【漫画シナリオ】きみの魔法に恋は絡まる

第1話


登場人物
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ヒロイン: 藤村(ふじむら) 羽花(うか)(16)
ヒーロー: 宮瀬(みやせ) 希一(きいち)(16)
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▽冒頭部分
主人公・羽花のモノローグから。

羽花(モノローグ):
  ──『持って生まれてきたもの』って、きっと、誰にでもあるよね。
  ──外見も、内面も、才能も、感覚も……みんな違って十人十色。
  ──それを、人は、『個性』と呼ぶこともあるけれど……。

→色んな人のシルエットや小物で〝個性〟を表現する描写。
 最初は明るい雰囲気だが、「それを~」のあたりからやや薄暗く。

羽花(モノローグ):
  ──その個性が、本人にとって『いいもの』だけだとは、限らない。

→うねっている天然パーマの髪の毛が見切れている描写。
 『いいもの』ではないことを表現し、少し暗い感じ。


〈場面転換/過去回想〉

○場所:小学校の教室/昼
 羽花:小4

少年たち:
 「やーい! クルクルのトイプー頭!」
 「変な髪の毛!」
 「ボンバーヘッド!」
 「あはは!」

バカにしてくる同級生の少年たちの描写。
羽花は生まれつき天然パーマで、くるくるした髪の毛が原因でからかわれている。
 →羽花は涙目になるが、何も言わない。
 (羽花の外見/色素の薄い天パ髪。モコモコした頭。トイプードルみたいな感じ。タレ目がちな丸っこい目)

やがて、羽花は走って逃げる。

少年たち:
 「あっ、トイプードルが逃げたぞ!」
 「つかまえろ!」
 「わはは!」

羽花(やだ、来ないで)

ぎゅっと目を閉じて走る描写。

羽花(モノローグ):
 『低学年の頃までは、自分の髪の毛が変だなんて思っていなかった』
 『けれど、徐々にからかわれることが増えて、いつしか周りの目を気にするようになっていた』
 『自分の髪の毛が他の人と違うと気づいた時、それまで感じたことのなかった強烈な恥ずかしさと、嫌悪感が押し寄せてきたことを覚えている』


○場所:女子トイレ

羽花「ぐすっ、ぐすっ……」

トイレの個室でこっそり涙。
すると、クラスの女子たちが入ってくる。
 →羽花はびくっとする。

クラスの女子たち:
 「ねー、さっき見た? 羽花ちゃん、またからかわれてた」
 「ダイくん(※)たちからいつもいじめられてるよね」

※ダイくん=羽花を一番からかう男子。
 本名:真鍋(まなべ)大輝(だいき)

 「でも、あの髪じゃん? しょうがないよ」
 「あれはやばい。あたしがあの髪だったら、恥ずかしくて学校来れないもん」
 「羽花ちゃんって可愛いのに、絶対髪の毛で損してるよねー」

ケラケラ笑う女子たち。
女子たちの陰口を聞いてしまった羽花は、声を押し殺して、また涙。
 →自分の髪の毛にそっと触れる。

羽花(なんで、わたしの髪ばっかり、こんな風に言われるんだろう)
  (そんなに、わたしの髪の毛、変なの……?)
  (こんな髪イヤだ)
  (嫌い……)

 →俯いて塞ぎ込む。

羽花(モノローグ):
 『わたしは、生まれ持ったこの髪の毛のせいで、』
 『自分のことが嫌いになった』

友達がいなくなったあと、トイレからこっそりと出て、俯いたまま教室に入る羽花。
 →教室の中には希一(ヒーロー)の姿も描写。
 (希一の見た目/黒髪、ツリ目がちでクールそうな顔)

フードを深くかぶって泣きそうな顔をしながら机に座る羽花を、希一が少し離れたところから見ている。

 →場面転換へ。


○場面転換/場所:自宅、テレビの前

テレビのCM:
 「雨でも風でもうねりゼロ! さあ、あなたも輝くツヤ髪へ!」

→新発売のシャンプーのCM。
 ストレートヘアの女優が出ている。

羽花:
 「……嘘つき。いくらシャンプー変えても、こんな風にならないよ……」

自分の髪の毛にコンプレックスを持ち、俯く。
父も母もそれなりにウェーブした髪だが、羽花が一番髪の毛のパーマが強い。

番組を変えると、美容室の特集がやっている。
→都会の美容師が、頑固な天然パーマの女優をサラサラのストレートに仕上げていた。

女優『すごーい! まるで魔法ですね! 生まれ変わった気分です!』
美容師『ええ、そうです。美容師はみんな、女の子を変身させる魔法使いなんですよ』

羽花「魔法……」

羽花は眩しそうに目を細め、テレビの中を見つめる。
 →ビフォーとアフターで大変身している女優。
 →羨望の眼差しで見る。

羽花「本当だ、魔法みたい……」

呟き、羽花は立ち上がり、テレビの画面の向こうを見る。

羽花「美容師さんって、魔法使いなんだ……」
  「いいな……」
  「わたしにも、魔法をかけてほしい……」

→涙が落ちる描写。


○場面転換/数ヶ月後。(季節:春)

羽花(モノローグ):
 『わたしがあの街から引っ越すことになったのは、それから数ヶ月後のことだった』

父の転勤で都会に引っ越すことになった羽花。

引越し作業の描写と、クラスで転校の挨拶をする描写。
 友達に囲まれてはにかむ羽花。
 面白くなさそうにしているいじめっ子グループ。
 離れたところから、切なげな表情で見ている希一。
……などの描写。
 ※希一は何か言いたげにしているが、何も言えず、そっと背を向ける感じで。


○引っ越し後/場所:都会の駅〜街中。
 →大通りにオシャレなお店がたくさんある。

羽花は都会の街並みを眺め、キラキラと目を輝かせる。
しかし、道行く女の子たちがみんな髪の毛も綺麗でオシャレに見えて、羽花は自分の髪を気にしてフードをかぶって俯いてしまう。

羽花(こんな髪の毛、恥ずかしい……バカにされちゃうよ……)

そんな時、オシャレな美容室の前で足を止める。

羽花(あ……)

 →少し前に見たテレビの中で、女優の髪に魔法をかけていた美容師のことを思い出す。

羽花(今なら、わたしも、かけてもらえるのかな)
  (魔法……)

魔法の力で変わりたい──そう考え、勇気をだして、母におねだりする。

羽花「お母さん、わたし、髪の毛まっすぐにしたい……!」
母「え? どうしたの? 突然……」
羽花「お願い!! わたし、変わりたいの!!」

必死に頭を下げ、「お願い!!」と懇願する羽花。
→やがて母は折れ、「……分かったわ」と微笑みながら頷いてくれた。


○場所:美容室
→ついに髪の毛がストレートに。

美容師「どう? 変わったでしょ!」
羽花「……これが、わたし……?」
美容師「うん! とっても可愛いよ!」

まるで別人みたいになり、表情がぱあっと明るくなる。

羽花「美容師さんって、すごい……本当に、魔法使いだ……」

羽が生えたように心が軽くなる。
 →新しい髪型で外に出た羽花の近くで、タンポポにとまっていたちょうちょがひらひらと飛び立つ描写。

羽花「……わたし、変われたんだ! 新しいわたしに!」

〈過去回想 終わり〉



▽時間軸/現在
○場面転換/場所:商業高校。

──6年後。

チャイムの音:キーンコーンカーンコーン……。
黒板にチョークで書く音:カッカッカッ……。

羽花・高校1年生。16歳。
 →ストレートの長い髪の後ろ姿。

羽花(モノローグ):
 『あれから何年経っただろう』
 『わたしは変わった』
 『きっと、いい方向に』

 →黒板に『決定』と書いて丸で囲む描写。

羽花「──ということで、グループワークの班員分けは、このようになりました。班長さんは、あとでプリントを取りに来てください」

振り返り、にっこりと微笑む、学級委員長の羽花。
高校生になった羽花は、ストレートヘアになり、明るく美人な学級委員長になっている。


○休み時間。場所:廊下

朋音「ねー、羽花、アンタまたシャンプーかトリートメント変えた? いつもと違う匂いする」
真綾「ほんとだーっ! 羽花ちゃん、いつも髪からいい匂いするよねっ」

友達と話しながら廊下を歩く。
 友:朋音(ともね)真綾(まあや)
 朋音→サバサバ系
 真綾→ほんわか系 の友達。
 朋音はアシンメトリーな前髪のショートボブ、真綾は二つ結び。

羽花「あ、分かる? そうなんだ〜。秋限定で、金木犀の匂いの試供品があってね」
朋音「アンタ、ほんと色んなシャンプーの試供品買うよね。コスメにはあんまり興味ないくせに、髪のケア商品ばっかり集めて」

朋音の指摘に、羽花は「ま、まあね」と答える。
→羽花は笑顔だが、どこか作ったような笑顔。

真綾「羽花ちゃんはもう少しメイクに興味持とうよ〜。マーヤが将来メイクアップアーティストになったら、羽花ちゃんのこと派手派手にお化粧してあげるから覚悟してね!」
朋音「何言ってんの、羽花はこの飾らなさがいいんだよ。手付かずの自然体って感じで」
真綾「まあ、元の素材がいいもんねえ。いいなあ、ナチュラル美女!」
羽花「……あはは」

廊下を歩きながら、にこやかに対応する羽花。
 →だが、心の中では焦っている。

羽花(どうしよう、言えない……)
  (このストレートヘアにするために、毎朝6時起きで髪をセットしてるだなんて、絶対に言えない……!)

実は毎朝一時間以上かけてアイロンで伸ばしまくっている。
 (簡単な回想)シャンプー→トリートメント→ドライヤー→アイロン→バーム→オイル……などの工程を簡単に描写。
 羽花は忙しさにてんてこまいになっているようなイメージ。(ここまでで回想おわり)

本当はぜんぜんナチュラルではない自分に、実は負い目を感じている羽花。
しかし友達の前ではいつも明るく振舞っている。

羽花(わたしが実はものすごい天然パーマだなんて、絶対友達には知られたくない……隠し通さなきゃ……!)
  (うう……本当は縮毛矯正したいんだけどな~……。維持が大変だし、学割を使っても一回の施術で二万円近くかかる……。バイトしてるとは言え、さすがに高いよ~……)
  (ある程度は自分でストレートにしないと……でも最近傷んできちゃったから美容室行きたいなあ……はあ……)

髪の枝毛や傷みが気になる羽花。
 →髪をストレートのまま維持することに必死だが、金欠。

朋音「そうだ羽花、今日の放課後、遊びいかない?」
羽花「え……あ、ごめん、今日バイトで……」
朋音「えーっ、またぁ?」
羽花(ごめんトモちゃん、ストレートヘアの維持に必要なお金なの……!!)

心の中で謝りまくる羽花の描写。
けっこう慌ただしい生活をしている。


○場面転換/夜、喫茶店前~帰宅路。

羽花「お疲れ様でした~……」
店長「気をつけて帰りなね、羽花ちゃん」
羽花「はーい……」

カランコロン……とカウベルの音が鳴り、こじんまりとした喫茶店(バイト先)から出てくる羽花。
疲れた顔をして歩く。
 →スマホでSNSを眺めると、朋音と真綾がクレープを食べている写真が上がってくる。

羽花(あーあ、わたしも遊びたかったな……でも、お金必要だし、うーん……)
  (最後に縮毛矯正したのって、梅雨の時期だったもんね。そろそろかけ直さないとやばいけど、髪が傷んでるとストレートになりにくいから、髪質改善からかなあ……うう、お金……)

色々考えつつ、家の近くまでやってくる。
すると、明かりのついている小さな美容室が目に入る。
→『宮瀬美容室』と書かれている。

羽花(そういえばここ、一年くらい前にオープンしたところだっけ。一度も入ったことないけど、縮毛矯正、安くできないかな……)

お店の料金表をじっと見る。
すると、黒髪の男子高校生が近づいてくる。

??「……ウチで髪切りたいの? お客さん」
羽花「え……」

顔を上げると、端整な顔立ちのイケメンと目が合う。
 →黒髪で背が高い(176センチ)。

羽花(わ、かっこいい人……)

ドキッとしつつ、「いや、えっと、見てただけで……!」と愛想笑い。
 →だが、よく見ると、そのイケメンに見覚えがある。
 →すると、イケメン側も「ん……?」と首をかしげ、羽花の顔をまじまじと凝視。

??「……お前……」
羽花「……?」
??「もしかして、トイプー頭の……」
羽花「……え!?」
  (なんでそのアダ名、知って……)

懐かしいあだ名で呼ばれ、『宮瀬美容室』の看板をもう一度見る。

羽花(宮瀬……って、まさか……)

羽花は青ざめ、ようやくイケメンの正体に気づく。

羽花「……あなた、もしかして……小学生の時に同じクラスだった、宮瀬希一くん……?」
希一「お、ちゃんと覚えてんだ。そうだよ、久しぶり」

飄々と答える希一。
一方、羽花はどんどん青ざめる。

羽花(う、嘘でしょ)
  (どうしよう、こんなところで昔の知り合いに会うなんて……)
  (しかも『トイプー頭』って言ったってことは、昔のわたしの髪型のこと覚えてる……!)

過去の天パの自分を知られたくない羽花は、希一が内心笑っているのではないかと疑心暗鬼に。

『お前の髪、変だな』

そんな風に言われるとばかり考えてしまい、俯きがちに、ぎゅっとカバンを抱きしめる。
→希一は微かに震えている羽花を見つめ、そっと羽花の髪に触れる。

希一「お前、髪──」
羽花「……っ」
  (変って言われる……!)

希一「……だいぶダメージあるな」

羽花「……へ?」

予想と反する言葉が降ってきて、きょとんとして顔を上げる羽花。
希一は羽花の手首を掴み、「ちょっと来い」と手を引く。

羽花「えっ、えっ……? な、何!?」
希一「アイロンの当てすぎで髪が傷んでる。普段からダメージケアしないと、今後どんなに縮毛矯正してもストレートにならなくなるぞ」
羽花「え……っ」
希一「そんなに青ざめんなよ。大丈夫。怖くない」
  「美容師は〝魔法〟が使えるんだからさ」

振り返り、口角を上げながら告げた希一。
〝魔法〟という言葉で、羽花は息をのむ。
 →懐かしいような感覚。

羽花(あれ、何だろう)
  (なんか、希一くんがそう言うと)
  (しっくりくる……)

不思議な既視感を覚え、彼の手に引かれるまま、羽花は美容室へと足を踏み入れた。

〈第1話 おわり〉
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