【漫画シナリオ】きみの魔法に恋は絡まる

第5話

○場所:自宅

ベッドに寝そべりながらスマホ。

羽花(あ。バイト代、入ってる)

入金の確認をして、自分の髪を見る羽花。
風呂上がりでうねっている髪。
けれど、不思議と嫌な気分にならない。

羽花(お金入ったら縮毛矯正しに行こうと思ってたけど……)
  (うーん……)

〈回想〉
希一『お前の髪は、何も変じゃない。俺も、親父も、バカになんてしない』
  『ほら。やっぱ可愛いじゃん』
〈回想終わり〉

希一に言われた言葉を思い出し、つい頬が緩む。
スマホに登録された『希一』のトーク画面を開き、文字を打つ。


〈トーク画面〉------

羽花【今日はありがと】23:40
  【希一くん、シャンプー上手だった】23:40
  【(変なスタンプ)】23:40
  【あっ】23:40
  【(可愛いスタンプ)】23:41

希一【最初のスタンプなに】23:42

羽花【ごめん、間違えちゃった……】23:42

希一【(変なスタンプ)】23:44
  【同じの買ってみた】23:44

羽花【えっ?】23:45
  【まさかの】23:45
  【おそろい!?笑】23:45
  【(変なスタンプ)】23:45

希一【(変なスタンプ)】23:46
  【笑】23:46

〈トーク画面おわり〉------


羽花「……ふふっ」

文面ではちょっとだけお茶目な希一。
ウトウトしつつ、画面に【遅くにごめんね、おやすみ】と打つ。

同時に、トーク画面には希一からのメッセージが。


〈トーク画面〉------

希一【あのさ】23:47
  【今日の】23:47

羽花【遅くにごめんね、おやすみ】23:47

希一【道で会った先輩って】23:47
  【あ、ごめん】23:48
  【なんでもない】23:48
  【おやすみ】23:48
  【(変なスタンプ)】23:48

〈トーク画面終了〉------


羽花(あ……希一くん、何か会話しようとしてたっぽいのに、タイミング悪く『おやすみ』って送っちゃった……)
  (でも、もう寝ないといけないし)
  (明日も朝から)
  (髪の毛、整え……)

すぴー……。
 →寝落ち。
  画面は【また明】まで打たれているが送信されていない。


○場面転換/希一の部屋(希一side)

同時刻。
既読がついたまま返事がこなくなったトーク画面を黙って見つめる希一。(眉間にシワがよってる)
すると、後ろから兄の雄太(ゆうた)の声がかかる。
 →兄は机で勉強、希一は二段ベッドの下の段でゴロゴロしてた。

雄太「めーずらし。〝返事がない、ただの音信不通だ〟で有名なあの希一が、スマホにべったり張り付いちゃって。さては女かなぁ?」
希一「うざ。ほっとけよ」
雄太「うわっ、否定しねーしコイツ! 母ちゃーん! 希一に女できたー!」
希一「ちげーよバカ! 黙れクソ兄貴!」

起き上がり、兄の座っている椅子をゲシッと蹴る希一。
蹴られても兄はへらへら笑っている。

雄太「いいねえ、カノジョと連絡。俺は受験でそれどころじゃなさすぎてフラれたのに」
希一「……だから違うって」
雄太「なー、写真ないの? 顔見たい」
希一「全然人の話聞いてねーじゃん。いいから黙って勉強しろよ」
雄太「ケチケチすんなって〜。その子可愛い?」
希一「うん」

希一はスマホの画面を見たまま即答。
 →それまでニヤニヤしてたくせに、今度は『うへぇ……』みたいな顔する雄太。

雄太「はー、何コイツ、マジのカノジョじゃん。むかつく」
希一「ちげーって。……なあ、兄貴」
雄太「ん?」
希一「……西商業って、男もいんの?」

目は合わせず、問いかける。
雄太は「そりゃいるだろ、別に女子校じゃねーし」と答える。

雄太「男女比は圧倒的に女の方が多いけど、学年に何人か男もいるよ。羨ましいよなー、周りが可愛い女の子だらけで」
希一「……」
雄太「何、カノジョ西商業なの」
希一「別に」

希一は眉間にシワを寄せ、来栖先輩のことを思い浮かべつつスマホの画面を切る。
 →兄はまたニヤニヤ。

雄太「まあ、でも安心した。お前けっこうモテる噂あんのに全然女作らねーから、まだガキの頃のままごと引きずってんのかと思ってたわ」
希一「はー? 何のこと?」
雄太「はー? お兄様が何も知らねえと思ってんのか? 知ってんだぞ俺、お前が小学校の卒アルに──」

ゲシッ!(希一が兄を蹴る)

雄太「いってぇ!! お前ふざけんなマジ!」
希一「いいから勉強しろよ、そんなんだからフラれんだろ」
雄太「んだとコラ!」
希一母「ちょっと、うっさいのよアンタたち!! 何時だと思ってんの!!」

→兄弟喧嘩して母に怒られるセリフがある中、コマの中心に、希一の机にある『卒業アルバム』を描写。


○場面転換/学校の教室。(羽花side)

翌日。
朋音と真綾に詰め寄られる羽花。
 →朋音と真綾は威圧感、羽花は冷や汗。

朋音「さあ、白状しな、羽花」
羽花「え、ええと……」
真綾「あのイケメンは誰! どういう関係! いつどこで出会ったの! マーヤたちを差し置いてええ!」
羽花「うへぁぁ……!」

真綾からガクガクと肩をゆさぶられ、羽花は目を回す。
朋音と真綾は威圧に満ちている。

朋音「まさか羽花に男ができるなんて……完全に油断してたわ」
真綾「今までまったくそんな気配なかったもんね……」
羽花「だから、ほんとに違うんだってば……」

女子の多い高校ゆえになかなか出会いがなく、嘆いている二人。
 →恋多き年頃の二人は、羽花の恋バナに興味津々。

真綾「ねえ、羽花ちゃん、あのイケメンくんと付き合ってるの?」
羽花「もー、違うってば。ただの友達。小学校が一緒で、最近たまたま再会したの」
真綾「えー! 何それ、ロマンチック! 恋が始まるやつじゃん!」
羽花「始まらないから……」
朋音「でも、羽花もあの人かっこいいと思うでしょ?」
羽花「え? ま、まあ、そりゃあ……」

話を振られ、羽花は昨日の希一のことを思い出す。
『可愛い』と言ってくれたことや、震える羽花の手に自分の手を重ねてくれたこと。
鏡越しに目が合って、胸が高鳴ったこと。

羽花「……か、かっこいい、けど……」

つい赤くなって声が尻すぼみに。
→朋音と真綾はニヤニヤ。

朋音「やっぱり恋始まってんじゃ〜ん」
羽花「い、いや、でも……わたしなんかが……」
真綾「いける! いけるよ羽花ちゃん! マーヤ応援する!」
羽花「で、でも……もし、これが恋……だったとして、わたし、何をすれば……」

恥ずかしくなってうつむく羽花。
朋音と真綾は目配せし、頷き合う。

朋音「ウチらに任せな」
羽花「え」
真綾「マーヤたちが的確かつ最強で必勝のアドバイスしてあげる!」
羽花「どうしよう、すごい不安……」

羽花は真顔で青ざめる。
→二人の〝必勝アドバイス〟が始まる。

朋音「まずは、メッセージで思わせぶりな態度取るのよ! 『あたし、今夜、帰りたくないな……♡』とか!」
真綾「何言ってんの〜、それじゃただの尻軽だと思われちゃうでしょ! そうじゃなくて、さりげないボディタッチだよ! しれっと肩とか腕とか触るの! 『きゃ〜っ、筋肉すごいです〜♡』みたいな!」
朋音「それこそ軽い女じゃん!」
真綾「マーヤはいつもこれしてるもん!」
朋音「そんなんだからアンタはいつもろくでもない男に引っかかって──」

二人が揉める中、羽花は自分の胸に手を当てる。

羽花(……恋……なのかな? これ……)
  (恋なんて……わたしにできるのかな……)
  (でも、恋をするなら……)

脳裏に希一の顔が浮かぶ。

羽花(その相手が、希一くんだと嬉しい、かも……)

頬を赤らめ、目尻を緩める描写。
スマホを手に取り、羽花は文字を打つ。

〈トーク画面〉------

羽花【あの】7:49
  【よかったら今日か明日】7:49
  【放課後に会いませんか】7:49

希一【なんで敬語なんですか】7:50
  【いいですよ】7:50

羽花【ありがたいです!】7:50

希一【こちらこそです】7:50
  【じゃあ今日ね】7:51
  【(変なスタンプ)】7:51

〈トーク画面終了〉------


羽花(……このスタンプ、気に入ったのかな)

笑顔でスマホを見る羽花。
その後、羽花は揉めている友人二人に話しかける。

羽花「ねえ」
朋音・真綾「「ん?」」
羽花「プレゼントに良さそうなハンドクリーム売ってるお店、知らない?」

最後のコマに羽花のトーク画面。
希一宛に【一緒に行きたい場所があるから、楽しみにしてて】という、ちょっと〝思わせぶり〟なメッセージが送られた形跡を描写して、第5話終了。
 →友達のアドバイスを踏襲するかんじで。

〈第5話 終わり〉
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