【漫画シナリオ】きみの魔法に恋は絡まる
第14話
▽数日後。
大輝と希一トーク画面から始まる。
〈トーク画面〉------
大輝【なー、どこ?】11:11
【おそい】11:18
【おそいおそいおそい!】11:20
【まだ風邪ひいてんのか!?】11:20
希一【ばか、お前が早いだけだから】11:21
【集合時間11時半だから】11:22
大輝【30分前行動しろよカス】11:22
希一【黙れクソカス】11:23
【あ、今お前見えた】11:24
【殴るからそこで待ってろ】11:24
〈トーク画面〉------
○文化祭当日/場所:西商業高校(side 希一)
──ボコッ!
→希一が大輝の肩を殴る音。
大輝「いーっって! マジで殴るじゃん! あーあ、今ので肩折れた。慰謝料払えや」
希一「はー、やっぱ一緒に来るんじゃなかった」
大輝「お前から誘ってきたくせに」
希一「お前がずっと絡んでくるからだろ」
〈簡単な回想〉
大輝が学校でそわそわしながら「なんか土曜日、西商業の文化祭らしいんだけど〜(チラッ)」みたいな絡み方してくる。
→希一はイラッとしながら「……一緒行く?」と一応聞く。
→大輝「し、仕方ねえな〜! 行ってやってもいいぜ?」みたいな感じで一緒に行くことに。
→希一はやっぱりイラッとしてる。
〈回想おわり〉
モブ女子たち「いらっしゃいませーっ! 西商祭にようこそーっ!」
門に入ると、すでに女子ばっかり。
商業高校なので出店が多く、マーケティングがわりと本格的。
キョロキョロしながら歩く二人を描写。
大輝「おー、やっぱ生徒は女子ばっかだ。可愛い子さがそーっと」
希一「おい、あんまキョロキョロすんなよ」
大輝「はいはい、スカした態度ごちそうさまですめんどくせーっ。お前もキョロキョロしてんじゃん」
希一「いや、俺は……正直ここ苦手だから……」
大輝「はあ? なんで?」
希一「だって、前に来た時──」
女子「──すみませーんっ! お兄さんたち、ちょっといいですかあ?」
ハッピを着て何らかのボードを持った女子数人に囲まれる二人。
希一と大輝がビクッとする。
女子「市場調査アンケートにご協力いただきたくてぇ、お時間少しもらえたりしますぅ?」
「スタンプラリーもやってま〜す!」
「福引の会場まで一緒にご案内しましょうか〜?」
大輝「え? あ、いや、俺らまだ来たばっかで」
女子「ていうかお兄さんたち、かっこいいですねっ!」
「カノジョいますかぁ?」
「てか連絡先とかぁ」
「ウチらフリーでぇ」
ギラついた肉食系女子に囲まれ、頬を引きつらせる二人。
→「結構です!」と叫んで逃げ出す。
→「あーんっ、待って〜!」と追いかけてくる女子たち。
なんとか振り切り、物陰でこそこそ。
→肉食アンケート女子たちが虎視眈々と獲物を狙ってウロウロしている。
大輝「こっえ~……男に飢えた肉食獣がうろついてやがる……サファリパークかよ……」
希一「前もああやって捕まって、正直喰われるかと思ったんだよな……」
大輝「うわあ……商業高校に通ってる男たち羨ましいと思ってたけど、取り消すかも」
肉食系女子たちの尻に敷かれてこき使われている商業男子たちを眺めて青ざめる大輝。
→「おもーい、持って!」「早く運んで!」みたいな感じで振り回されている様子。
その時、またも肉食系女子たちがイケメンをロックオン。
女子「むむっ、門からイケメンの気配!」
「行くわよ市場調査アンケート部隊!」
「おうっ!」
大輝「うわっ、また飢えた肉食獣の被害者が──」
門に目を向けると、囲まれていたのは雄太。
→へらへらして肉食系女子に対応。
雄太「えー、なになにアンケ? 俺早めに着いちゃってさー、友達待ってる間ヒマだし全然答えるよ」
女子「きゃーっ、嬉しい! ちなみにカノジョいます?」
雄太「それがこの前フラれちゃって、絶賛しょんぼり期間中なんだよねえ」
女子「え〜っ、かわいそう! 慰めた〜い」
雄太「マジ〜!? 受験ストレス半端ないから頭なでなでして!」
女子「なでなで〜♡」
雄太「癒し〜!」
視線の先には、肉食系女子にも引けを取らないコミュ強の兄の姿が。
げんなりした表情で見つめる希一と大輝。
大輝「……お前の兄貴すげえな……ケモノたちを手懐けてる……」
希一「帰りてー……」
大輝「いやいや何言ってんだ。気持ちは分かるけど、ファッションショー見るために来たんだろ? まだ帰んなバカ」
希一「ここの女子マジで苦手なんだよ」
大輝「ここに通ってる誰かさん目当てで来てるくせによく言えるな、お前」
大輝が鼻で笑うと、ジロっと希一に睨まれる。
→しかし、大輝は平然としている。
大輝「つーか、まだ付き合ってねーの? 告白ぐらいしたんだろ?」
希一「…………」
大輝「え、まだなん? お前何してんの? バカ?」
希一「……うっせーな」
大輝「はー、やだやだ、何かっこつけてんだか。さっさと告れば? どう見ても向こうはお前のこと好きじゃん、いけるだろ」
希一「いけるとかじゃなくて……色々あんだよ、俺のタイミングが」
大輝「あーあーやだね、こうやって付き合う前の両片思い期間をグダグダ続けてる男ってのはよ! 腹括ってハッキリしろやめんどくせー」
来栖「そうさ、早く伝えた方がいい。思い立ったが吉日だぞ」
大輝「ほら、コイツもこう言ってるし──」
唐突に隣に来栖先輩が登場。
→驚いた大輝が飛び上がって希一にしがみつく。
大輝「ひっ、なっ、何っ!?」
希一「げっ……!」
来栖「やあ、諸君! ごきげんよう! 今の気分はいかがかな!」
希一「アンタが神出鬼没すぎてドン引きしてる以外の感情ないっす……」
大輝にしがみつかれたまま冷ややかに言う希一。
来栖先輩は「ハッハ〜!」と笑いながらビシッと無意味な決めポーズ。
→今日はちゃんとスカートの制服姿。
希一(あ、この人ほんとに女だったんだ……)
来栖「ふふっ、どうした? そんな情熱的に見つめて。何か言いたげじゃないか」
希一「いえ、別に……」
来栖「照れるな照れるな〜」
希一(イラッ)
真綾「あーーっ! 来栖先輩、やっと見つけた!」
その場にやってきたのは真綾と朋音。
→来栖先輩は「おや?」と振り向く。
来栖「そんなに慌ててどうしたんだい? 二人とも」
朋音「どうしたんだい? じゃないですよ! 12時から体育館でメインイベントでしょ!? 生徒会長なんですから、あなたも色々用意しないと! オープニングアクトもあるんですから!」
来栖「ハッハ〜、そうだったね! これは失礼した!」
真綾「あっ、希一くんと大輝くんも来てくれてたんだ〜! こんにちはっ!」
希一「……ども」
大輝「おー……」
来栖「ん? ところで、君はここにいていいのかい? 藤村さんのヘアメイクの担当は君だろう? 今頃準備している予定のはずだが」
来栖が指摘したのは真綾。
→真綾は「そうなんです、聞いてくださいよ〜!」と頬を膨らませる。
真綾「羽花ちゃんったら、急に『今日は飾らない自分を見せたいからメイクしない』って言い出して、更衣室からマーヤを追い出したんですよぉ!」
来栖「ほう?」
希一「!」
真綾「んも〜っ、せっかくパリコレモデルみたいなすんごいメイクにしようとしてたのに〜! バサバサのつけまつげいっぱい持ってきたのにぃ!」
朋音「……アンタの化粧は気合い入るとケバくなるから、羽花の判断は正しかったかもね」
真綾「なんだとぉ!」
ぷんぷん怒っている真綾。
朋音は「ごめんごめん」と真綾を宥め、来栖先輩をつかまえる。
→その時、スピーカーからアナウンスが。
放送『ブツッ──業務連絡、業務連絡! 生徒会長! アンタ今どこにいるんすか! またブラブラほっつき歩いて! これ聞いたらさっさと体育館に来てください! 至急! 急いで! ブツッ──』
↑『キィーーン』とハウリングしながら早口で放送が流れる。
来栖「おや、これは急がないといよいよ怒られるな」
朋音「だからそう言ってんでしょ! ほら行きますよ!」
真綾「マーヤたち生徒会のメンバーじゃないのに、なんで手伝わされてんのぉ……?」
来栖「ハッハ〜、細かいことは気にするな! 昨日の友は今日の生徒会さ!」
朋音「はあぁ、黙ってればかっこいいのに……」
呆れ顔で来栖先輩を連れていく朋音と真綾。
→希一と大輝の二人だけになる。
大輝「……嵐のように過ぎてったな」
希一「そうだな……ってか、いつまで引っ付いてんだよ離れろ!」
大輝「いって! 殴んじゃねえよ、この!」
反撃してくる大輝を押さえつつ、希一はぼんやりと羽花のことを考える。
希一(〝飾らない自分を見せたい〟って?)
(それってつまり……いや、まさか……な)
○場面転換/体育館のステージ
11時50分、ついにメインイベントが始まる。
スーツに着替えた来栖先輩がステージへ。
→「きゃーーー!」という女子たちの黄色い歓声。
→『くるす♡』『ハッハーして♡』とか書かれたうちわを持ったファンがめっちゃいる。
イケメンオーラをまとった先輩がマイクを持つ。
来栖『レディース&ジェントルメン! ようこそ、記念すべき50回目の西商祭へ!』
『これより、本日のメインイベントである〈ミス・西商ファッションショー〉を開催いたします!』
『まずはオープニングアクトとして、我が校の軽音部によるバンド演奏を──』
○場所:体育館裏の控え室(羽花side)
軽音部がオープニングアクトの演奏をする中、ファッションショーのモデル役たちが裏で控えている。
モブ女子たちの会話
「やばー、もうすぐじゃん」
「緊張する〜」
「コケずに歩けるかな」
様々な声が飛び交う中、羽花は静かに座っている。
→モブ女子の一人が声をかける。
モブ「ねー、羽花、アンタ本当にその頭で出るの?」
羽花「うん」
モブ「えー、もったいなくない? せっかく綺麗な髪なのに、布で全部隠しちゃって」
羽花の髪は、白い布でぐるぐるに覆われている。
→羽花はニッコリ微笑む。
羽花「ううん、これでいいの。大丈夫」
生徒会「みなさーん、そろそろ出番ですー! 12時ちょうどにチャイムが鳴るので、エントリーナンバー1番から順番に、ジャケットを脱いで準備してくださーい!」
モブ「あ、はーい」
出番の声がかかり、羽花は深呼吸。
そっと目を閉じる。
羽花(モノローグ):
──大丈夫。
──硬い殻の中にこもるのは、もうやめる。
──優しい魔法に絡められていたわたしは、12時ちょうどの鐘の音で、普通の女の子に戻る。
バンドの演奏が終わる。
客席からは歓声。
→1階の席には朋音と真綾、2階には友達と一緒に来ている雄太、そして大輝と希一がいる。
羽花(魔法が解けても、きっと大丈夫)
(だって次に目を開けた時、わたしは)
12時ちょうどのチャイムの音:
『キーンコーンカーンコーン……』
羽花が目を開ける。
羽花(この頑固な繭を破って、背中に羽を生やしている)
羽花は立ち上がり、来ていたジャケットを脱ぐ。(ドレスの全貌はまだ見せない)
→脳裏にいる〝トイプー頭〟の幼い自分が、テレビのような四角い画面の向こうから、今の自分の背中を見ているようなイメージを描写。
羽花(モノローグ):
──見ててね、あの頃のわたし。
──今、わたしが証明する。
──魔法がなくても、きみは綺麗だって。
前を向いた羽花が、ステージへ一歩踏み出す描写。
〈第14話 おわり〉