【漫画シナリオ】きみの魔法に恋は絡まる
最終話
○場面転換/控え室(空き教室)
朋音「──で、投票の結果、優勝は来栖先輩だって」
ステージライトを浴びまくっている来栖の写真を見せて、朋音が呆れ顔。
朋音「スーツ姿のかっこよさにメロメロになったファンが一斉に投票したんだってさ」
真綾「んもおおっ、納得いかないよねえ! 不正票じゃん! ズッコケちゃったよ!」
→小さいコマで、
来栖「優勝はこの私だー!」
会場「ええー!?」
みたいになった回想シーンをはさむ。
真綾はそれを思い出してぷんぷんしている。
朋音「まあまあ、あのオチも含めてひとつのエンタメだったってことでしょ? 今回のは」
羽花「そうそう、いいんだよ別に。賞レースとかじゃないんだし。変に優劣つけないオチでいいんじゃない?」
真綾「ええ〜〜! 納得いかない! 絶対羽花ちゃんが優勝なのに!」
羽花「ふふ、ありがとねマーちゃん」
控え室で談笑する三人。
→すでに羽花はいつもの制服に着替えている。
→髪は天パのまま。
朋音「……それにしても、羽花、アンタこんな髪だったんだね」
不意に、羽花の髪を見て切り込んだ朋音。
真綾も身を乗り出す。
真綾「ほんと、超びっくりしたよ! これって天然パーマ?」
羽花「うん。生まれた時からこれ」
真綾「それを毎日ずっとストレートにしてたの!? あんだけ綺麗なストレートにするの大変だったでしょ!?」
羽花「えへへ、毎朝5時とか6時に起きてた」
朋音・真綾「「ひえー!」」
羽花の髪を見て驚く二人。
羽花は微笑みつつ、ちょっと苦い表情で目を伏せる。
羽花「……ごめんね、二人とも」
真綾「え?」
羽花「ずっと、二人に嘘ついてたから。いつも『自然体なところがいい』って言ってくれてたのに、全然ナチュラルなわたしじゃなくて、ごめん……」
朋音「はあ? 何言ってんの」
「どんなに見た目が違っても、アンタはアンタでしょ? 何も嘘なんてついてないじゃん」
真綾「そうだよ! それに、毎朝早起きして自分を綺麗にしてたんでしょ!? そんなの尊敬しかないって! マーヤにはできないもん!」
朋音「そうそう。前から言ってるけど、羽花は頑張りすぎ。ウチらにも頼ってよ、友達なんだからさ」
当然のように告げる朋音と真綾。
羽花は感激で目を潤ませ、二人にハグ。
羽花「う、うう〜っ、よかったぁ〜〜! 嫌われたらどうしようかと……!」
真綾「嫌うわけないじゃんっ、羽花ちゃんのおばか! お返しにむぎゅーっ」
羽花「うわーん、優しくしないで、泣いちゃうよ〜!」
朋音「あははっ」
──コンコンコン。
→じゃれあっていると、扉がノックされる。
→希一と大輝が入ってくる。
大輝「し、失礼しマース……」
希一「……ども」
羽花「!」
大輝「なんか、来栖先輩が(無理やり)案内してくれたんだけど、勝手に入っていいの? 俺ら」
そわそわしつつ入ってきた二人。
羽花は希一と目が合ってしまい、顔を赤くする。
→『ラブの予感』を感じ取った朋音と真綾はハッとして、互いにアイコンタクト。
→羽花から離れ、希一の横にいた大輝を突然捕まえる。
大輝「ぐえ!?」
真綾「あ〜っ、用事思い出しちゃったな〜! ねっ、大輝くん! そうだよね!」
大輝「はっ!? えっ!?」
朋音「ほら〜、用事あったじゃん! ね! あるでしょ!」
大輝「いや俺は何も──もごっ」
二人に押さえつけられた大輝。
朋音と真綾は、「「それじゃ、ごゆっくり〜♡」」と微笑んで、強引に大輝を連れ出す。
大輝「ちょ、何なんだお前ら!? なんで俺まで……!」
朋音「いいから空気読んでついて来な」
真綾「マーヤたちが特別に、大輝くんを案内してあげるっ! ほら、こっちこっち!」
大輝「おい、痛い痛い痛い! は、離せえええ!」
ギャーギャーとやかましい喧騒が遠のき、ふたりきりになる希一と羽花。
→ちょっと呆れ顔の二人。
羽花「ご、ごめん……変な気を遣う二人で……」
希一「……まあ、大輝なら大丈夫だろ。相変わらずむかつくけど、昔よりは丸くなったし。多分」
羽花「そ、そうだね……うん……多分……」
希一「……」
沈黙。
→希一を直視できず、赤い顔で俯く羽花。
羽花(ど、どうしよ……さっきのスピーチで、わたし、『大好きな人』とか言っちゃったんだよね……)
(で、でも、希一くんの名前は出してないし……いや、さすがにバレてる……? 筒抜け……?)
(ううう、どんな顔をすれば……)
オロオロしていると、先に希一が口火を切る。
希一「……髪、みんなにバレちゃったな」
羽花「!」
希一が近付き、羽花の髪に触れる。
じっと髪を見ている希一。
羽花はしばらく黙って、視線を落とす。
羽花「……ごめんね、希一くん」
希一「ん?」
羽花「わたし、せっかくたくさん魔法かけてもらったのに……」
「かけてもらった魔法、全部、自分で解いちゃった」
羽花は苦笑いで告げる。
希一は黙っている。
羽花「はあ、これがおとぎ話じゃなくて本当によかったよ」
「だって、こんなお姫様じゃ、王子様もがっかりしたに違いないもんね」
へら、と自虐して笑う羽花。
希一は黙り込み、やがて、口を開く。
希一「……だから、王子様なんてつまんないって言ったろ?」
羽花「え?」
希一「俺、昔、お前にそう言ったことがあるんだよ」
羽花「ええ? そうだっけ? いつ?」
希一「いつだったかな……お前が引っ越す前」
「あんまり覚えてないけど、俺、確かにはっきりとお前に言ったんだ」
「お前の王子様より、魔法使いになりたいって……」
→過去の回想へ。
〈過去回想〉
○小学校の教室(年齢:10歳)
黒板に『学芸会でやること:演劇(決定!)』と書かれている描写。
あははは、と笑う子どもの声。
プリントを持って通りかかった希一が、その声に反応する。
大輝『やーい、このトイプー頭!』
モブ『クルクルの髪の毛!』
モブ2『変な髪!』
羽花『……』
希一(あーあ、またやってる)
小学生の頃の羽花が、大輝たちにいじめられているところ。
希一は離れたところで見ている。
羽花は手に希一と同じプリントを持っていて、〝希望する役を書いてください〟と書かれている。
モブ『なあ、ダイくん、見ろよ! こいつ、学芸会でやる劇の役、〝お姫様〟やりたいってプリントに書いてる!』
モブ2『はー? 嘘だろ、マジ? こんなモジャモジャの髪でお姫様なんて、似合うわけねーのにな! あはは!』
大輝『え? あ……そ、そうだな! はは!』
羽花『…………』
からかわれ、泣きそうな顔でプリントを握りしめる羽花。
→大輝はちょっと気まずそうな顔をしつつ、『もう行こうぜ』と友だちを連れて去っていく。
羽花は涙を拭いて無言で自分の席へ。
→〝おひめさま〟と書かれたプリントの文字を消しゴムで消し始める。
→希一が近付き、その手を掴む。
羽花『!』
希一『なんで消すの』
『消したらアイツらに負けたことになるぞ』
不機嫌そうな表情で希一が止める。
すると、羽花は瞳を潤ませる。
羽花『でも、ダイくんたちが、正しいよ……』
希一『!』
羽花『……だって……本当に、似合わないもん……』
『こんな、変な髪の毛のお姫様、いないもん……』
希一(あ、やばい。また、こぼれそう)
泣きそうな顔の羽花に心がざわつき、希一は眉間にシワを寄せる。
希一(あんなヤツのために泣くなよ)
(なんで泣くんだよ)
(泣かせたくない)
(笑わせなきゃ)
慌てる希一の視線の先には、消しカスの中で薄れた〝お姫様〟の文字。
希一(別にお姫様になっていいよって、言いたい)
(でも、どうやったら伝わる?)
(俺に魔法が使えたら、簡単にコイツをお姫様にできるのに)
(俺がもしも魔法使いだったら)
(魔法……何か、すごい魔法で……)
希一はぐっと奥歯を噛み締め、強くうねる羽花の髪に指を絡める。
→ビクッと身構える羽花。
→その涙がいよいよこぼれそうになる直前で、希一が咄嗟に口を開く。
希一『き、キラキラシャラーン!』
羽花『……!?』
希一『……はい! 俺は今、魔法をかけてお前を変身させました!』
羽花『え……? えっ……?』
希一『今のお前は、立派なお姫様です! 髪の毛も、ドレスも、すっごい綺麗で、キラキラで……! とにかくすげーお姫様……』
『……です、ので……』
(やばい。何が言いたいんだ俺?)
元気づけようとして取った行動が、だんだん恥ずかしくなってくる希一。
→ぎこちなく目を逸らす。
希一『……だから、お姫様役……立候補しても、いいんじゃないかなー……って……』
顔を真っ赤にして伝えると、羽花はぽかんとしたまま口を開く。
羽花『……希一くん、もしかして、魔法使い役がやりたいの?』
希一『……ぅえ!?』
『あ……う、うん、そう……。俺、魔法使い役、やりたくて……』
(嘘だけど……)
羽花『そうなの? もう練習始めてるなんて、本気度が高いね。王子様役とかの方が似合いそうなのに……』
希一『は? やだよ王子なんて。それよりは魔法使いの方がいい』
羽花『どうして?』
首を傾げる羽花。
希一は答える。
希一『だって、王子って、すでに魔法にかけられた綺麗なお姫様しか見ないようなつまんないヤツじゃん?』
羽花『!』
希一『だったら俺は、魔法使いになって、いつも通りのお前に会いに行って、俺の魔法で綺麗にしてあげる方がいい』
『そしたら本当の姿も、綺麗になった姿も、どっちも見れるし……それに、俺の魔法に文句言うヤツがいたら、杖でぶん殴れるし!』
羽花『ぷっ……! ふふっ、なあにそれ。乱暴な魔法使いだね』
希一に向かって、泣きそうな顔で微笑んだ羽花。
→希一はどきりとして、少し嬉しくなる。
希一(あ、笑った。俺の魔法で……)
羽花『……でも、なんか、希一くんにぴったりかも』
希一『……え?』
羽花『だって、希一くんのお父さんって美容師なんでしょ? だったら希一くんも、絶対すごい魔法が使えるもん。美容師さんは人を綺麗にする魔法使いだから』
希一『そ、そう、かな……』
羽花『うん、きっとそうだよ』
『だから、希一くん、いつかすごい魔法使いになってね。約束ね』
『それでいつか、わたしに魔法をかけて……わたしのこと、お姫様に変身させてくれる?』
羽花に微笑まれ、希一は大きく目を丸める。
希一(そっか、俺、美容師になったら)
(魔法が使えるようになるんだ)
頬を赤くして、希一は頷く。
希一『……うん。約束する』
『俺、王子様じゃなくて、お前の魔法使いになりたい』
幼い希一が恋に落ちる瞬間を描写。
→学芸会の配役の希望調査プリントに〝まほうつかい〟と書く。
▽数日後。
先生『──藤村羽花さんは、おうちの都合で転校することになりました。登校するのは今週で最後です』
先生の言葉でショックを受ける希一。
→その後、話しかけることもできず、さよならも言えず、羽花は転校してしまった。
学芸会の演劇は、別の子がお姫様役に。
希一は魔法使い役になったが、つまらなそうに劇の練習をする。
希一(おかしいな)
(俺、今、なんで魔法使いやってんだっけ)
(誰のためにこれやろうとしたんだっけ)
(誰に、魔法かけようと、思ったんだっけ……)
→羽花のことを思い出す。
→ぱた、ぱた──と自分の目から涙が落ちていく描写。
希一(ああ、そうだ、俺)
(俺は……)
希一は涙を落として、次第に表情を歪め、厚紙で作られた魔法の杖を握りしめる。
希一(俺は、アイツを笑わせるための、魔法使いになりたかったのに……)
〈回想終了〉
希一は昔を思い出し、羽花の髪に触れながら口を開く。
希一「……俺、王子なんて品行方正な柄じゃないからさ。綺麗に取り繕った姫の姿しか見られないなんて、そんなのイヤなんだよ」
「綺麗に変身した姿も、本当の姿も、俺はどっちも見たい」
「……強欲だよな」
羽花の目を見つめる希一。
今の羽花は、あの頃と変わらない、飾らない髪をしている。
希一「俺、お前に伝えたかったことがある。子どもの頃から、ずっと」
希一の手が髪を掬い上げる。
羽花は緊張した様子で息を呑む。
希一「……再会してからも、本当はすぐに伝えたかった」
「けど、言えなかった」
「なんでだと思う?」
羽花「……わ、わかんない……なんで……?」
希一「お前の魔法が解けるまで、待ちたかったんだ」
「12時をすぎて、魔法が解けて、普通の女の子に戻ったお前に……ちゃんと言葉で伝えたかった」
希一は微笑み、目を細める。
希一の脳裏にいるのは、幼い頃、自分に魔法の使い方を教えてくれた〝普通の女の子〟。
あの頃の面影が残る髪を撫で、希一は告白する。
希一「だって俺は、あの頃、」
「何の魔法にもかけられてないそのままの羽花を──好きになったんだ」
希一は羽花を抱き寄せ、口付けをする。
→羽花は驚いて目を見開いたが、そっと目を閉じて受け入れる。
しばらくして、唇が離れたあと、希一は羽花を見つめ、深く息を吐きながら抱きしめる。
希一「あー……やっと言えた……すげー長かった……」
羽花「……っ」
希一「俺、好きって言うなら、その髪の羽花に言いたくて」
「それで、ずっと待ってた……ので」
「……時間がかかってすみませんでした……」
徐々に照れが勝ち始め、なんとなくぎこちなくなっていく希一。
羽花は緊張した様子だったが、だんだん口角が上がる。
羽花「……ふふ」
希一「……なんだよ」
羽花「希一くん、心臓の音、すっごい速いんだもん」
希一「……そりゃあね。こっちはその心臓に長年絡まり続けた恋が実るかどうかの返事待ちなんで」
羽花「何言ってるの、返事なんてもうわかってるくせに」
羽花は微笑み、体を離して希一の顔を見つめる。
羽花「希一くん」
「ずっと、本当のわたしを見ていてくれてありがとう」
「たくさん魔法をかけてくれてありがとう」
「……あなたがわたしの魔法使いで、よかった」
見つめ合うと、希一も微笑む。
羽花「わたしも、あなたが好き」
希一「知ってる」
羽花「ふふっ、ほら、わかってた!」
笑い合い、つま先を伸ばして、再びキスをする。
→魔法がかかるようなキラキラした描写で、抱き合って、二人の恋が実る。
▽時間経過/一ヶ月後。12月。
○場所:学校の昇降口〜門。
時間:放課後。
雪がちらつく中、靴を履き替えた朋音と真綾が外に出る。
朋音「あ〜っ、すご、初雪だ」
真綾「寒すぎ〜っ! ほんと無理〜! 凍えちゃうよ! ねえ、羽花ちゃん!」
羽花に呼びかけると、背後からやってきた羽花が微笑む。
→髪が以前よりヘアアレンジされている。(この日はハーフアップ)
羽花「ほんとだ、外寒いね〜! 手がかじかんじゃう」
真綾「あ、そうだ、今夜鍋パしない!? 羽花ちゃんバイト辞めたでしょ、時間あるじゃん!」
羽花「うーん、ごめん! 今日は希一くんと予定が……」
真綾「ふぎ〜っ、彼氏持ちめぇ! 恨めしい〜!」
真綾はぷんぷん怒った顔で羽花の髪をわしゃわしゃ。
羽花はへらへら笑っている。
→唇を尖らせた真綾を朋音が回収する。
朋音「羽花って、最近は朝から希一くんに髪の毛整えてもらってるんだっけ。毎日髪型違うもんね」
羽花「うん、最近はヘアアレンジの練習してるらしくて、その実験台に……。それに、夜より朝の方が、希一くんもわたしも髪整えてそのまま学校行けるし、一石二鳥というか……」
真綾「二鳥どころじゃなくて三鳥だよ! 彼氏に毎日会えるんだよ!? えーん、羨ましい〜っ」
朋音「はいはい、僻まないの。……って、あれ? 門の前にいるの、その希一くんじゃない?」
羽花「え?」
朋音の言う通り、門のところには希一。
相変わらず肉食女子に囲まれている。
女子「ねえねえ、連絡先ぐらいいいじゃーん」
女子2「ウチらとも遊んでよ〜」
希一「いや、だからカノジョいるんで……」
女子3「えー」
苦い表情で困っている希一。
羽花はサッと青ざめる。
朋音「おっと、彼氏ピンチ」
真綾「ゆけっ、カノジョ!」
羽花「い、言われなくても! ──希一くんっ!」
羽花が呼びかけ、走り出す。
希一は顔を上げ、目が合う。
→羽花のモノローグへ。
羽花(モノローグ):
──私ね、この髪の毛に、色んなことを教えてもらったの。
→駆け出して揺らいだ羽花の髪の毛を描写。
羽花(モノローグ):
──自分自身を好きになるのは簡単じゃないこととか。
──そんな自分のコンプレックスと向き合って最後まで付き合えるのは、自分しかいないこととか。
→羽花は希一の元へ駆け寄り、ぎゅっと抱きついて肉食女子から奪う。
→肉食女子たちが驚いた顔。
→羽花は希一の手を引いて走り出す。
(モノローグの背景でサイレントで描写)
羽花(モノローグ):
──持って生まれてきたものが、たとえ、自分にとっていいものではなかったとしても。
──それが原因で、他人に後ろ指をさされたとしても。
──ほんの少し、たった一瞬だけでいいから、自分のイヤな部分のことも、時々抱きしめてあげられたら、
→追いかけてくる肉食女子たち。
→焦った顔で後ろを見る羽花と希一。
→その様子を、うしろから朋音と真綾が笑って見守っている。
羽花(モノローグ):
──そうしたら、明日のわたしは、今日のわたしよりも少しだけ、
──自分のことが大事に思えるかもしれない。
→羽花と希一は互いに顔を見合わせる。
→二人で楽しそうに笑い合う。
羽花(モノローグ):
──本当の顔で、「大好きだよ」って。
──魔法の言葉を唱えたら、きみはもう大丈夫。
──過去の自分も、きっと、どこかで見ていてくれるはず。
楽しそうに笑って走る羽花たちのことを、テレビの画面越しに見ている幼い頃の自分の姿を描写。
→第1話で美容師のテレビ番組を見ていた時と同じ画角の後ろ姿。
→だが、次のコマでは、第1話と違って口元が笑っている。
羽花(モノローグ):
──12時ちょうどの鐘のあとでも。
──綺麗で完璧なお姫様じゃなくなっても。
──ちゃんと見ててね。
──あの頃憧れた魔法の中で、わたしは今、笑えているから。
手を繋いだ希一と羽花の後ろ姿を描写して、物語が終了。
〈了〉
朋音「──で、投票の結果、優勝は来栖先輩だって」
ステージライトを浴びまくっている来栖の写真を見せて、朋音が呆れ顔。
朋音「スーツ姿のかっこよさにメロメロになったファンが一斉に投票したんだってさ」
真綾「んもおおっ、納得いかないよねえ! 不正票じゃん! ズッコケちゃったよ!」
→小さいコマで、
来栖「優勝はこの私だー!」
会場「ええー!?」
みたいになった回想シーンをはさむ。
真綾はそれを思い出してぷんぷんしている。
朋音「まあまあ、あのオチも含めてひとつのエンタメだったってことでしょ? 今回のは」
羽花「そうそう、いいんだよ別に。賞レースとかじゃないんだし。変に優劣つけないオチでいいんじゃない?」
真綾「ええ〜〜! 納得いかない! 絶対羽花ちゃんが優勝なのに!」
羽花「ふふ、ありがとねマーちゃん」
控え室で談笑する三人。
→すでに羽花はいつもの制服に着替えている。
→髪は天パのまま。
朋音「……それにしても、羽花、アンタこんな髪だったんだね」
不意に、羽花の髪を見て切り込んだ朋音。
真綾も身を乗り出す。
真綾「ほんと、超びっくりしたよ! これって天然パーマ?」
羽花「うん。生まれた時からこれ」
真綾「それを毎日ずっとストレートにしてたの!? あんだけ綺麗なストレートにするの大変だったでしょ!?」
羽花「えへへ、毎朝5時とか6時に起きてた」
朋音・真綾「「ひえー!」」
羽花の髪を見て驚く二人。
羽花は微笑みつつ、ちょっと苦い表情で目を伏せる。
羽花「……ごめんね、二人とも」
真綾「え?」
羽花「ずっと、二人に嘘ついてたから。いつも『自然体なところがいい』って言ってくれてたのに、全然ナチュラルなわたしじゃなくて、ごめん……」
朋音「はあ? 何言ってんの」
「どんなに見た目が違っても、アンタはアンタでしょ? 何も嘘なんてついてないじゃん」
真綾「そうだよ! それに、毎朝早起きして自分を綺麗にしてたんでしょ!? そんなの尊敬しかないって! マーヤにはできないもん!」
朋音「そうそう。前から言ってるけど、羽花は頑張りすぎ。ウチらにも頼ってよ、友達なんだからさ」
当然のように告げる朋音と真綾。
羽花は感激で目を潤ませ、二人にハグ。
羽花「う、うう〜っ、よかったぁ〜〜! 嫌われたらどうしようかと……!」
真綾「嫌うわけないじゃんっ、羽花ちゃんのおばか! お返しにむぎゅーっ」
羽花「うわーん、優しくしないで、泣いちゃうよ〜!」
朋音「あははっ」
──コンコンコン。
→じゃれあっていると、扉がノックされる。
→希一と大輝が入ってくる。
大輝「し、失礼しマース……」
希一「……ども」
羽花「!」
大輝「なんか、来栖先輩が(無理やり)案内してくれたんだけど、勝手に入っていいの? 俺ら」
そわそわしつつ入ってきた二人。
羽花は希一と目が合ってしまい、顔を赤くする。
→『ラブの予感』を感じ取った朋音と真綾はハッとして、互いにアイコンタクト。
→羽花から離れ、希一の横にいた大輝を突然捕まえる。
大輝「ぐえ!?」
真綾「あ〜っ、用事思い出しちゃったな〜! ねっ、大輝くん! そうだよね!」
大輝「はっ!? えっ!?」
朋音「ほら〜、用事あったじゃん! ね! あるでしょ!」
大輝「いや俺は何も──もごっ」
二人に押さえつけられた大輝。
朋音と真綾は、「「それじゃ、ごゆっくり〜♡」」と微笑んで、強引に大輝を連れ出す。
大輝「ちょ、何なんだお前ら!? なんで俺まで……!」
朋音「いいから空気読んでついて来な」
真綾「マーヤたちが特別に、大輝くんを案内してあげるっ! ほら、こっちこっち!」
大輝「おい、痛い痛い痛い! は、離せえええ!」
ギャーギャーとやかましい喧騒が遠のき、ふたりきりになる希一と羽花。
→ちょっと呆れ顔の二人。
羽花「ご、ごめん……変な気を遣う二人で……」
希一「……まあ、大輝なら大丈夫だろ。相変わらずむかつくけど、昔よりは丸くなったし。多分」
羽花「そ、そうだね……うん……多分……」
希一「……」
沈黙。
→希一を直視できず、赤い顔で俯く羽花。
羽花(ど、どうしよ……さっきのスピーチで、わたし、『大好きな人』とか言っちゃったんだよね……)
(で、でも、希一くんの名前は出してないし……いや、さすがにバレてる……? 筒抜け……?)
(ううう、どんな顔をすれば……)
オロオロしていると、先に希一が口火を切る。
希一「……髪、みんなにバレちゃったな」
羽花「!」
希一が近付き、羽花の髪に触れる。
じっと髪を見ている希一。
羽花はしばらく黙って、視線を落とす。
羽花「……ごめんね、希一くん」
希一「ん?」
羽花「わたし、せっかくたくさん魔法かけてもらったのに……」
「かけてもらった魔法、全部、自分で解いちゃった」
羽花は苦笑いで告げる。
希一は黙っている。
羽花「はあ、これがおとぎ話じゃなくて本当によかったよ」
「だって、こんなお姫様じゃ、王子様もがっかりしたに違いないもんね」
へら、と自虐して笑う羽花。
希一は黙り込み、やがて、口を開く。
希一「……だから、王子様なんてつまんないって言ったろ?」
羽花「え?」
希一「俺、昔、お前にそう言ったことがあるんだよ」
羽花「ええ? そうだっけ? いつ?」
希一「いつだったかな……お前が引っ越す前」
「あんまり覚えてないけど、俺、確かにはっきりとお前に言ったんだ」
「お前の王子様より、魔法使いになりたいって……」
→過去の回想へ。
〈過去回想〉
○小学校の教室(年齢:10歳)
黒板に『学芸会でやること:演劇(決定!)』と書かれている描写。
あははは、と笑う子どもの声。
プリントを持って通りかかった希一が、その声に反応する。
大輝『やーい、このトイプー頭!』
モブ『クルクルの髪の毛!』
モブ2『変な髪!』
羽花『……』
希一(あーあ、またやってる)
小学生の頃の羽花が、大輝たちにいじめられているところ。
希一は離れたところで見ている。
羽花は手に希一と同じプリントを持っていて、〝希望する役を書いてください〟と書かれている。
モブ『なあ、ダイくん、見ろよ! こいつ、学芸会でやる劇の役、〝お姫様〟やりたいってプリントに書いてる!』
モブ2『はー? 嘘だろ、マジ? こんなモジャモジャの髪でお姫様なんて、似合うわけねーのにな! あはは!』
大輝『え? あ……そ、そうだな! はは!』
羽花『…………』
からかわれ、泣きそうな顔でプリントを握りしめる羽花。
→大輝はちょっと気まずそうな顔をしつつ、『もう行こうぜ』と友だちを連れて去っていく。
羽花は涙を拭いて無言で自分の席へ。
→〝おひめさま〟と書かれたプリントの文字を消しゴムで消し始める。
→希一が近付き、その手を掴む。
羽花『!』
希一『なんで消すの』
『消したらアイツらに負けたことになるぞ』
不機嫌そうな表情で希一が止める。
すると、羽花は瞳を潤ませる。
羽花『でも、ダイくんたちが、正しいよ……』
希一『!』
羽花『……だって……本当に、似合わないもん……』
『こんな、変な髪の毛のお姫様、いないもん……』
希一(あ、やばい。また、こぼれそう)
泣きそうな顔の羽花に心がざわつき、希一は眉間にシワを寄せる。
希一(あんなヤツのために泣くなよ)
(なんで泣くんだよ)
(泣かせたくない)
(笑わせなきゃ)
慌てる希一の視線の先には、消しカスの中で薄れた〝お姫様〟の文字。
希一(別にお姫様になっていいよって、言いたい)
(でも、どうやったら伝わる?)
(俺に魔法が使えたら、簡単にコイツをお姫様にできるのに)
(俺がもしも魔法使いだったら)
(魔法……何か、すごい魔法で……)
希一はぐっと奥歯を噛み締め、強くうねる羽花の髪に指を絡める。
→ビクッと身構える羽花。
→その涙がいよいよこぼれそうになる直前で、希一が咄嗟に口を開く。
希一『き、キラキラシャラーン!』
羽花『……!?』
希一『……はい! 俺は今、魔法をかけてお前を変身させました!』
羽花『え……? えっ……?』
希一『今のお前は、立派なお姫様です! 髪の毛も、ドレスも、すっごい綺麗で、キラキラで……! とにかくすげーお姫様……』
『……です、ので……』
(やばい。何が言いたいんだ俺?)
元気づけようとして取った行動が、だんだん恥ずかしくなってくる希一。
→ぎこちなく目を逸らす。
希一『……だから、お姫様役……立候補しても、いいんじゃないかなー……って……』
顔を真っ赤にして伝えると、羽花はぽかんとしたまま口を開く。
羽花『……希一くん、もしかして、魔法使い役がやりたいの?』
希一『……ぅえ!?』
『あ……う、うん、そう……。俺、魔法使い役、やりたくて……』
(嘘だけど……)
羽花『そうなの? もう練習始めてるなんて、本気度が高いね。王子様役とかの方が似合いそうなのに……』
希一『は? やだよ王子なんて。それよりは魔法使いの方がいい』
羽花『どうして?』
首を傾げる羽花。
希一は答える。
希一『だって、王子って、すでに魔法にかけられた綺麗なお姫様しか見ないようなつまんないヤツじゃん?』
羽花『!』
希一『だったら俺は、魔法使いになって、いつも通りのお前に会いに行って、俺の魔法で綺麗にしてあげる方がいい』
『そしたら本当の姿も、綺麗になった姿も、どっちも見れるし……それに、俺の魔法に文句言うヤツがいたら、杖でぶん殴れるし!』
羽花『ぷっ……! ふふっ、なあにそれ。乱暴な魔法使いだね』
希一に向かって、泣きそうな顔で微笑んだ羽花。
→希一はどきりとして、少し嬉しくなる。
希一(あ、笑った。俺の魔法で……)
羽花『……でも、なんか、希一くんにぴったりかも』
希一『……え?』
羽花『だって、希一くんのお父さんって美容師なんでしょ? だったら希一くんも、絶対すごい魔法が使えるもん。美容師さんは人を綺麗にする魔法使いだから』
希一『そ、そう、かな……』
羽花『うん、きっとそうだよ』
『だから、希一くん、いつかすごい魔法使いになってね。約束ね』
『それでいつか、わたしに魔法をかけて……わたしのこと、お姫様に変身させてくれる?』
羽花に微笑まれ、希一は大きく目を丸める。
希一(そっか、俺、美容師になったら)
(魔法が使えるようになるんだ)
頬を赤くして、希一は頷く。
希一『……うん。約束する』
『俺、王子様じゃなくて、お前の魔法使いになりたい』
幼い希一が恋に落ちる瞬間を描写。
→学芸会の配役の希望調査プリントに〝まほうつかい〟と書く。
▽数日後。
先生『──藤村羽花さんは、おうちの都合で転校することになりました。登校するのは今週で最後です』
先生の言葉でショックを受ける希一。
→その後、話しかけることもできず、さよならも言えず、羽花は転校してしまった。
学芸会の演劇は、別の子がお姫様役に。
希一は魔法使い役になったが、つまらなそうに劇の練習をする。
希一(おかしいな)
(俺、今、なんで魔法使いやってんだっけ)
(誰のためにこれやろうとしたんだっけ)
(誰に、魔法かけようと、思ったんだっけ……)
→羽花のことを思い出す。
→ぱた、ぱた──と自分の目から涙が落ちていく描写。
希一(ああ、そうだ、俺)
(俺は……)
希一は涙を落として、次第に表情を歪め、厚紙で作られた魔法の杖を握りしめる。
希一(俺は、アイツを笑わせるための、魔法使いになりたかったのに……)
〈回想終了〉
希一は昔を思い出し、羽花の髪に触れながら口を開く。
希一「……俺、王子なんて品行方正な柄じゃないからさ。綺麗に取り繕った姫の姿しか見られないなんて、そんなのイヤなんだよ」
「綺麗に変身した姿も、本当の姿も、俺はどっちも見たい」
「……強欲だよな」
羽花の目を見つめる希一。
今の羽花は、あの頃と変わらない、飾らない髪をしている。
希一「俺、お前に伝えたかったことがある。子どもの頃から、ずっと」
希一の手が髪を掬い上げる。
羽花は緊張した様子で息を呑む。
希一「……再会してからも、本当はすぐに伝えたかった」
「けど、言えなかった」
「なんでだと思う?」
羽花「……わ、わかんない……なんで……?」
希一「お前の魔法が解けるまで、待ちたかったんだ」
「12時をすぎて、魔法が解けて、普通の女の子に戻ったお前に……ちゃんと言葉で伝えたかった」
希一は微笑み、目を細める。
希一の脳裏にいるのは、幼い頃、自分に魔法の使い方を教えてくれた〝普通の女の子〟。
あの頃の面影が残る髪を撫で、希一は告白する。
希一「だって俺は、あの頃、」
「何の魔法にもかけられてないそのままの羽花を──好きになったんだ」
希一は羽花を抱き寄せ、口付けをする。
→羽花は驚いて目を見開いたが、そっと目を閉じて受け入れる。
しばらくして、唇が離れたあと、希一は羽花を見つめ、深く息を吐きながら抱きしめる。
希一「あー……やっと言えた……すげー長かった……」
羽花「……っ」
希一「俺、好きって言うなら、その髪の羽花に言いたくて」
「それで、ずっと待ってた……ので」
「……時間がかかってすみませんでした……」
徐々に照れが勝ち始め、なんとなくぎこちなくなっていく希一。
羽花は緊張した様子だったが、だんだん口角が上がる。
羽花「……ふふ」
希一「……なんだよ」
羽花「希一くん、心臓の音、すっごい速いんだもん」
希一「……そりゃあね。こっちはその心臓に長年絡まり続けた恋が実るかどうかの返事待ちなんで」
羽花「何言ってるの、返事なんてもうわかってるくせに」
羽花は微笑み、体を離して希一の顔を見つめる。
羽花「希一くん」
「ずっと、本当のわたしを見ていてくれてありがとう」
「たくさん魔法をかけてくれてありがとう」
「……あなたがわたしの魔法使いで、よかった」
見つめ合うと、希一も微笑む。
羽花「わたしも、あなたが好き」
希一「知ってる」
羽花「ふふっ、ほら、わかってた!」
笑い合い、つま先を伸ばして、再びキスをする。
→魔法がかかるようなキラキラした描写で、抱き合って、二人の恋が実る。
▽時間経過/一ヶ月後。12月。
○場所:学校の昇降口〜門。
時間:放課後。
雪がちらつく中、靴を履き替えた朋音と真綾が外に出る。
朋音「あ〜っ、すご、初雪だ」
真綾「寒すぎ〜っ! ほんと無理〜! 凍えちゃうよ! ねえ、羽花ちゃん!」
羽花に呼びかけると、背後からやってきた羽花が微笑む。
→髪が以前よりヘアアレンジされている。(この日はハーフアップ)
羽花「ほんとだ、外寒いね〜! 手がかじかんじゃう」
真綾「あ、そうだ、今夜鍋パしない!? 羽花ちゃんバイト辞めたでしょ、時間あるじゃん!」
羽花「うーん、ごめん! 今日は希一くんと予定が……」
真綾「ふぎ〜っ、彼氏持ちめぇ! 恨めしい〜!」
真綾はぷんぷん怒った顔で羽花の髪をわしゃわしゃ。
羽花はへらへら笑っている。
→唇を尖らせた真綾を朋音が回収する。
朋音「羽花って、最近は朝から希一くんに髪の毛整えてもらってるんだっけ。毎日髪型違うもんね」
羽花「うん、最近はヘアアレンジの練習してるらしくて、その実験台に……。それに、夜より朝の方が、希一くんもわたしも髪整えてそのまま学校行けるし、一石二鳥というか……」
真綾「二鳥どころじゃなくて三鳥だよ! 彼氏に毎日会えるんだよ!? えーん、羨ましい〜っ」
朋音「はいはい、僻まないの。……って、あれ? 門の前にいるの、その希一くんじゃない?」
羽花「え?」
朋音の言う通り、門のところには希一。
相変わらず肉食女子に囲まれている。
女子「ねえねえ、連絡先ぐらいいいじゃーん」
女子2「ウチらとも遊んでよ〜」
希一「いや、だからカノジョいるんで……」
女子3「えー」
苦い表情で困っている希一。
羽花はサッと青ざめる。
朋音「おっと、彼氏ピンチ」
真綾「ゆけっ、カノジョ!」
羽花「い、言われなくても! ──希一くんっ!」
羽花が呼びかけ、走り出す。
希一は顔を上げ、目が合う。
→羽花のモノローグへ。
羽花(モノローグ):
──私ね、この髪の毛に、色んなことを教えてもらったの。
→駆け出して揺らいだ羽花の髪の毛を描写。
羽花(モノローグ):
──自分自身を好きになるのは簡単じゃないこととか。
──そんな自分のコンプレックスと向き合って最後まで付き合えるのは、自分しかいないこととか。
→羽花は希一の元へ駆け寄り、ぎゅっと抱きついて肉食女子から奪う。
→肉食女子たちが驚いた顔。
→羽花は希一の手を引いて走り出す。
(モノローグの背景でサイレントで描写)
羽花(モノローグ):
──持って生まれてきたものが、たとえ、自分にとっていいものではなかったとしても。
──それが原因で、他人に後ろ指をさされたとしても。
──ほんの少し、たった一瞬だけでいいから、自分のイヤな部分のことも、時々抱きしめてあげられたら、
→追いかけてくる肉食女子たち。
→焦った顔で後ろを見る羽花と希一。
→その様子を、うしろから朋音と真綾が笑って見守っている。
羽花(モノローグ):
──そうしたら、明日のわたしは、今日のわたしよりも少しだけ、
──自分のことが大事に思えるかもしれない。
→羽花と希一は互いに顔を見合わせる。
→二人で楽しそうに笑い合う。
羽花(モノローグ):
──本当の顔で、「大好きだよ」って。
──魔法の言葉を唱えたら、きみはもう大丈夫。
──過去の自分も、きっと、どこかで見ていてくれるはず。
楽しそうに笑って走る羽花たちのことを、テレビの画面越しに見ている幼い頃の自分の姿を描写。
→第1話で美容師のテレビ番組を見ていた時と同じ画角の後ろ姿。
→だが、次のコマでは、第1話と違って口元が笑っている。
羽花(モノローグ):
──12時ちょうどの鐘のあとでも。
──綺麗で完璧なお姫様じゃなくなっても。
──ちゃんと見ててね。
──あの頃憧れた魔法の中で、わたしは今、笑えているから。
手を繋いだ希一と羽花の後ろ姿を描写して、物語が終了。
〈了〉