【漫画シナリオ】きみの魔法に恋は絡まる
第3話
○場所:学校(昼間)
チャイムの音:キーンコーンカーンコーン……。
サラサラと流れる羽花の髪を描写。
→キラキラした感じで綺麗そうな描写。
→友達の朋音がじーっと見る。
朋音「……ねえ、羽花の髪、最近めっちゃ綺麗じゃない? なんかした?」
羽花「え?」
真綾「あっ、それ、マーヤも思った! ツヤツヤだよね!」
羽花「そ、そう?」
学校の友達に褒められ、照れ笑いする羽花。
→「めっちゃ綺麗だよ!」「トリートメント何使ってるの〜?」とか聞かれる。
羽花は髪の毛をさらりと掬い上げてはにかむ。
→脳裏に浮かぶのは希一の顔。
羽花(何かしたっていうか、希一くんのアドバイスを参考に、ちゃんとケアするようになっただけなんだけど……)
(なんか、すごく褒められるようになったなあ)
(希一くんのおかげかも。さすが見習い美容師)
希一のことを思い出しつつ、こっそり感謝。
→昔は髪の毛を褒められるなんてことはなかったため、とても嬉しい様子。
羽花(今度ちゃんとお礼したいけど、連絡先聞きそびれたからなあ)
(あーあ、あの時、それぐらい聞いとけばよかった)
小さく息をつき、先日の希一との帰り道のことを思い出す。
〈回想〉
○場所:横断歩道の前。
前回のラストシーンの回想。
希一「──藤村さんの髪に魔法をかける練習、させてよ」
前回のラストシーンと同じ場面。信号は赤。
→羽花はぽかんとしている。
「……あの……」
羽花がぽつりと口を開いた頃、希一はおもむろに自分の口元を押さえる。
希一「……さっぶ」
羽花「……え?」
希一「いや、俺……今、なんつった?」
顔を青ざめ、怖々と問いかける希一。
→羽花は瞬きを繰り返す。
希一「なんか俺、今、『君の髪に魔法をかけさせてください』みたいなこと言ったような……」
羽花「ま、まあ、近からず遠からず……」
希一「いやいや、さっむ! うわっ、何それ! 無理! 鳥肌! 俺いきなり何言ってんの!?」
冷静になると自分の発言が小っ恥ずかしくなってきた希一。
→腕をクロスさせて自分を抱きしめながら、鳥肌をさするかんじ。
希一「あー、やばい、恥っず……。今の忘れて……」
とにかく恥ずかしそうな様子。
羽花はぽかんとその様子を眺めていたが、やがて笑いが込み上げる。
羽花「ふ、ふふっ……ふふふ……!」
希一「……な、なんだよ。ドン引きした?」
羽花「ううん、ただ……希一くんって、こんな感じだったっけ? って思って……ふふっ」
飾りっけのない笑顔で顔を上げる羽花。
希一は訝しげな顔をして「はー? 何それ、どういう意味?」と首を捻る。
羽花「ほら、小学生の頃の希一くんは怖いもの知らずって感じで、いじめっ子だったダイくんとかにも物怖じしないイメージだったから。今でももっと無愛想な人かと思ってた」
希一「あぁ……まあ、それは今も変わってねーよ。俺、人からどう思われるかとか考えずに、思ったことすぐ言っちゃう癖が治んなくて。口悪いし、喧嘩っ早いし、目付きも悪いから、周りに距離置かれがち……」
羽花「でも、それってすごいことだよ! わたしは真逆だもん。人の目ばっかり気にして、人から良く思われようと必死……」
「……だから、希一くんのこと、ちょっと羨ましいな」
羽花は少し儚げに笑う。
希一は一瞬息をのみ、何かを言いかけたところで、信号が青に。
羽花「あっ、青になった。送ってくれてありがとうね、希一くん。もう家のすぐ近くだし、ここまでで大丈夫だよ。この信号、待つの長いから」
希一「……」
羽花「今日はありがと! またね!」
笑顔で手を振り、希一と別れた。
希一は何か言いたげな表情で、羽花をずっと見送っていた。
〈回想終わり〉
○時間軸/現在。
場所:学校の廊下
羽花(あれから十日ぐらい経ったけど、一度も会えてないや。お礼するには、もう遅すぎ……?)
(美容室に行けば会えるかもしれないけど、髪切るわけでもないのに、急に押しかけても迷惑だろうし……)
うーん、と悩みながら歩いていると、後ろから「藤村さん」と呼びかけられる。
→羽花は振り返る。
羽花「あっ、来栖先輩……」
来栖「やあ。今、少しだけいい?」
振り向いた先には、すらりと背の高い中性的な顔立ちの先輩。
→容姿:髪型はベリーショートのオールバック。宝塚風のイケメン。だが、ちゃんと女子なので制服はスカート。
羽花の後ろで、朋音と真綾がこっそり耳打ちし合う。
朋音「わ! 来栖先輩……!」
真綾「今日もかっこい〜!」
こそこそ話す二人。
※女子の多い学校なので、イケメン女子の来栖は、一部の女子から王子様的な人気がある。
はしゃいでそわそわしている二人の傍ら、羽花はなんとなく嫌な予感を覚えていた。
羽花(来栖先輩……中学時代からお世話になってる良い人なんだけど、けっこう無茶ぶりしてくる人なんだよね……)
警戒しつつ、「ごめん、ちょっと話聞いてくるから、先に行ってて」と伝え、朋音と真綾から離れた羽花は来栖先輩の元へ。
羽花「……どうしたんですか?」
来栖「藤村さん、君、身長はいくつ?」
羽花「え? ええと、160センチですが……」
来栖「ナイスッ! エクセレントッ! 君に決めた!」
羽花「ええっ!? な、何がです!?」
キレキレの動きで羽花を指さす来栖先輩。(だいたいいつも唐突)
→羽花は困惑。
→来栖はフッと口角を上げて声をひそめる。
来栖「実はね、今、生徒会で極秘に動いている案件があるんだが」
羽花(そういえば9月から生徒会長になったんだった、この人……)
来栖「ほら、毎年11月に西商祭(※文化祭)があるだろ? この西商祭の開催が、今年でなんと記念すべき50回目でね。どうせなら何か特別なことをしようと計画しているところなんだ」
羽花「な、なるほど」
来栖「その計画とは──ズバリ! ミス・西商ファッションショーさ!!」
ドヤ顔する来栖の背景に、ファッションショーのランウェイがあるようなイメージで描写。
→羽花はぽかんとする。
羽花「ミス……なんですって?」
来栖「〝ミス・西商ファッションショー〟だよ。ミスコンとファッションショーを掛け合わせたような催しになる予定だ」
羽花「はあ……。それで……?」
来栖「おやおや、全部私に言わせるつもりかい? まったく、欲張りな子猫ちゃんだ……」
来栖はやれやれ顔で肩をすくめ、大袈裟なため息を吐く。
そしてビシッと羽花を指を差した。
来栖「つまり!」(キメポーズ)
「ランウェイを歩くファッションモデルの一人に!」(キメポーズ)
「君が抜擢されたというわけさ〜! ハッハ〜!」(キメポーズ)
↑一コマずつ、来栖先輩のキメポーズ。
スポットライトに照らされる役者のようなイメージ。
羽花は頬を引きつらせる。
羽花「……そういうのって、普通、参加希望者とか募るものなのでは」
来栖「いや、私の独断ですべて決定する。会長権限だ」
羽花「職権濫用ですよ……」
来栖「とにかく、決定は決定だよ藤村さん! 衣装はこちらで用意するが、本番のヘアメイクは君に任せた! 自分でやるもよし、外部に頼むもよし! 本番まであと一ヶ月あるし、どうにかしてくれ! アデュー!」
羽花「ほぼすべて丸投げじゃないですか! ちょっとぉ!!」
強引に話をまくしたて、華麗に去っていく来栖先輩。
羽花は来栖先輩の方へ手を伸ばしながら、がっくりと肩を落とす。
羽花「うう、あの人、いつもこうなんだから……」
○場面転換/放課後。場所:昇降口〜校門まで。
朋音「あはは! さすが来栖先輩だね、やることが派手〜」
真綾「会長直々のご指名なんてすごいじゃん〜! あはは!」
羽花「笑いごとじゃないよ、いつもこうやって巻き込まれるんだから!」
昇降口で靴を履き替えながら、不服げにする羽花。
朋音と真綾はおかしそうに笑っている。
朋音「はー、面白い。羽花って、たしか来栖先輩と中学時代からの知り合いなんだっけ」
羽花「そうなの……中学の生徒会で一緒だったんだけど、とにかくいつも派手なことを企画して、周りがすごく大変だったよ……」
真綾「だから今年、生徒会に入るの嫌がってたんだ〜。羽花ちゃん、めっちゃ推薦されてたのに断固拒否だったもんね」
羽花「絶対イヤ。生徒会に入ってなくてもこんなに振り回されてるのに、もし入ってたらと思うとゾッとするよ」
羽花はぶんぶんと首を振る。
真綾「でもさ〜、ファッションショー自体は楽しそうじゃない? メイクならマーヤがしてあげるし!」
朋音「ま、そうだね。メイクはマーヤにやってもらえば解決でしょ。あとはヘアスタイルをどうするかだけど」
羽花「ヘアスタイル……」
朋音「誰かやってくれそうな子いないの?」
考える羽花。
→頭の中に希一の姿が浮かぶ。
羽花「い、いなくは、ないけど……」
朋音「なんだ、じゃあ解決じゃん」
羽花「いや、でも、その人他校だし、男子だし……」
朋音・真綾「「男子っ!?」」
男子と聞いた瞬間、即座に目の色を帰る朋音&真綾。
羽花はビクッとする。
朋音「ちょっと!! 羽花に男友達いるなんて初めて聞いたんだけど!? 何年!? タメ!?」
羽花「え、えっと、同い年……」
真綾「どこ高!? かっこいい!? 身長どんくらい!?」
羽花「東高で……ていうか、落ち着いてよ。わたし、彼とはそういう感じじゃなくて……」
ぐいぐい詰め寄る真綾。
羽花が戸惑っていると、朋音が不意に別の方向を見る。
朋音「……ん? ねえ、なんか門のとこで誰か囲まれてない?」
真綾「あ、ほんとだ! ていうか、あれ? 噂をすれば東高の制服着た男の子だよ?」
羽花「え……」
視線を門へ。
すると、そこで女子に囲まれていたのは、なんと希一。
希一を囲む女子たち:
「ねー、ずっと誰待ってんの? 彼女?」
「君、すごいかっこいいね〜!」
「連絡先交換しようよ〜」
希一「…………」
三人の肉食系女子に囲まれ、辟易した顔で気まずそうに無視する希一。
→羽花が驚く。
羽花「……き、希一くん!?」
思わず大きな声を出してしまい、羽花はハッと口元をおさえる。
希一はようやく羽花に気が付き、「あ」と呟いて、すかさず女子たちの包囲を抜ける。
→羽花の腕を掴む。
羽花「……え!? え!?」
希一「遅い、マジで気まずかった。さっさと場所変えよう」
羽花「あ、あの」
希一「ん?」
希一はちらりと羽花の隣にいる二人(朋音・真綾)を見る。
→朋音と真綾はじっと希一を見て、にこりと笑う。
希一「……悪いけどこの子、借りていい?」
朋音・真綾「はぁい、どうぞ〜♡」
希一「だってさ。行こ」
希一は朋音たちに断りを入れ、羽花を連れ出す。
羽花は朋音と真綾から感じる『明日詳しく話聞くからな』的な視線をひしひしと感じながら、学校を離れた。
〈第3話/おわり〉