ねぇ、佐々木くん




明日がその29歳の誕生日。



けれど半年前に再発して入院してから、感染症にかかり、高熱で魘され、薬でなんとか意識はあるけれど。


もう、わかる。



もう、私はダメだって。



朦朧とする意識の中、身体の痛みに耐え、心配して毎日お見舞いにきてくれる両親には悪いけど、ようやく解放される安堵からなのか、私は至って落ち着いていた。



この投薬療法で改善が見れれば、血管細胞の移植で完治も目指せたけれど。


改善が見えないこの状態で、私が何をすべきかはもう分かってる。



携帯のデータ整理は終わった。


見られたくないLINEの内容だってすべて消したし、写真もすべて確認済み。


SNSはすべて削除したし、メモ機能で友達や家族全員にそれぞれ遺書も残した。


家には帰れないから自分の部屋の整理は出来ないけど、別に見られて困るものは置いてないから大丈夫。




晴れた空を窓越しで見ながら、周りを見渡す。



静かな空間。



大部屋だったけれど、両親が気を利かせて個室にしてくれた。


少しコンパクトな個室だけれど、私がいるベッド、テレビや冷蔵庫、来客用の机と椅子もある。


1人では立てないからテレビしか今のところ活用できていないけれど。




最後の場所としては、まぁまぁかな。





はぁ、と溜息。



ああ、なんか、意識が薄れていく……。





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