無気力な幼なじみは、私にだけアツくなる~縁結び神社のみこちゃんが恋を知るまで~
〇神社の拝殿・夜
付いたクリームを全て流し終わった香云が拝殿に祈りを捧げている。
パーティーは終わり、日芽花達や神社関係者も帰った後。
美恋は祈る香云の後姿を眺め、祈り終わると話しかける。
美恋「何を祈ったの?」
振り返る香云。
香云「さて、なんでしょうね」
美恋は香云に近寄り、そっとその手をとる。
包帯などはしていないが、若干切れた痕のある手だった。
美恋を不審者から守った時、力いっぱい殴ったせいで拳が切れていたのだ。
美恋「……痛い?」
香云「今はもうふさがってるし、いたくねぇよ。……だからそんな顔すんなって」
香云は美恋の頭に手をのっける。
それだけでほっとしてしまう美恋。
美恋「……ねえ香云。渡したいものがあるの」
そう言って小さな袋を取り出す。
香云「それは?」
美恋「誕生日プレゼント」
香云「え? でも昼間ももらったぞ?」
美恋は昼間のパーティーではボールペンだけを渡していた。
美恋(それだけでも十分に喜んでくれたけど……)
美恋「これはね、喜んでもらえるかは分からなかったから」
香云「開けてもいいか?」
美恋「うん」
香云は袋を開き、中身を取り出す。
出てきたのはブレスレット。
香云「これって……」
香云、驚いたように美恋を見る。
美恋「うん。小さいころ、香云にブレスレットをあげたことあったでしょう? あのときは全然うまく作れなかったし、香云の家族仲を願って作ったものだったけど」
美恋「それには私の願いを込めて作ったの」
香云「美恋の、願い?」
頷く美恋。
美恋「私ね、香云とずっと一緒にいたい。だから今回は香云と私の縁が強く繋がりますようにって願いを込めて作ったの」
美恋はもう一つのブレスレットを取り出す。
美恋「だから二つ作ってて……よかったら、一緒につけていてほしいなって」
そこまで聞いた香云、徐にいつもつけているネックレスを取り外して中に入っていたモノを見せる。
美恋「これって……」
入っていたのは擦り切れてしまった赤と白の三つ編みのブレスレット。
香云「そう。昔お前に貰ったやつ。随分前に切れちまったけど、美恋がオレの為に作ってくれたものだから、大事に取っておいたんだ」
はにかむ香云。
香云「また作ってくれるなんて、嬉しいよ。美恋がつけてくれないか?」
美恋「いいの?」
香云「いいも何も、俺がそうしたいんだ」
美恋は頷き香云の手首にブレスレットをつける。
香云「うん。いいな。ずっと大切にするよ」
香云「そうだ美恋。ソレ貸して、腕だして」
美恋「?」
言われるままに自分の分のブレスレットを渡すと、美恋の手首につけてくれる。
香云「これでもう離れることはないな。……お前が俺と離れたくないと思ってくれて、嬉しい」
お揃いのブレスレットを夜空にかざしてみる。
お揃いの物をつけてくれているのが嬉しくて仕方がない。
香云「……なんだかお互いの所有印みたいだな」
美恋「っ!」
突然の発言に驚いて香云を見る美恋。
香云はふと真剣な表情をした。
香云「なあ美恋」
美恋「ん?」
香云「お前は自分に自信が持てなくても人を貶すことなんてしないし、むしろ人の役に立とうとするような優しさを持っている。俺はそんなお前に惚れているんだ」
美恋「!」
香云「だからお前のその優しさごと、守り通したい。これから先も、ずっと」
香云は美恋の頬を撫でる。
香云「お前が求めるなら、俺はお前のものだ。だから……」
香云「お前のすべてを、俺にくれ」
香云の言葉は美恋の心にすっと落ちていく。
嬉しさが心を満たした。
美恋「うん! もちろん!」
美恋は思いのままに香云に抱き着き、キスを送った。
美恋「ずっと傍にいてね」
至近距離で見つめ合い、笑い合うと、再びキスをする。
お互いを見つめる瞳は、甘く喜びに満ちていた。