この恋、延長可能ですか?

「えっ……とね、飲み会でちょっと話した!」

カシスオレンジで一旦喉を潤して、とりあえず、一番近い記憶を辿る。

「おおー!何を?」

「おかわりいかがですか?って」

「ああ……」

「そしたら、志麻こそおかわりいらないの?って。優しいよねえ」

嘘では無いけれど、自分で言ってさみしくなった。
けれども、これが私の精一杯である。

「それは会話としてカウントしていいの?」

「立派な会話だよ!」

「社交辞令じゃん」

「うっ……大きな前身だよ!!喋れたんだよ!?」

そう、これは男性と喋るのが苦手で、話そうとすればあっぷあっぷして、頭が真っ白になる私としては、かなり勇敢な一歩である。

「朱希。日和って初期装備からやっと次の武器が買えました!くらいのレベルじゃん?言えば5レベくらいじゃん?それが、レベル30〜50の猛者だらけの恋愛市場に突然並べられたら、そりゃあ戸惑うわよ」

「ああ、確かに。だからといってレベル5のまま30代突入しちゃったら、変な男に引っかかりそうなのよね」

「わかるなあ……結婚詐欺に引っかかりそう」

しかしそれは私の思い過ごしらしく、朱希と奈穂は私の行く末を憂い、ため息を落とした。楽しい飲み会の空気がどんよりしちゃって、なんだか申し訳ない。

「大丈夫!小林課長はすごく良い人だから!」

だから私は、励まそうとした。朱希はビールをぐいっと煽り、下唇を親指でぬぐった。

「小林課長って、38だっけ?」

「うん!」

「38で、未婚で、課長ねえ……」

そしてまた、2人は顔を見合わせた。
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