不遣の雨
2人にお礼を告げると、デスクに戻り
溜まっていた事務処理を行った


はぁ‥‥‥緊張した


いつも皆さんは、あんなに大変な
会議や企画をされてるのかと間近で
実感したことで、やっぱり手伝えることは頑張りたいって思う


微力過ぎて恥ずかしいけど、今回は偶々
パーソナルカラーという学んだ分野
だったからあの中に入れただけだ。


企画案が通るといいな‥‥



『お疲れ様です。』
『お先です。』


今日は金曜日


帰りたい曜日でも残業をこなし、
19時近くになると殆どの社員さんの
姿が見えなくなっていた。


週半ばに錬ったパーソナルカラー診断
の案も無事に企画が通り、GWからの
セールにも間に合ったみたいで、
中川さん達の喜ぶ姿が見れて一安心
できた。


私もこれを片付けたら帰ろう‥‥


主任は役員会議が長引いてるのかな‥


持ちきれないファイルを保管庫に
戻さないと帰れない為、折り畳みの
台車に乗せると、同じ階の1番
奥にある保管庫に向かった。


ガチャ


窓一つない場所だからか、
鉄製のドアの向こうは冷蔵庫のように
肌寒く、朝晩は特にそう感じてしまう


背が低いため、踏み台に登って
重いファイルを片付けていると、
1番奥に見かけたファイルを手に取った


懐かしい‥‥‥


ここに入社した時に、ここの整理を
しながらこのファイルを見るのが
好きだったな‥‥


人の目は全ての色を識別出来ないと
言われているけど、私はこれを知って、今の資格を取りたいとも思えたきっかけ
のファイルでもあった。


それまで空の色は青!
りんごは赤って思って生きてきたけど、
知れば知るほど楽しかったっけ‥‥


ファイルを眺めていたい気持ちも
ありつつもそれを片付けると、
開けっぱなしにしていたはずの扉が
いつの間にか閉まっていて、慌てて
中からドアノブを回した。


ガチャ ガチャガチャ


えっ?嘘でしょ?


倉庫内の電気は薄暗く、スマホも
デスクに置いたままで来てしまったから
内鍵があったかどうかも思い出せず、
座って目を凝らす


ダメだ‥‥外からしか開けられない。


ドンドンと鉄性の扉を叩くものの、
フロアの1番奥の為、気付いてもらえるかも分からない。


時間が時間なだけに、殆どの人が
帰ってしまっていたし、私が残って
いることに気付く人なんていない気が
してしまう。


「どうしよう‥‥」


曜日も金曜日、
明日から1週間GW休暇と最悪な
タイミングで出れない状況に
扉を諦めずに叩くしかなかった。
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