無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~


 手を引かれてお誕生日席に座らされ、パーティー帽とクラッカーを渡される。

 目の前には豪華(ごうか)な料理と大きなケーキが置かれていた。


 日芽花がマイクをつけ、ナレーターのように司会(しかい)をしだす。


 日芽花「えー、皆様。お集まりいただきましてありがとうございます」

 日芽花「本日は香云の誕生日パーティー兼、美恋の回復祝いとなります! さあ! 盛り上がっていきましょー!」



 皆「「「おーー!!」」」



 美恋(日芽ちゃんのこういう明るいところに何度も救われてきたのよね)


 美恋はその光景を見てほほえむ。


 日芽花「ということで、まずは主賓(しゅひん)の香云くんから一言!」


 マイクを向けられしかめっ面になる香云。


 香云「なんの茶番? これ」

 日芽花「もう! ノリ悪いこと言わないでよ!」
 暁彦「そうだぞ~! もっと楽しんでいこうぜ!」


 暁彦や神社関係者にいじられて渋々席を立つ。


 香云「あー。誕生日を祝ってもらえて感謝です。それから美恋」


 ふいに振り返えられ、ドキリとする美恋。

 ふっと優しい笑みを浮かべる香云。


 香云「無事で、本当によかった。……これからも傍で守らせ続けてほしい」
 美恋「香云……」


 見つめ合う二人。

 甘い空気が流れ始めたとき、会場の人たちが一斉にパイを用意し、香云に投げつけた。



 香云「うげっ」


 クリームまみれになる香云。


 兄「なーに甘い空気出してんだ。家族の目の前でよ~」
 日芽花「そうそう。あたし達もいるんだから、()け者はやめてよね! あたしだって美恋を守るもん!」
 暁彦「そしてオレはそんなひめを守る。皆まとめて守ってやるぞ~」

 神職1「それなら俺だって!」
 神職2「僕も僕も!」


 香云「お前ら空気読めよっ!」


 美恋はコントのようなその光景に思わず吹き出してしまう。


 それにつられ、皆笑う。

 楽しそうな声は日が傾き始めてもずっと続いたのだった。

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