不遣の雨
マーケティングの広々としたフロアの
中央奥に主任のデスクが用意され、
女性達に囲まれた主任を他所に
私は早速仕事に取り掛かった。


部内の社員数は20名ほど。


近年、オンラインショッピングが
増加傾向にある為、WEBやSNSの
活用が重要視されるようになり、
外に出歩かなくても、他者の情報が
ネットでいち早く分析でき、時間短縮
になっている。


市場調査や競合調査、トレンド分析、
販売戦略などのマーケティングを
行うこの場所は、女性社員が
圧倒的に多く、男性は主任を除いて
3名しかいない。


総務や経理、営業、人事などには男性も
多くいるけれど、それでも全体の
女性の割合は7割は超えていると思う


そんな場所に、あんなカッコいい人が
来てしまったら騒がれるのも仕方ない


背も高く、何よりもスタイルの良さと
サッパリとしつつも整った容姿に
スーツなんか着てしまったら、ある意味
目の毒だ。


しかし、華やかさが増すなら
良い傾向なのかもしれないな‥‥‥


東海地方の数字もそこまで悪くない
気はしてしまうけれど、セール以外は
確かに伸び悩んでいるのも事実だから、
そういった意味で本社から
わざわざ呼ばれたのだろうか?


どちらにしろ私には関係‥‥


ん?


日差しが差し込む窓際に影が出来、
不思議に思い書類から顔を上げると、
私のデスクを覗き込むように立っていた
主任に驚き固まってしまった



「‥‥あ、あの‥‥何か御用ですか?」


改めて近くで見ると、本当にカッコいい
と思えてしまう人で、みんなが騒ぐのにも改めて納得してしまう



『主任、新名さんは派遣社員ですよ。
 それよりも社内を案内しますから
 行きま』

『新名さん。‥酒向です。』


追いかけて来た女子社員の1人の
成瀬さんの言葉を遮るように、
私に挨拶をして来たので、迷ったけど
立ち上がって勢いよく頭を下げた


「に、新名です!
 派遣でお世話になってます!」



思ったよりも挨拶に勢いがついてしまい
回りから笑いが起こってしまった為、
恥ずかしくて顔があげられない‥‥




『何がそんなに面白くて笑ってるのか
 分からないが、そんな暇があるなら
 仕事に戻ったらどうだ?』


えっ?


恐るおそる顔を上げると、
真顔で背後の女子社員にそう告げる
主任に空気が一気に変わった
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