【漫画シナリオ】きみの魔法に恋は絡まる
第15話
○場所:体育館
ファッションショーが開幕。
ステージのバンド機材を片付けている間に、体育館中央に特設されたステージへモデルたちが歩く。
来栖『それでは参りましょう!』
『エントリーナンバー・1番! コンセプトは〝人魚姫〟! モデルを務めるのは3年4組の──』
来栖の進行で、各モデルがランウェイに見立てた道を歩き、ポーズを取る。
→照明や音響班は演劇部が担当。
→会場は大盛り上がり。
朋音「さすが来栖先輩、演出も本格的〜。なんちゃらガールズコレクションみたい」
真綾「羽花ちゃんって何番だっけ?」
朋音「6番」
真綾「最後じゃん! うわ〜、マーヤまで緊張してきた。ていうか、モデルが着てるドレス結構すごいね! どうやって用意したんだろ」
朋音「ソーイング部が全力でがんばったらしいよ。来栖先輩の監視の元で」
真綾「うわーぉ、来栖先輩の圧すごそぉ……。将来はシゴデキのパワハラ上司にルート分岐確定じゃーん……」
そわそわしながら見守る二人。
2階では希一と大輝が見ている。
大輝「思ってたよりレベル高ぇな〜。しっかりライブ配信されて、プロジェクターに映されてるから2階でもよく見えるし。公式のSNSにアクセスすれば手元のスマホでも見れる」
希一「ついでにSNSのフォロワーも増える……ってわけ? こういうの、あの先輩が考えてんのか?」
大輝「だとしたら意外と頭いいよな、あの人……」
来栖『──さあ、それではいよいよ最後の出場者です!』
感心していると、ついに羽花の番がやってくる。
大輝は身を乗り出す。
大輝「お、ついに来たんじゃね、アイツの出番」
来栖『エントリーナンバー・6番! コンセプトは〝羽化〟です! エマージェンス!』
大輝「おいおい、もしかして、〝羽花〟って名前だから〝羽化〟? 安直なコンセプトだな〜」
来栖『モデルを務めるのは1年2組の学級委員長! 藤村羽花〜!』
コツ、コツ、コツ──。
→一歩ずつ、ヒールのある靴を履いた足元の描写。
→蝶をモチーフにしたドレスで登場する。
→髪の毛はすべて布にくるまれている。
真綾「うわ〜っ、羽花ちゃん! 綺麗! 蝶のドレスだ!」
朋音「……でも、あの頭どうしたんだろ? 髪の毛ぜんぜん見えないけど」
真綾「確かに。セットうまくいかなかったのかな? やっぱりマーヤがしてあげればよかった〜」
朋音「うーん……?」
羽花の頭の布を訝しむ描写。
羽花は一歩ずつランウェイを歩いてくる。
→羽花のモノローグへ。
羽花(モノローグ):
──ずっと、人と違うのが嫌だった。
──人に見られるのが嫌だった。
──でも、今、たくさんの人がわたしを見てる。
↑羽花を見つめる朋音と真綾
舞台袖の来栖先輩
友だちとスマホの画面で見ている雄太
2階から見ている大輝と希一
……など、それぞれを描写。
羽花(君も、そこで見ている?)
↑君=幼い頃の自分。
泣いてばかりいた過去の自分が、ランウェイの先で自分を見上げているような描写。
羽花はランウェイの先端まで歩き、髪を隠していた布に手をかける。
羽花(モノローグ):
──わたし、今、変わるよ。
──いつまでもサナギのままじゃいられない。
──だから、ちゃんと見ていて。
→はらり、頭に巻いていた布を取り去る。
→何の手も加えていない、天然パーマの髪があらわになる。
→観客たちがざわめく。(希一や友人たちも目を見開く)
生徒たち:
「えっ、何あの髪……!?」
「あれって羽花!?」
「髪巻いてるの初めて見た……!」
普段から知っているクラスメイトたちはざわつく。
だが、羽花はまったく動じず、嘘偽りのない顔で微笑み、ポーズを取って、ステージ上に戻っていく。
→堂々とした様子に、クラスメイトたちは一瞬見惚れる。
生徒たち:
「な、なんか……」
「たしかに、印象、全然違う……」
「けど」
「「似合う! 可愛い!」」
ワァッ、と盛り上がる会場。
朋音や真綾はぽかんとして顔を見合わせ、希一と大輝は微笑んでいる。
大輝「……さっき、『コンセプトが安直』って言ったけど、取り消すわ」
希一「……うん」
大輝「こりゃ〝羽化〟だ。間違いなく」
他のメンバーと一緒に並んで、ステージに立った羽花。
→舞台袖からは来栖先輩も微笑みを向けている。
来栖『……さあ、これで出場者が全員出揃いました! みなさん綺麗で圧巻ですね!』
『それではこれより、6名の出場者によるミスコンを開催いたします! 思う存分に自分をアピールしていただきましょう! まず、エントリーナンバー1番から──』
ステージ上でのアピールタイムが始まる。
→羽花はいろんな人に自分の本当の髪を見られているが、もう、前のように怖くはない。
羽花(ああ、ほら、軽くなった)
(重たい殻を破ったら)
(羽が生えたみたいに、心が軽い)
どこか吹っ切れた、スッキリした表情。
→やがて、アピールタイムの順番が羽花に。
来栖『それでは、次が最後のアピールです! エントリーナンバー6番・藤村羽花さん、どうぞ!』
来栖にウインクされ、羽花は微笑みで答えてマイクの前へ。
→客席には大勢の人。
→希一や友人たちも息を呑んで見守る。
→深呼吸をして、口を開く。
羽花『みなさん、こんにちは。藤村羽花です』
『わたしは、まず、みなさんに謝らないといけないことがあります』
ざわ、と一瞬ざわつく会場。
羽花は堂々としたまま、マイクに口を開く。
羽花『今日の、わたしの、この髪の毛……』
『実は、地毛です』
告白した瞬間、「ええ!?」みたいな声と共にどよめく会場。
希一は黙って見守っている。
羽花『隠していてごめんなさい。嘘をついてごめんなさい』
『本当のわたしはこれです。まっすぐな髪でも、まっすぐな人間でもない』
『うねる髪から目を逸らして、鏡の中にいる自分を見ないようにして、外側だけまっすぐに伸ばして、これが本当みたいな顔して……毎日を、嘘の自分で過ごしていたわたしが、本物のわたしです』
ざわざわする中、朋音と真綾が黙って聞いている様子を描写。
どこか切なげな目で羽花を見ている様子。
羽花『わたしね、ずっと、自分が嫌いだったんです』
『生まれ持った髪のせいで、人と同じになれないと思っていたから』
大輝が目を伏せる描写。
眉を寄せ、責任を感じているような表情。
羽花『自分の髪の毛が嫌いで、人にバカにされるのがイヤで、誰にも見られたくなくて……髪の毛をストレートにすることで、自分を変えました』
『……でも、それってちょっと違うんじゃないかって、最近やっと気がついたんです』
羽花は顔を上げる。
羽花『わたしは自分を変えたんじゃなくて、自分から逃げただけだった』
『全部髪のせいにして、都合のいい自分だけを見て、わたしを変えられたような気になっていただけだった』
『その結果、外側はまっすぐになったけど、心の中身はどんどんぐにゃぐにゃになって、枝毛になって、不揃いな部分は切り捨てて……本当の自分の中身が見れないまま、向き合おうとせず、心の内側で縮こまってしまった』
生徒たちは黙ってスピーチに耳を傾ける。
雄太も外でスマホでライブ配信を見ている。
羽花『でも、今度こそ、本当に変われる気がしたの』
『わたしに、そのきっかけをくれた人たちがいたから』
やがて、羽花は穏やかな表情に。
羽花『ちょっと強引だけど、いつもわたしを導いてくれる先輩とか』
→来栖先輩。
羽花『これ以上嘘をつきたくない、大事な友だちとか』
→朋音と真綾。
羽花『過去の自分ときちんと向き合って、謝ってくれた強い人とか』
→大輝。
羽花『本当のわたしを、ずっと、まっすぐに見ていてくれた大好きな人とか』
→希一。
それぞれの顔を描写したあと、再び羽花へ戻る。
羽花『みんなに色んな魔法をかけてもらって、わたしは、本当の自分をさらけ出す勇気が出たんだと思います』
『今まで嘘をついていて、本当にごめんなさい』
『……そして、最後に、どうしても、謝っておきたい人がいます』
羽花は目を一瞬伏せ、もう一度目を開いて、目の前にいる(ような気がする)幼い頃の自分自身と向き合う。
羽花『……過去のわたし』
幼い頃の羽花が、じっと今の羽花を見上げているイメージを描写。
羽花『今まで、本当にごめんなさい。わたし、こんなに簡単で当たり前のことに、ずっと気がつけなかった』
『わたしがわたしのことを嫌いになるのが、いちばんだめだったのに』
『わたしが、ありのままのわたし自身のことを、ちゃんと愛してあげないといけなかったのにね……』
ぽつりぽつり、羽花が過去の自分自身に語りかける描写。
羽花『君の髪は変じゃないよ』
『君は何もおかしくないよ』
『わたし、この髪で生まれてよかった』
『わたしがわたしに生まれてよかった』
『今なら、はっきり言えるよ。これは嘘じゃない』
『わたしは、わたし自身のこと──ちゃんと好きになれたから』
羽花が微笑み、本当の自分の声を伝える。
→ 過去の自分が嬉しそうにはにかんで目の前から消えていくような描写とともに、羽花が深く一礼すると、会場からは大きな拍手。
立ち上がって拍手する朋音と真綾。
画面を見つめて涙ぐむ涙脆い雄太と、周りでそれを笑う友だち。
うんうんと頷いて誇らしげな来栖先輩。
微笑む大輝と希一。
などを描写して、羽花がさっぱりした笑顔で戻っていく。
背中に羽が生えたように軽やかな足取りと、表情。
来栖『藤村羽花さん、素晴らしいスピーチをありがとうございました! それではこれより投票に移ります! 果たして、優勝は誰の手に──!』
〈第15話 終わり〉
ファッションショーが開幕。
ステージのバンド機材を片付けている間に、体育館中央に特設されたステージへモデルたちが歩く。
来栖『それでは参りましょう!』
『エントリーナンバー・1番! コンセプトは〝人魚姫〟! モデルを務めるのは3年4組の──』
来栖の進行で、各モデルがランウェイに見立てた道を歩き、ポーズを取る。
→照明や音響班は演劇部が担当。
→会場は大盛り上がり。
朋音「さすが来栖先輩、演出も本格的〜。なんちゃらガールズコレクションみたい」
真綾「羽花ちゃんって何番だっけ?」
朋音「6番」
真綾「最後じゃん! うわ〜、マーヤまで緊張してきた。ていうか、モデルが着てるドレス結構すごいね! どうやって用意したんだろ」
朋音「ソーイング部が全力でがんばったらしいよ。来栖先輩の監視の元で」
真綾「うわーぉ、来栖先輩の圧すごそぉ……。将来はシゴデキのパワハラ上司にルート分岐確定じゃーん……」
そわそわしながら見守る二人。
2階では希一と大輝が見ている。
大輝「思ってたよりレベル高ぇな〜。しっかりライブ配信されて、プロジェクターに映されてるから2階でもよく見えるし。公式のSNSにアクセスすれば手元のスマホでも見れる」
希一「ついでにSNSのフォロワーも増える……ってわけ? こういうの、あの先輩が考えてんのか?」
大輝「だとしたら意外と頭いいよな、あの人……」
来栖『──さあ、それではいよいよ最後の出場者です!』
感心していると、ついに羽花の番がやってくる。
大輝は身を乗り出す。
大輝「お、ついに来たんじゃね、アイツの出番」
来栖『エントリーナンバー・6番! コンセプトは〝羽化〟です! エマージェンス!』
大輝「おいおい、もしかして、〝羽花〟って名前だから〝羽化〟? 安直なコンセプトだな〜」
来栖『モデルを務めるのは1年2組の学級委員長! 藤村羽花〜!』
コツ、コツ、コツ──。
→一歩ずつ、ヒールのある靴を履いた足元の描写。
→蝶をモチーフにしたドレスで登場する。
→髪の毛はすべて布にくるまれている。
真綾「うわ〜っ、羽花ちゃん! 綺麗! 蝶のドレスだ!」
朋音「……でも、あの頭どうしたんだろ? 髪の毛ぜんぜん見えないけど」
真綾「確かに。セットうまくいかなかったのかな? やっぱりマーヤがしてあげればよかった〜」
朋音「うーん……?」
羽花の頭の布を訝しむ描写。
羽花は一歩ずつランウェイを歩いてくる。
→羽花のモノローグへ。
羽花(モノローグ):
──ずっと、人と違うのが嫌だった。
──人に見られるのが嫌だった。
──でも、今、たくさんの人がわたしを見てる。
↑羽花を見つめる朋音と真綾
舞台袖の来栖先輩
友だちとスマホの画面で見ている雄太
2階から見ている大輝と希一
……など、それぞれを描写。
羽花(君も、そこで見ている?)
↑君=幼い頃の自分。
泣いてばかりいた過去の自分が、ランウェイの先で自分を見上げているような描写。
羽花はランウェイの先端まで歩き、髪を隠していた布に手をかける。
羽花(モノローグ):
──わたし、今、変わるよ。
──いつまでもサナギのままじゃいられない。
──だから、ちゃんと見ていて。
→はらり、頭に巻いていた布を取り去る。
→何の手も加えていない、天然パーマの髪があらわになる。
→観客たちがざわめく。(希一や友人たちも目を見開く)
生徒たち:
「えっ、何あの髪……!?」
「あれって羽花!?」
「髪巻いてるの初めて見た……!」
普段から知っているクラスメイトたちはざわつく。
だが、羽花はまったく動じず、嘘偽りのない顔で微笑み、ポーズを取って、ステージ上に戻っていく。
→堂々とした様子に、クラスメイトたちは一瞬見惚れる。
生徒たち:
「な、なんか……」
「たしかに、印象、全然違う……」
「けど」
「「似合う! 可愛い!」」
ワァッ、と盛り上がる会場。
朋音や真綾はぽかんとして顔を見合わせ、希一と大輝は微笑んでいる。
大輝「……さっき、『コンセプトが安直』って言ったけど、取り消すわ」
希一「……うん」
大輝「こりゃ〝羽化〟だ。間違いなく」
他のメンバーと一緒に並んで、ステージに立った羽花。
→舞台袖からは来栖先輩も微笑みを向けている。
来栖『……さあ、これで出場者が全員出揃いました! みなさん綺麗で圧巻ですね!』
『それではこれより、6名の出場者によるミスコンを開催いたします! 思う存分に自分をアピールしていただきましょう! まず、エントリーナンバー1番から──』
ステージ上でのアピールタイムが始まる。
→羽花はいろんな人に自分の本当の髪を見られているが、もう、前のように怖くはない。
羽花(ああ、ほら、軽くなった)
(重たい殻を破ったら)
(羽が生えたみたいに、心が軽い)
どこか吹っ切れた、スッキリした表情。
→やがて、アピールタイムの順番が羽花に。
来栖『それでは、次が最後のアピールです! エントリーナンバー6番・藤村羽花さん、どうぞ!』
来栖にウインクされ、羽花は微笑みで答えてマイクの前へ。
→客席には大勢の人。
→希一や友人たちも息を呑んで見守る。
→深呼吸をして、口を開く。
羽花『みなさん、こんにちは。藤村羽花です』
『わたしは、まず、みなさんに謝らないといけないことがあります』
ざわ、と一瞬ざわつく会場。
羽花は堂々としたまま、マイクに口を開く。
羽花『今日の、わたしの、この髪の毛……』
『実は、地毛です』
告白した瞬間、「ええ!?」みたいな声と共にどよめく会場。
希一は黙って見守っている。
羽花『隠していてごめんなさい。嘘をついてごめんなさい』
『本当のわたしはこれです。まっすぐな髪でも、まっすぐな人間でもない』
『うねる髪から目を逸らして、鏡の中にいる自分を見ないようにして、外側だけまっすぐに伸ばして、これが本当みたいな顔して……毎日を、嘘の自分で過ごしていたわたしが、本物のわたしです』
ざわざわする中、朋音と真綾が黙って聞いている様子を描写。
どこか切なげな目で羽花を見ている様子。
羽花『わたしね、ずっと、自分が嫌いだったんです』
『生まれ持った髪のせいで、人と同じになれないと思っていたから』
大輝が目を伏せる描写。
眉を寄せ、責任を感じているような表情。
羽花『自分の髪の毛が嫌いで、人にバカにされるのがイヤで、誰にも見られたくなくて……髪の毛をストレートにすることで、自分を変えました』
『……でも、それってちょっと違うんじゃないかって、最近やっと気がついたんです』
羽花は顔を上げる。
羽花『わたしは自分を変えたんじゃなくて、自分から逃げただけだった』
『全部髪のせいにして、都合のいい自分だけを見て、わたしを変えられたような気になっていただけだった』
『その結果、外側はまっすぐになったけど、心の中身はどんどんぐにゃぐにゃになって、枝毛になって、不揃いな部分は切り捨てて……本当の自分の中身が見れないまま、向き合おうとせず、心の内側で縮こまってしまった』
生徒たちは黙ってスピーチに耳を傾ける。
雄太も外でスマホでライブ配信を見ている。
羽花『でも、今度こそ、本当に変われる気がしたの』
『わたしに、そのきっかけをくれた人たちがいたから』
やがて、羽花は穏やかな表情に。
羽花『ちょっと強引だけど、いつもわたしを導いてくれる先輩とか』
→来栖先輩。
羽花『これ以上嘘をつきたくない、大事な友だちとか』
→朋音と真綾。
羽花『過去の自分ときちんと向き合って、謝ってくれた強い人とか』
→大輝。
羽花『本当のわたしを、ずっと、まっすぐに見ていてくれた大好きな人とか』
→希一。
それぞれの顔を描写したあと、再び羽花へ戻る。
羽花『みんなに色んな魔法をかけてもらって、わたしは、本当の自分をさらけ出す勇気が出たんだと思います』
『今まで嘘をついていて、本当にごめんなさい』
『……そして、最後に、どうしても、謝っておきたい人がいます』
羽花は目を一瞬伏せ、もう一度目を開いて、目の前にいる(ような気がする)幼い頃の自分自身と向き合う。
羽花『……過去のわたし』
幼い頃の羽花が、じっと今の羽花を見上げているイメージを描写。
羽花『今まで、本当にごめんなさい。わたし、こんなに簡単で当たり前のことに、ずっと気がつけなかった』
『わたしがわたしのことを嫌いになるのが、いちばんだめだったのに』
『わたしが、ありのままのわたし自身のことを、ちゃんと愛してあげないといけなかったのにね……』
ぽつりぽつり、羽花が過去の自分自身に語りかける描写。
羽花『君の髪は変じゃないよ』
『君は何もおかしくないよ』
『わたし、この髪で生まれてよかった』
『わたしがわたしに生まれてよかった』
『今なら、はっきり言えるよ。これは嘘じゃない』
『わたしは、わたし自身のこと──ちゃんと好きになれたから』
羽花が微笑み、本当の自分の声を伝える。
→ 過去の自分が嬉しそうにはにかんで目の前から消えていくような描写とともに、羽花が深く一礼すると、会場からは大きな拍手。
立ち上がって拍手する朋音と真綾。
画面を見つめて涙ぐむ涙脆い雄太と、周りでそれを笑う友だち。
うんうんと頷いて誇らしげな来栖先輩。
微笑む大輝と希一。
などを描写して、羽花がさっぱりした笑顔で戻っていく。
背中に羽が生えたように軽やかな足取りと、表情。
来栖『藤村羽花さん、素晴らしいスピーチをありがとうございました! それではこれより投票に移ります! 果たして、優勝は誰の手に──!』
〈第15話 終わり〉