ねぇ、佐々木くん




諦めないでといえば……1個だけ、後悔がある。



薄れる意識の中、目を閉じたままぼんやりと思う。


高校時代。


ずっと、忘れられない。


今でも思い出せる。


高い身長。

広い肩幅。

たまにする眼鏡。

猫っ毛の、少し色素の薄い髪の毛。


一重の目が少し垂れ下がっていて、それが笑うと余計に垂れて。



彼に、伝えればよかった。



好きだって。



一目惚れしたんだって。



言えばよかった……。




フラれるのが怖くて言えなくて、でも時間は戻せなくて。


フラれた方が諦めもついただろうに。


こうして今でも燻ってるのは、自分の気持ちに向き合ってこなかったからなんだろうな。



告白するだけ、しておけばよかった。



そうしたら、こんなときでも後悔しなかったのかもしれない。



もう、会うこともない彼。







もう一度、彼に……────







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