縁を結ぶ
輝義「溜息は幸せが逃げるぞ」
そこには、白衣姿の兄がいる。
医療班とは思えないほど筋肉のがっしりとついた兄はそっと日鞠に近づき優しく額に手を当てる。
日鞠「てるにぃ…ノックくらいしてよぉ」
年頃の女の子だよ?と目で訴えるも
輝義「昨日から高熱でてたし、寝てると思ったんだよ。悪いな」
と少し気まずそうに言う。
輝義「てか、日鞠点滴抜けてるじゃん!血も出てるし…もう、早く言わないとつらい思いをするのは自分なんだよ?」
そういいつつ、針を変えそっとさしなおしてくれる。
日鞠「…別に…いいよ。」
少し諦めたような、何も期待していないようなそんな声音でつぶやくと
輝義「えいっ。そんな日鞠にはお仕置きだ」
そういいデコピンをする。
日鞠「てるにぃ…普通に痛い…」
こんな、筋肉隆々な兄のデコピンなど本気を出されたらひとたまりもないだろうから
手加減はしてくれているのはわかる…けど痛かった。
輝義「無理ばっかりしてお兄ちゃんの肝を冷やすから、お仕置きだ。
点滴自分で抜いちゃうから腕腫れて利き手に刺さなきゃいけなくなるの。わかった?」
日鞠「うん…でも、今回はわざとじゃない。
ちょっと点滴刺しててこと忘れてただけ…」
輝義「ふーん?まぁ、いいけど体調まだ悪いだろうから点滴はしばらく抜かないこと。
あと、今日は授業受けるの禁止ね」
そんなことをてきぱきと、話しながら兄は聴診・バイタルチェックをしてくれる。
輝義「朝ごはんどうする?ここで食べる?リビングに行く?」
食べないという選択肢は一切与えてくれない。
容赦ない兄の質問に渋々リビングに行くと伝える。
すると、兄は私の体を起こし両親の形見であるペンダントを首にかけてくれる。
輝義「立って歩けそう?」
そう、この兄は過保護なのである。
あの日以来、私をかよわい妹として扱うのだ。
間違ってはいない。けれど、悔しくそして悲しいと思ったのはいつだったか。
だからこそ、負けたくない気持ちが芽生えて意地を張って大丈夫と答える。
兄は心配そうにこちらを見つめるが点滴台を杖代わりに立って
ゆっくりと歩く。