云は美恋を安心させるように抱き寄せる。



 美恋「か、かい……香云っ」



 美恋は香云の体温を感じると、思いだしたように涙があふれる。


 美恋「う、ふ……うああああ!!」


 恐怖で凍っていた心がほどけ、涙がとまらない。

 その間、香云は黙って美恋の背を撫で続ける。

 遠くでパトカーの音が聞こえた気がしたけれど、美恋はただ香云にしがみ付いて泣くしかできなかった。


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