不遣の雨

温もり

次の週、GWを目前に控えた
マーケティング部も忙しさを増し、
オンラインショップのセールや、
東海地方限定のアイテム、企画などに
向けて毎日会議などが開かれていた


私だけはいつもと変わらず、
入力やファイルの整理、事務処理などを
こなしていたけれど、主任をはじめ
他の社員の皆さんはとても大変そう
だった。


『これだとコンセプトが弱いな。
　他社にも似た感じの売り出し方が
　多いから比較されないような
　案を出して欲しい。』


会議の際は人数分の飲み物を社内の
自販機にIDカードを翳せば無料で
買えるためいつも頼まれると運ぶように
していたので、聞くつもりはないけど
主任の厳しい言葉にみんな黙って
しまっていた。


GW、大型連休、季節前などは
企画だけでなく、SNSやユーザーに向けた配信なども見直す必要があるようで、
東海地区は売り上げは悪くないものの、
数字に大幅な波がない為、主任が
来たとも噂されていたようだ。


「お疲れ様です。失礼します。」


ピリピリしてるから早く退散しよう‥。


『新名さんはどう思う？』


えっ？


1人ずつ邪魔にならない場所に
アイスコーヒーやラテを置くと、
主任の前に飲み物を置いた瞬間
バッチリと目が合ってしまい、
ビックリする



「あ、あの‥‥私には」


『そ、そうですよ！主任！
　新名さんになぜ聞くんです？』


久しぶりに成瀬さんに睨まれて
しまい、板挟み状態に耐えられず
主任からとりあえず離れた。


成瀬さんの言う通りだ‥‥。
私に企画のことは分からないし、
聞く相手を間違えてる。


『では質問を変える。
　新名さんは服を買う時何から選ぶ？
　価格？デザイン？ブランド？』


私が服を買う時？


「‥‥‥色だと思います。」


私の意見にみんながざわつくのに、
主任だけは、離れて立つ私を
真っ直ぐに見ていたので気まずくて
俯いてしまった


『どうして色から選ぶんだ？』


「えっ？‥‥私のパーソナルカラーが
　ブルベのサマーなので‥‥」


前は、オータム系のベージュやカーキ、
アースカラーが好きだったけど、
色の種類に興味を持ち、パーソナル
カラーの勉強をしてから資格を取った。


その時に自分がオータムではなく
サマーだと分かり、着る服の色を
変えてからは服が買いやすくなったのを
思い出す。